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狼は裸んぼ

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夜彦の両親は共に人狼で、母親は幼い時に亡くなった。
その後、男手一つで夜彦を育てる父が営む店に、客として来た姫の母と出会い、意気投合した結果、お互い子ずれで再婚したと・・。

こう聞くとベタな話だけど、サキュバスと人狼のご夫婦ですか。
人生、いや妖生いろいろだ。

夜彦の父は自営業だから、自由がきく。社長業で忙しい母に代わり、家事一切は父が行う分担ができているそうだ。
今日も父に見送られ二人は家をでたらしい。

お父様は夜彦よりも大きいだろうか、もふもふし甲斐がありそうだ、想像すると楽しくなってきた。

この間、夜彦は一言も発していない。
不機嫌なのか、ストーカーの襲来を警戒しているのか、それとも環ちゃんの従妹である私に、新たな脅威を感じているのか不明。
かなり邪けんにあしらわれているのに、姫の横から離れないのは、番犬として、健気であっぱれである。

パッと見、某テーマパークを思いださせるゲートに、入退出を管理するパスをかざして、校門をくぐる。
姫・環と続いて進んで行くと、夜彦の足がぴたりと止まった。

「夜彦先輩、どうかしましたか?」

「・・・パスケースが出せない・・。」
かしかしと、後ろ足でバック動かす。
ぶぶっ(笑)、ツボにはまった。

「獣化したまま登校するからだよ。馬鹿だなぁ。」

振り向く姫はあきれ顔、環は無言でこくこく頷いている。

「誰のせいで、全速力で走るハメになったと・・・。」

文句も尻切れトンボで、小さくなって消えていく。ダメだ、捨てられた子犬に見えてきた。
変化を解いたら、いいだけでは? 

「・・・精霊系とか、魔法系のやつなら、服も体も一色単に変化できるけど、俺は無理。」

そうか、映画の人狼の変身シーンでは、服がびりびりと破れてた。
今、変身を解いたら、あの逆バージョンになる訳か。

「てことは、夜彦先輩、今、裸なんですね。」

「なっ!は、裸って!」

黙りこんじゃった。今更、全裸なのを意識しちゃったのかな。
真っ黒なのに、真っ赤になってるのがわかるから不思議。
いやぁ、ますます可愛いわ。
萌え死にそう。
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