灰燼戦記

天緒amao

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花の章

いつまでも、くだらない話を

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 本当に来てくれた。それが、一週間後にフォルテフィアで王女に出会った時に、一番強く抱いていた感情だ。
「…冗談かと思っていました。」
「でも、ボタン様も来てくださった。今日はこの間の制服ではありませんのね」
 悪戯っぽく笑った彼女には、王家のカリスマ性が垣間見えた。無邪気で純粋な少女。それでいて、確かに人を寄せ付ける魅力を感じさせる。全てを持っている人というのは彼女のことなのであろう。
 それから俺たちは腰を下ろし、また丘を見下ろす。風が吹くたびに彼女の髪が揺れる。美しい。絹だの宝石だのという賛辞が安く見えるくらいに。こんなに女性の外見に対して興味を持ったのは初めてのことだった。
 しばらく風景を眺めながら、時折溜め息を吐く。それに彼女が笑うので、俺が訳を聞く。ロゼリアの景色はそんなに癒されますかと言われて、涙が出るほどだと答えた。会話はぽつぽつとある程度だ。出会って(実質)二日で、且つこの会話量で落ち着くと感じるのは、相性がいいということなのだろうか。…そうならいいな。

「王女は、小難しい話はお嫌いですか?」
 俺がふと聞く。
「いいえ、答えも終わりもない話が好きですわ。」
「…ずっと、答えを出しかねている話がありまして。あなたの意見をお聞きしたいです。」
 力になれるかは分かりませんが、と彼女は受け入れてくれた。

「林檎の皮を被った蜜柑は、林檎か蜜柑かどちらだと思いますか。」
 俺は恐る恐る口に出す。変な話をしているのは分かっている。が、どうしても彼女の答えが聞いてみたくなった。
「どちらかと言えば、蜜柑だと思いますわ。何をして林檎を林檎と呼ぶかによりますけれど。」
「では、人間善人の皮を被った腐肉悪人は、どちらだと思いますか。」
 彼女は少し固まった。何が聞きたいのか分からないような顔をして。しばらく考えてから、
「それも、何をして人間を人間と呼ぶかによりますわ。」
と答えた。
 優しい風がざあと吹いた。彼女は風に舞った髪を耳に掛け直しながら続ける。
「例えば、林檎の価値が外見だった場合、それは林檎でございましょう。ですが、林檎の価値が味だった場合、それは蜜柑でございましょう。同じように、人間の価値が外見だった場合、それは人間でございましょう。人間の価値が中身だった場合、それは腐肉でございましょう。…ただ、」
「…ただ?」
「その腐肉は、何のために人の皮を被るのですか?」
 その答え次第であなたは、答えを変えるのだろうか。腐肉はなぜ人の皮を被るのか?それは簡単だ。人間になりたいからだ。他者を愛したいからだ。誰かに愛されたいからだ。そのまま言うか少し迷って、言ってみる。
「人間になりたいから、誰かを愛し、愛されたいからです。」
 俺もそうだ。善人のふりをするのは、善人になりたいから。心から善人になることはできないとしても、善いことをする人間は善人に見える。俺は見かけだけでも善い人間でいたい。
「ならば、それは人間です。ボタン様もそうお思いなのでしょう?」
「どうして私もそうだと?」
「…だって、もしもそうでないなら、もう少し利己的な理由を挙げるものではなくて?」
 その青い瞳に何もかも見透かされるようだった。でも残念ながら、俺はそうは思わない。希望を持ちたいだけだ。どう取り繕ったって腐肉は腐肉、完全に人間になることなど出来やしない。それは、俺の生が証明しているのだから。
 優しく微笑んだ彼女に、何故か少しだけ罪悪感を感じた。

 見下ろすと、俺の手が置いてあるすぐ横に、小さな花が咲いていた。
「王女、この花は…」
 王女がこちらに体を寄せた。見にくいのかと花に手を伸ばす。摘まずとも見えますから、咲かせておいて差し上げましょう、そう言われてまた、慈しみ深い方だと思った。
「勿忘草なんて咲いておりましたのね、この丘に…」
 勿忘草。これがそうなのか。何かの本で読んだ気がする。
「花言葉は…『忘れないで』。名前の通りですね。」
「ボタン様の国ではそうなのですね。ロゼリアでは、『私のことを考えて』と…。」
 忘れない、の定義の違いだろうか。からすの国の『忘れないで』は、時々思い出して、そんなニュアンスを感じる。だが、ロゼリアでは…方時も忘れず、常に考え続ける。それが、『忘れない』なのだろう。
「そういえば、ボタン様のお名前も花の名前でございますね。…花言葉は、高貴。それと、…恥じらい。」
 彼女はくすくすと肩を揺らす。ああ、そういえばそうだったな。他にはなんだ、王者の風格、だったか。気になって調べたことがあった。俺には似合わない。昔もそう思ったはずだ。「後ろめたさ」などが花言葉の花はないのだろうか。
「私の国では、昔からの豊穣の祈りを込めて、子供に植物の名を付けることが多いのです。友人たちも皆、殆どが。」
「素敵ですわ!ふふ、なんだか心も安らぎそうでございますわね。」
 戦争大国の癖に豊穣の祈りなどを大事にするなんて滑稽でしょう、とは言わずにいた。自分で少しだけ面白くなった。

 不意に見上げた空に、きゅうきゅうと啼き声が聞こえた。海猫か何かか。海岸が近いこともあって、耳を澄ませば微かに潮騒が聞こえる。聞き入っていると、察したのか王女も目を瞑った。
「…ねえ、ボタン様は、海の近くに住みたいと思ったことはございますか?」
「数えきれないほど。」
「潮風の当たる所では、金物がすぐに錆びて行くそうですわ。…私は、素敵だと思うのですが…やっぱり変でしょうか?」
 少し躊躇いながら口に出した王女。確かに、あまり共感されることはないのだろう。普通の人間は、金属には華やかなイメージを覚えるものらしい。
「…ええ、それは…とても素敵ですね。」
 俺は金属で作られたものにいいイメージがない。思い浮かぶは、刀と、銃と、それから…鉄の匂い。つまりは、戦に関わるものばかりだ。それがどんどん廃れて、忘れられていくと思うと。心から素敵だと感じた。
「そうだ、海岸の方に降りてみませんか?もっとあの海の近くへ。」
 丘を少し降りればすぐに海岸だ。もう少し近くで、波打ち際を、時が尽きるまで眺めていたい。そう言ったら王女は付き合ってくれるだろうか。


