ただ「扉」を開けられるだけなのに、イケオジ達に奪い合いされるとか聞いてません。

天緒amao

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第1章【女神様は笑わない】

9「勉強の合間に/Study and steady2」

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「去年の五月に愛知県で起きた暴動は知っていますか?」
「知ってはいますけど、詳しくは。自衛官数名が襲われたんでしたっけ…?」
「あれは復旧派の過激な無政府主義者アナーキスト集団によるもので……」
 鈴木教授の話を遮るように、ドアが大きな音を立てて開いた。見ると、走ってきたのか頬に少し汗を滲ませた、不健康そうなマッシュヘアの男の人が立っていた。
「はぁ…はぁ……遅れてサーセン、自分方向音痴で…はぁ……ちょ、すません、…」
 息を切らしながらドサっと鞄を落としたその人は、どうやらもう一人の先生役みたいだ。
「長年の運動不足が祟りましたね、弓木君」
「そうすね……はぁ……スズヒロ先生はお元気そうで……はぁ…」
 鈴木教授はくすっと笑って、一旦休憩にしましょうか、と私に微笑みかけた。この数時間で詰め込まれすぎてパンクしそうな頭に、とどめを刺されたような感覚があった。

「あー、どうも、弓木ユミキ兼親カネチカす。日本語最近あんま話してないんで変だと思いますけど…なんか分かんなかったら聞いてください。よろしゃす。」
「高橋晴香です、よろしくお願いします」
 息を落ち着かせたその人は弓木さんというらしく、なんでも海外の大学出身の異世界学に通ずる人らしい。
「先生もお久しぶりです。相変わらず老けませんね」
「高校生ぶりですか…、君は相変わらずの方向音痴ですねえ。アメリカへ行っても治りませんでしたか。…それにしても、教え子と同じ立場で働く日が来るとは、何とも感慨深い。」
 教授がまた目を細めた。え、学生時代に鈴木教授の授業受けてたってこと…?羨ましい…!!いいなぁ、私もイケオジに教えて欲しかった……。
「…いい時間ですし、今日はこのまま、この辺りで勉強はおしまいにしましょう。弓木君も来たことですし、親睦会と行きますか。四時間半も小難しい話やらワークやらを、よく耐えましたね。」
「教授の話がすごく分かりやすかったので。まぁ内容は難しかったですけど…まぁ、知っといた方が私のためにもなるでしょうし。」
 鈴木教授って大学で教えてたんだっけ。きっとこの人が社会担当だったら、毎回テスト満点取れるんだろうなぁ…噛み砕いて教えてくれたり、何度か違う方法で確認したり、すごく勉強を教えるのが上手だったし。あーもう、こう言う神様みたいな先生が良かったよ……。
「学習意欲高ぇ……自分も中学生んときから勉強しとけば良かった…」
 弓木さんがぼそっと呟いた。

 そのあとは本当に親睦会になった。いつから扉を開けるんだとか、松邨さんの様子はどうかとか、最近の中学校教育や世界情勢の難しい話やら……頭がいい人って、ここまで広い話題で話せるんだなと感心した。
「弓木さんって、なんかすごい頭のいい大学に行ってるんですよね。どうしたら勉強って身につくんですか…?私あんま頭良くなくて…」
「いやいや、自分が中学生の時はもっと頭悪かったっすよ。異世界関連とか勉強とかに興味持ち出したの、高校んときに先生に出会った時っすからね……晴香君の方が百倍偉いすよ」
「それに晴香さん、頭に良い悪いなどありませんよ。自分に適した勉強の仕方やモチベーションの保ち方が見つかっていないだけで……」
 二人は頭も良くて博識だけど、松邨さん同様嫌味な感じがしないし、ちゃんと私にわかる単語で喋ってくれる。研究員さん達とは大違いだ…引きずる私も悪いけどさ。
 三人とも割と年齢が離れているのに、合わせてくれているのか意外と会話が噛み合った。親睦会の甲斐あってか、ちょっと仲良くなれた気がする。よかった、スパルタで愛想悪い先生じゃなくて。






 今日は弓木さんの授業の日だ。異世界学は内側から出てくる化け物とか、扉を閉めるための装置の話とかもするらしい。
「晴香君、今日は難しい話はほとんどしません。日本における内側災害への対策だけ覚えて帰ってもらうっすよ」
「対策、ですか?」
「はい。あ、あと自分、ワークとか準備するの苦手なんで申し訳ないんすけど…ノートとってもらってもいいすかね?資料は後で送るつもりすけど、自分で書いた方が多分覚わるんで。」
「わかりました。」
 弓木さんがパソコンにスライドを映し、私に見える向きに調整した。黒と白を基調とした簡易的だけどお洒落なスライドで、いかにも頭がいい人って感じだ。
「…まず、今の日本で内側災害に対処できるのは、警察、自衛隊、そして旧全日本防衛きゅうぜんにっぽんぼうえい…今は株式会社VOLTEXXヴォルテックスって社名になってますが。…あと、政府非公認の団体では、対異世界戦線たいいせかいせんせんですかね。この4つだけっす。警察はわかりますよね?」
「はい。対異一課ですよね」
 スライドがスクロールされた。
「警察は内側に関連していそうな特殊な事件を捜査したり、自衛隊と合同で異生物を処分したりします。自衛隊は省略してもいいですね。対異世界戦線もまぁ、いいでしょう。…日本で物議を醸しているのがVOLTEXXです。VOLTEXXは低コスト且つ早急に扉を閉じる独自の技術を所持していて、現在はそれを門外不出とさせています。」
「えっ?く、国に公開しないんですか!?」
 そう言う命が関わる系の重大なものって公開しているところが多かったから、つい驚いた。
「VOLTEXXが15年かけて確立させた技術すからね。無償で公開したら、VOLTEXXが潰れるかもしれませんし。国から支援金・もしくは技術買取の費用を出すならいつでも公開すると宣言していますが、政府は渋っているみたいです。」
 そっか、無償で公開してしまったら、VOLTEXXが大きい損害を負うことになるから。確かに人の命は大事だし何よりも優先するべきだと思うけど、VOLTEXXの人たちの仕事がなくなるとなると、渋る気持ちもわかるな。
「国がさっさと金出せばいいんすよ。そうすればみんな助かると思うんすけどね…。」
 本当に全員が助かる道を、どうやったら完璧に選べるのかな。
そんなことをぼんやり考えた一日だった。
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