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町一番の美人

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昔から、かなり癖のある環ちゃんを理解できる人はそうそういない。
その数は、年々増していく半端ない美人オーラと反比例している様で、善良な叔父さん達の心配は尽きない。

多分、友達って片手でカウントできるくらいじゃないかしら、と叔母さん談。

普通のお友達が出来て本当にうれしいわ、と諸手をあげて歓迎された。
叔母さん、『普通でないお友達って、どんな曲者なんですか?』とは聞けず、私の不安は増すばかりである・・・。

何も取柄もない私だが、この従妹にいたく気に入られている。
理由を聞けば『素直な子犬を嫌う理由は無い』との事、やっぱり私の印象って犬なのね。
素直に喜んでいいのやら、複雑なところだ。

駅名のアナウンスが車内に告げられると、読みかけの本をパタンと本を閉じ、扉の方に視線を向ける。降りる駅はもう一つ先では?
 
「ほら、ここらで一番の美人が来たわよ。」

そう指さした扉から、とんでも無いものが現れた。

お姫さまだ。そう思った。

それは、まごうことなきお姫様だった。ふんわりと波打つ淡い色の髪が光って見える。
どひゃー、本当にお姫様っているんだなー。従妹の美少女っぷりで耐性は出来ているはずなのに、開いた口がふさがらない。
 
車内のあちこちに、さざ波の様な吐息が漏れている。
 
「美和ちゃん、くち。」

環ちゃんが私の顎に手を添え、閉じさせてくれた。
なるほどこりゃ桁違いのインパクト、上には上がいるのね。
神さま、あなたはどこまでハードル上げれば気が済むのですか?
姫様がこっちを見た!おぉ、瞳の色が薄紫、麗しすぎる。
ひゃー、こっちに来る!
え?でもお姫様は、男子の制服を着ていますが。
えぇ、これで男なの、いやマジ勘弁。
女性の立場はどうなるの、神さまのばかー。
 
「おはよう、環。・・・この子は誰かな?」

キラキラと星を漂わせながらの、ほんわかとした第一声。
姫が下々の民に語りかけているとしか思えない、ありがた過ぎて恐れ多い。

お、お知り合いですか。
二人が揃うと、ここだけ空間が違うんですがっ、しがない庶民の私には眩しすぎて、辛いです。

あぁ、熱視線の係数が、格段に跳ね上がってる。
学生に限らず、社会人の方々も、男女問わずだ。
絶対、車内の気温も上がってる。

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