 少し遠巻きに靴と靴下を脱いでおいた。踏みしめる少しばらつきのある砂はまるで俺の時を巻き戻すかのように、幼い頃に返すかのように、俺の心を癒してくれている気がする。俺も死んだあとは、死んだ珊瑚でできた砂のようになりたい。もう少し歩けば、また砂の質が変わった。すごくきめの細かい砂粒。進むごとに纏わりつくが、うざったくは決してない。またもう少しで、少し水の染みた泥に変わった。歩くだけでなんだか心地がいい。まだ波の飛沫にも触れていないのに。
 そっと進む。少し泡立った白波が素足にじゃれついた。八月の海は暑さを洗い流してくれるようだった。ふと隣を見ると、王女は波で濡れないようワンピースの裾をたくし上げながら、押して引いてを繰り返す波をただ受けていた。
「そういえば私、タオルも何も…。砂まるけになってしまいますわね。」
 甘んじて一緒に砂まるけになりますよ、と俺が返すと、彼女はなら問題はありませんわねと微笑み返した。
 子供の頃は、海に来たら…弟達と水を掛け合ったりもしたな。何が楽しかったのだろう、ひたすらに楽しかったが。子供でいられる間は、何をしたって楽しい。くだらないことに熱中できるのがどれだけ素晴らしいことなのか、それに気がついたのはつい最近のことだった。足元には、いくらかの貝殻が砂と一緒に埋まっている。昔はこんなのも大量に集めて帰ったな。
 王女は、足に海水が少しかかるくらいの場所に座った。ワンピースは良いのですかと聞くと、帰ってから侍女と一緒に洗いますと笑った。俺も少しズボンの裾を捲り上げて、その隣に座る。会話は無いが、それもまたいい。泡沫うたかたの弾ける小さな音と、寄せては返す波の音。また時々聞こえる鳥の声。ゆったりと吹く潮風。見上げれば、空の高いところに月も出ている。まだ明るい空に上がった月は、真夜中の色気のある感じとはまた違って綺麗だ。
「慣れないからでしょうか、…ここの景色は世界で一番美しく見えます」
「そう見えるのは、心がここにあるからですわ。疲れてどこかへ置いてきた心が、戻ってきたのでしょう。」
 心がここにあるから。そうか。心などは戦場で失くしてしまったものだと思っていたが、この景色が取り戻してくれたのだろうか。
「王女は、詩的な言い回しをよくされますね。」
「…変だったかしら。」
 そう言って頬を赤らめた彼女が綺麗だと思ったのも、ここに心が戻ったからだろうか。
「いいえ。素敵です。」
 俺の胸の空虚の正体。ずっと、穴が空いたままだ。俺は何かが足りない、欠けていると感じていた。俺に足りないそれは、心というものだったのだろうか。埋まったようにはまだ思えない。でも、何か掴んだような気がした。

 次の週も、その次の週も、俺と王女の交流は続いた。長閑な平原の景色を楽しんだり、喋ったり、また哲学的な話をしてみたり…、と同時に、烏の国の進軍も続いた。ユースタフルを占領した翌々日も、オーレヴェンテでロゼリアの兵士が撃たれて死ぬのを見た次の日も、俺は素知らぬふりをして彼女と会った。彼女は、各地でが起きたと毎度悲しむ。それを毎度慰める。まるで自作自演。陳腐な劇。全て俺が計画を立て、指示を出してさせたことなのに。
 痛いのだ。彼女の優しさに触れるたび、自分の醜さが浮き彫りになっていく。いっそのこと全部言って、彼女との関わりを一切絶った方が、どちらにとっても楽なんじゃないか。時々そう考える。でも、そんなことを言い出す勇気は一向に出ない。弱い、俺はとても、弱い。行動の全てが保身のためだ。惨めで矮小、抗う心を捨てた痴れ者。その弱い俺の輪郭を、だれか知ってくれないだろうか。


