16 / 50
14.命拾い
しおりを挟む
意識がふわりと浮上する。なんだか長い間眠っていたみたいな気怠さがあった。
「あ、気が付いた?」
まるでキスでもするかのような近さに顔があって、心臓が大きく脈打つ。
はちみつ色の瞳に自分の顔が映っている。どこかで会ったことがあるのに、目の前の男の人が誰なのかを思い出せず、頭がすっきりしない。確か悪い人ではなかったはず。
「まだ体を起こしてはいけないよ。毒も完全には抜けていないし、肩の怪我も癒えていない」
「毒……肩……?」
何があったんだっけ? えーっと、確か処刑されないように……違う、処刑は結局避けられなくて……。
「あぁ!」
ストーリー通り婚約を破棄され、アエルバートにレイピアで刺されたところまで思い出した。その後動けなくなってしまって、死を覚悟したんだ。
「……ここは天国ですの?」
「面白いことを言うな。安心しろ、アンタはまだ生きている」
「え、嘘っ……いたっ!」
肩から背中に掛けてビリビリとした痛みが駆け抜ける。
「コラ、だから寝ているように言ったじゃないか」
起こそうとしていた体をそっとベッドに戻された。その丁寧な動きに、相手が敵ではないということを理解する。
そうだ。この人、確か以前町で助けてくれた人……そしてゲーム内での役割は薬師だった。
私、助かったの? 薬師の人に手当てされてるこの状況を考えると、なんとか生き延びて治療を受けてるって感じなんだけど。
状況の整理がしたい。でも気を抜くと意識を失ってしまいそうで、考えることすらまともにできない。
「まだ顔色が悪いな。解毒が足りなかったか……」
「え……っ」
あっという間の出来事。何が起こったのか分からない。
「……⁉」
どうして……!
唇にそっと唇が重なって、舌が割って入って来る。初めて感じる感覚に思わず逃げ出そうとするけれど、頭が枕に沈むだけだった。
「……ん。どうだろう、少しは楽になったか?」
「な……な……」
なんでもなさそうな顔で言われて釈然としない。私は言葉も失うくらい動揺しているのに。
顔に熱が集まるのを感じながら、目の前の男の人に問いかける。
「あ……あの! いったいどういうおつもりですか!」
「何って……解毒だが?」
「解毒?」
なんだか話がかみ合っていない。
普通ならいきなり口づけをしてきた不届きな男など平手打ちの一発でも叩き込んでやらないと気が済まないのに、どういうわけかそういう風には思えなかった。たぶんそれはこの目の前の人に下心をいっさい感じないから。
「……あの、私が気を失ってからのことを順を追って教えてくださいな」
「あ、気が付いた?」
まるでキスでもするかのような近さに顔があって、心臓が大きく脈打つ。
はちみつ色の瞳に自分の顔が映っている。どこかで会ったことがあるのに、目の前の男の人が誰なのかを思い出せず、頭がすっきりしない。確か悪い人ではなかったはず。
「まだ体を起こしてはいけないよ。毒も完全には抜けていないし、肩の怪我も癒えていない」
「毒……肩……?」
何があったんだっけ? えーっと、確か処刑されないように……違う、処刑は結局避けられなくて……。
「あぁ!」
ストーリー通り婚約を破棄され、アエルバートにレイピアで刺されたところまで思い出した。その後動けなくなってしまって、死を覚悟したんだ。
「……ここは天国ですの?」
「面白いことを言うな。安心しろ、アンタはまだ生きている」
「え、嘘っ……いたっ!」
肩から背中に掛けてビリビリとした痛みが駆け抜ける。
「コラ、だから寝ているように言ったじゃないか」
起こそうとしていた体をそっとベッドに戻された。その丁寧な動きに、相手が敵ではないということを理解する。
そうだ。この人、確か以前町で助けてくれた人……そしてゲーム内での役割は薬師だった。
私、助かったの? 薬師の人に手当てされてるこの状況を考えると、なんとか生き延びて治療を受けてるって感じなんだけど。
状況の整理がしたい。でも気を抜くと意識を失ってしまいそうで、考えることすらまともにできない。
「まだ顔色が悪いな。解毒が足りなかったか……」
「え……っ」
あっという間の出来事。何が起こったのか分からない。
「……⁉」
どうして……!
唇にそっと唇が重なって、舌が割って入って来る。初めて感じる感覚に思わず逃げ出そうとするけれど、頭が枕に沈むだけだった。
「……ん。どうだろう、少しは楽になったか?」
「な……な……」
なんでもなさそうな顔で言われて釈然としない。私は言葉も失うくらい動揺しているのに。
顔に熱が集まるのを感じながら、目の前の男の人に問いかける。
「あ……あの! いったいどういうおつもりですか!」
「何って……解毒だが?」
「解毒?」
なんだか話がかみ合っていない。
普通ならいきなり口づけをしてきた不届きな男など平手打ちの一発でも叩き込んでやらないと気が済まないのに、どういうわけかそういう風には思えなかった。たぶんそれはこの目の前の人に下心をいっさい感じないから。
「……あの、私が気を失ってからのことを順を追って教えてくださいな」
2
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星井ゆの花
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。
悪役とは誰が決めるのか。
SHIN
恋愛
ある小さな国の物語。
ちょっとした偶然で出会った平民の少女と公爵子息の恋物語。
二人には悪役令嬢と呼ばれる壁が立ちふさがります。
って、ちょっと待ってよ。
悪役令嬢だなんて呼ばないでよ。確かに公爵子息とは婚約関係だけど、全く興味は無いのよね。むしろ熨斗付けてあげるわよ。
それより私は、昔思い出した前世の記憶を使って色々商売がしたいの。
そもそも悪役って何なのか説明してくださらない?
※婚約破棄物です。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
公爵令嬢クラリスの矜持
福嶋莉佳
恋愛
王太子に「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄された公爵令嬢クラリス。
だがその瞬間、第二王子ルシアンが彼女の手を取る。
嘲笑渦巻く宮廷で、クラリスは“自分に相応しい未来”を選び抜いていく物語。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる