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05:デートの理由
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キーボードに暗証番号を入力するとカチャンと音を立てて鍵が開く。
――わたしが見つけたパズルのピースは、暗証番号の描かれているパズルのひとかけらだった。
「たまには莉衣のまぐれも役に立つな」
瑞希がわたしの頭に手を置こうとして、それよりも先に奏斗くんが肩を抱き寄せてきた。
「勝手に莉衣に触れるなって言ってんだろうが」
「心が狭いねー、彼氏くん」
「はいはい。二人とも、部屋を出て先に進むわよ」
春姫ちゃんが自然と二人を促してくれるからいいけど、奏斗くんと瑞希だけだったらケンカになっちゃいそう。
「あれ? 別れ道?」
廊下が二手に分かれてる。
「どっちか選ぶんじゃねぇの?」
「いや、ここにペアになって二手に分かれるようにって指示がある」
瑞希の声に対して、奏斗くんがプレートを指差した。
「莉衣、右と左どっち行きたい?」
「えーっと、どっちでもいいけど」
「じゃあ左の道の方が近いし、俺たちは左にするか」
「えっ! わたしと奏斗くんでペア?」
誰とも何も相談してなくて、いいのかな?
「勝手に決めんなよ」
ほら、やっぱり。瑞希から反対の声が出た。
「他にペアの組み方なんかないんだから、別にいいだろ。あー、おまえらが左の道がいいって言うなら、俺たちは右でいいぞ」
「だから! なんで勝手に決めんだよ!」
「もう! いいでしょ、瑞希! 私たちは右の道にしようよ。ね?」
ありがとう、春姫ちゃん。本当に助かる。
「二人とも、また後でね。じゃあ、わたしたちは左だね。行こう、奏斗くん」
「……あぁ」
こうして二手に分かれたわけだけど……うーん、どうしよう。まだちょっと怒ってるっぽいな。
チラッと奏斗くんの手を見る。
手、つないでみようかな。さっきは奏斗くんからだったし、今度はわたしから……。
いやいやいや。ちょっと待って。
わたしったら何を血迷ってるの。正気を取り戻して、莉衣!
わたしと奏斗くんは恋人同士のふりをしてるだけ。
意識して奏斗くんの手を視界から追い出した。
「なんだよ、つないでくれねーの?」
「わっ! か、奏斗くん⁉」
突然の奏斗くんのドアップ。
「い、いいいいきなり顔をのぞきこまないでよ。あー、びっくりした」
「俺の手をすげぇ見てるからつなごうとしてくれてんのかなって期待したんだよ。期待させといてやめるなんて酷くね?」
「と、言われても……」
「…………。…………」
無言のプレッシャーが‼
奏斗くんの手を目の前に出されたままで、それを無視することなんてできない。
わたしから手をつなぐの……すごく緊張するな。
えい! 勢いだ!
「こ、これでいいでしょ!」
きゅっと奏斗くんの手を握る。
「うん。合格!」
わたしが一方的につかんでいた形の手が、しっかりと握り返される。
……どうしよう。本当に奏斗くんが彼氏みたいだ。
廊下のつきあたりには新たな部屋があった。
この部屋では何をすればいいんだろう?
「明らかに怪しいのはあのドアの前のタイルだな」
「うん。あれは絶対に何かあるよね」
部屋の中の扉の前に、二つだけ床の色が違う場所がある。
「とりあえず部屋の中調べてみようぜ」
奏斗くんの言葉をきっかけに、二人して部屋を物色する。
「……莉衣、なんでこのダブルデートを受けたんだよ」
「え?」
それ、今必要な話?
「あいつ、絶対莉衣のこと好きだろ。てかずっと彼女より莉衣にばっか話しかけてるし」
「……」
「否定しないんだな」
奏斗くんに気づかれてる。
これ以上隠してもしょうがないか……。
「あのね、わたし……中学の卒業式の日、瑞希に告白されたの」
ずっと友達だと思ってたから、本当に驚いた。
「断ったんだけど…………」
「なかなか諦めてくれなかった、ってとこか」
「……うん、そうなんだよね。今回のダブルデートも、たぶんわたしに彼氏ができてないかの確認だったんだと思う。だから彼氏がいないことを理由に断ることができなかったの」
もしも彼氏がいないと分かれば、また瑞希に告白されるかもしれない。わたしは瑞希の気持ちに応えるつもりはないのに……。
「なるほどな。ってことは俺も気合い入れないといけないわけだ」
「どういうこと? 気合い入れないといけないのはわたしだと思うんだけど」
「……俺との関係が嘘だってバレたら大変だろってことだ、うん」
「なんか変な奏斗くん」
でも確かに奏斗くんの言う通り、瑞希にバレたらこのデートが無意味なものになってしまう。
まぁバレるとは思えないけど……。
――わたしが見つけたパズルのピースは、暗証番号の描かれているパズルのひとかけらだった。
「たまには莉衣のまぐれも役に立つな」
瑞希がわたしの頭に手を置こうとして、それよりも先に奏斗くんが肩を抱き寄せてきた。
「勝手に莉衣に触れるなって言ってんだろうが」
「心が狭いねー、彼氏くん」
「はいはい。二人とも、部屋を出て先に進むわよ」
春姫ちゃんが自然と二人を促してくれるからいいけど、奏斗くんと瑞希だけだったらケンカになっちゃいそう。
「あれ? 別れ道?」
廊下が二手に分かれてる。
「どっちか選ぶんじゃねぇの?」
「いや、ここにペアになって二手に分かれるようにって指示がある」
瑞希の声に対して、奏斗くんがプレートを指差した。
「莉衣、右と左どっち行きたい?」
「えーっと、どっちでもいいけど」
「じゃあ左の道の方が近いし、俺たちは左にするか」
「えっ! わたしと奏斗くんでペア?」
誰とも何も相談してなくて、いいのかな?
「勝手に決めんなよ」
ほら、やっぱり。瑞希から反対の声が出た。
「他にペアの組み方なんかないんだから、別にいいだろ。あー、おまえらが左の道がいいって言うなら、俺たちは右でいいぞ」
「だから! なんで勝手に決めんだよ!」
「もう! いいでしょ、瑞希! 私たちは右の道にしようよ。ね?」
ありがとう、春姫ちゃん。本当に助かる。
「二人とも、また後でね。じゃあ、わたしたちは左だね。行こう、奏斗くん」
「……あぁ」
こうして二手に分かれたわけだけど……うーん、どうしよう。まだちょっと怒ってるっぽいな。
チラッと奏斗くんの手を見る。
手、つないでみようかな。さっきは奏斗くんからだったし、今度はわたしから……。
いやいやいや。ちょっと待って。
わたしったら何を血迷ってるの。正気を取り戻して、莉衣!
わたしと奏斗くんは恋人同士のふりをしてるだけ。
意識して奏斗くんの手を視界から追い出した。
「なんだよ、つないでくれねーの?」
「わっ! か、奏斗くん⁉」
突然の奏斗くんのドアップ。
「い、いいいいきなり顔をのぞきこまないでよ。あー、びっくりした」
「俺の手をすげぇ見てるからつなごうとしてくれてんのかなって期待したんだよ。期待させといてやめるなんて酷くね?」
「と、言われても……」
「…………。…………」
無言のプレッシャーが‼
奏斗くんの手を目の前に出されたままで、それを無視することなんてできない。
わたしから手をつなぐの……すごく緊張するな。
えい! 勢いだ!
「こ、これでいいでしょ!」
きゅっと奏斗くんの手を握る。
「うん。合格!」
わたしが一方的につかんでいた形の手が、しっかりと握り返される。
……どうしよう。本当に奏斗くんが彼氏みたいだ。
廊下のつきあたりには新たな部屋があった。
この部屋では何をすればいいんだろう?
「明らかに怪しいのはあのドアの前のタイルだな」
「うん。あれは絶対に何かあるよね」
部屋の中の扉の前に、二つだけ床の色が違う場所がある。
「とりあえず部屋の中調べてみようぜ」
奏斗くんの言葉をきっかけに、二人して部屋を物色する。
「……莉衣、なんでこのダブルデートを受けたんだよ」
「え?」
それ、今必要な話?
「あいつ、絶対莉衣のこと好きだろ。てかずっと彼女より莉衣にばっか話しかけてるし」
「……」
「否定しないんだな」
奏斗くんに気づかれてる。
これ以上隠してもしょうがないか……。
「あのね、わたし……中学の卒業式の日、瑞希に告白されたの」
ずっと友達だと思ってたから、本当に驚いた。
「断ったんだけど…………」
「なかなか諦めてくれなかった、ってとこか」
「……うん、そうなんだよね。今回のダブルデートも、たぶんわたしに彼氏ができてないかの確認だったんだと思う。だから彼氏がいないことを理由に断ることができなかったの」
もしも彼氏がいないと分かれば、また瑞希に告白されるかもしれない。わたしは瑞希の気持ちに応えるつもりはないのに……。
「なるほどな。ってことは俺も気合い入れないといけないわけだ」
「どういうこと? 気合い入れないといけないのはわたしだと思うんだけど」
「……俺との関係が嘘だってバレたら大変だろってことだ、うん」
「なんか変な奏斗くん」
でも確かに奏斗くんの言う通り、瑞希にバレたらこのデートが無意味なものになってしまう。
まぁバレるとは思えないけど……。
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