 平原に着くと、すでに王女がいた。彼女を待たせまいと行く時間を伝え、三十分程早く来てみたことがあった。彼女はすでにいた。そんなに俺と話すのを楽しんでくれているのだろうか。
 いつも通り、彼女の左側に腰を下ろす。さく、と草の音がする。視線を彼女に。すると、少しだけ淋しそうな顔をしていることに気がついた。何かあったのだろうか。俺が力になれれば良いが。
「どうされましたか。何か考え事でも?」
 俺が聞くと、
「あぁ、気付かれてしまいましたか。何だか申し訳ないですわ、全部顔に出してしまって。」
そういって謝るように笑うので、何も謝ることは、と宥めた。
 それからしばらく、中々一言目を口にするのは難しいようで、言おうとしては辞め、言おうとしては辞めを繰り返していた。
「王女。…私は、どんなことでも構いませんよ、」
 俺がそういうと、彼女ははっとしたような顔をしてから、くすっと笑って、完敗ですわと小さく呟いた。愛しいとはこういう感覚かと、俺も完敗だった。
「…今日は、牡丹様のお考えが知りたくて。」
 王女はそう言って話を切り出した。
「私の?何についての、でしょう。」
 何の話をするのだろう。余り難しい学問などの話となると、俺の頭では理解できないかもしれない。何日も話していて、彼女の教養レベルはすごく高いことに気がついた。当然だ、王女なのだから。頭が良いかどうかは基準がないからわからないが、博学なことに違いはない。
「嘘は無条件で悪かというお話です。」
 …それを、俺に聞きますか。
 嘘は無条件で悪か。その答えは俺が一番知りたがっていると思う。様々な場面で……、というよりも、俺が生きていくには嘘は絶対に必要だ。いや、正確には、『からすの国で』生きていくには、絶対に必要だ。戦争を嫌う腰抜けの軍人など、ましてや名家の息子など、生きていけるはずがない。
 悪なのだろうか。ならば、善人のふりをするために、辞めなければならないのか。理由があれば悪くはないのだろうか。それなら、一生嘘をつき続けて生きていくのか。それも俺の望みとは違う。嘘は…嘘とは、悪なのか?
「…分かりません。…その答えは、未だ探している途中なのです。」
 やっとの思いで絞り出した言葉に、王女は
「牡丹様もそうなのですね。私も、そうなのでございます。」
…そう言って、ほっとしたような表情をした。その顔は確かに安堵だったが、一度目に会った時…王女が自らのコンプレックスについて語っていた時の、淋しげな雰囲気を纏っていた。
 王女はゆっくり続きを話そうとする。けれどまた、口に出すのを迷っている。話したければでいいんですよ。そう言いたかったが、それは催促のように聞こえるなと思い直して、辞めておいた。雲の流れが少し早い。空の上の方は、風が強いのだろうか。平原に吹く風は相変わらず優しい。
「…私、…嘘をつかれることが多いのです。城の者からです。皆、私のことを思ってくれているのは、十分に…誰よりも分かっているつもりなのです。でも、どこか疎外感を感じてしまう。皆が背負っているものを、私だけ持っていない。…この寂しさは、どう咀嚼するべきなのでしょう。」
 彼女は目を潤ませた。その気持ちは、少しだけ分かるような気がした。他の全員が背負っているものを、自分だけ背負うことのできない苦しみ。俺も、ずっと悩んでいる。疎外感。まさにそうだ。どうしようもない、をどうしようもない。何を選んでもどちらかは不幸になる。でも思考放棄はなぜか憚られる。葛藤。思考は止まない。
 俺は悩んだ末答える。
「気遣いだと分かっているのなら、…無理に解決せずそのまま悩み続けるのが良いのではないでしょうか。勿論、考えるほど王女は傷ついてしまうかもしれません。でも、それが一番皆の気遣いを無駄にせず、あなたの気持ちも壊さない方法だと思います。」
 そう考えるのは俺の怠惰のせいかもしれない。それでも今俺が提示できる精一杯の回答はこれだ。…王女は喋らなかった。まるでその答えが自分にとって正しいことを分かり切っていたかのように。少し泣いていた。女性にしかできない、真顔に一筋涙を乗せたような顔。正確にはそれは真顔ではない。どの感情を出せば良いのか分からず、どの感情も顔に出ないだけなのだ。
 彼女はただ泣いた。時折ゆっくりと涙を拭って。俺は、例えそれが事実だとしても、『私にはその辛さが分かります』なんてことは決して言わない。求められていないからだ。そんな言葉、欲しくない。そうでしょう。今だけは、他人の気持ちなんて、世界平和すらもどうでもいい。俺はただその場にいて、慰めようと距離を詰めるでも、そっとしようと離れるでもなく、ただ見ている。動かない。喋らない。ただそこで一緒に息をする。それが一番救われる寄り添い方だと、俺は知っている。
 平原の景色は、彼女に初めて出会った八月上旬とは少し違った。今は十月の中旬に差し掛かっていて、聞こえる音や見えるもの、時間の立ち方や風の匂いまで、少しずつ違う。さっき時計を見たときは、午後四時くらいだった。四時くらい。なのに、空は夜に沈もうとしている。明るさとしては仄暗い。淡い黄色の空が、向こうから迫る少し暗い水色に呑まれていく。少し前から、この時間帯になると虫の声が聞こえてくるようになっていた。相変わらず長閑な波の音。俺たちを撫でる風。それに吹かれて揺れる、少し色の褪せた雑草。何もかもが穏やかで、美しい。二ヶ月ほど経ったが、ずっとその感想だけが変わらない。ここは永遠に綺麗だ。
 こういう所で、平凡で緩慢な死を迎えられたなら。
 しばらくして、落ち着いたのか、王女はゆっくりと語り出す。
「私は、すべての人に大切な所だけは正直でいたい。大切なところで嘘をつくと苦しくなる。でも、嘘が悪だとは思わない。この矛盾を、認めてくださいますか?」
 先程まで自分が泣いていたなどとは信じられないほど、優しい声色。笑顔。確かに弱々しく、同時に確かに芯の通った意志を感じる。
「ええ。私も、幾千の矛盾を抱えておりますので。」
 敢えて微笑まずに言った。
 俺も少しだけ泣きたくなった。感化されてしまったのだろうか。



「葵ちゃんさあ、牡丹がここんとこずっとどこ行ってんのか知ってる?」
 ふと楓さまが言った。
「いえ、存じ上げません。…楓さまはご存知なのでございますか?」
「いンや…ロゼリア方面なのは分かんだけどさ。」
 毎週日曜日、牡丹さまはどこかへ行く。ここ二ヶ月ほどずっとそうだ。何をしているのだろうか。
 ロゼリアに観光?そんな人じゃない。一人で鍛錬?…そんな人でもない。おおかた気晴らしにでも行っていらっしゃるのだろう。葵も連れて行って欲しゅうございます、とは言い出せない。ああ、あんな嘘吐かなければ。
 牡丹さまにとって、わたしはただの同居人。言っても仲のいい友人。その程度。後先考えずに『他人を好きになれたことがない』なんて言ったからだ。愚か者への罰。理解はしている。
 でも、寂しいものは寂しい。いくら割り切ろうとしたって、好きなものは好きだ。わたしは牡丹さまを心から愛していて、ずっと支えてきた。…支えてきたというのに、どこに行くのかも教えてはいただけない。いつもはぐらかされるのは何故なのだろうか。かと言って今更『嘘でした、牡丹さまのことがずっと好きです』だなんて嘘くさい。牡丹さまはそういうのはお嫌いだ。嫌いというより苦手に近しいかもしれないが。
「…なーんかさ、嫌な予感すんだよな」
「嫌な予感、でございますか?」
 うん、と相槌を打ち、背もたれにもたれる楓さま。木の椅子がぎいと音を立てた。
「俺は別に構わんけどね。葵ちゃんは嫌だろうなーっていう、予感」
 訳がわからなかった。楓さまは構わないのに、わたしは嫌なこと。なんだろう、戦争?安直すぎるか、というより予感ではないじゃないか。戦争は実際に起きる。起きている。なら何だ?牡丹さまが、死んでしまう?…考えたくもない。あと、それなら楓さまも嫌なはずだ。楓さまと牡丹さまは見かけよりもずっと仲がいい。相手のことを十二分に分かっている。うらやましいな。
「教えてあげてもいいけど、聞きたくないだろうし、信じてくれないだろうし?」
 私が唸っている間に、楓さまが眼鏡を外して拭いていた。そんなに悪い予感ですかと言うと、言ったらさらに邪推が広がるでしょと笑った。気遣ってくれているのだろうか、珍しい。
「何にせよさあ、葵ちゃん。覚悟しといたほうがいいよ?」
「…何をでございましょう。」
 楓さまはまっすぐにわたしを見た。
「牡丹にとっては、今までで一番デカい戦場だからさぁ…牡丹、またひとつ何かを失うよ。」
「…そんなことでございますか。…大丈夫です、葵は性格の悪い女でございますので、拠り所のない牡丹さまの唯一になれれば、…それで良いのです。」
 わたしが返すと、楓さまはからからと笑った。そういうとこ本当に好きだよと、何度も言われたが楓さまにはなびかない。
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