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第1章【女神様は笑わない】
8「Study and steady」
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「ほぉ…最近の女子はこんなん着るのか」
買ってきた服やらをまじまじと眺めながらそう言った松邨さん。いや、あなたもだいぶ最近の女子でしょ。
ショッピングバッグから出され、タグを切ったり畳んだりすること10分くらい。ソファの上にずらっと並べられたのは、
・黒沼さんが選んだ就活生(?)コーデ
・膝上くらいの黒いスカート
・ダメージジーンズ(小野さん曰く偽物?らしい?)
・Tシャツとか長袖とか、無難なものいくつか
・小野さんが選んだ文学少女みたいなワンピース
・ちょっとお高めでおしゃれな薄手のセーター
・河村さんが選んだ機能面全振りのスポーツ着
・有坂さんが選んだストリート系の服
……というように、もう本当に多種多様。
加えて、それだけではない。コスメやらゲームやら、ぬいぐるみやら…大量に買い込んでしまったというのだから。買いすぎ。お金使いすぎ。
「なんかほんとに申し訳ないです…全部家から持ってこれば済んだのに…」
爆買いあるある。特に女子。買った後から急にいろんな感情が押し寄せてくること。…本当に買いすぎだ。黒沼さんたちが良いよ良いよって言うから、ついそれに甘えすぎてしまったかもしれない。反省しないと。
「買い物に行く、と言うことが大切なのでしょう?女性の方にとっては特に。…どうですか、多少の憂さ晴らしにはなりましたか」
「な、なりました!これからの実験もがんばろー…と…思いました!」
にっこりと小野さんに微笑みかけられて、またオチてしまいそうになるも必死に堪えた。
「さて、これからは忙しくなるぞ。晴香、お前には異世界学と内側学の勉強をしてもらう。スペシャリストと名乗れるくらいになるまで叩き込んでやるから覚悟しておけ。」
「えーと…それはどういう学問なんですか…?」
異世界学、内側学。ぼんやり聞いたことはあるけど、なんのことだかはさっぱり……
「最近は学校で習わないのか?異世界学は内側そのものや対抗策に関する学問、内側学は内側教やら災害遺族やら、人に関わる歴史に重きを置く学問だな。」
「へぇ…そうなんですね…それって誰が教えてくれるんですか?」
「私の知り合いに、内側学の教授をやっていた奴がいてだな…」
「教授、…弓木は?」
「いえ…見てませんね、どこかで迷っているのでしょうか」
「あぁ…じゃ、先に晴香と話しておいてくれ。内側学の勉強を先にやろう。」
「わかりました。」
話が終わったのか、松邨さんはどこかへ去っていき、教授さんが私に近づいてくる。
「はじめまして、鈴木 尋と申します。昔は大学で内側学の教授をやっておりました。残念ながら、今はただの老いぼれですがね。」
「た、高橋晴香です!よろしくおねがいします…」
鈴木さんは白髪混じりの髪をおしゃれに固めていて、優しい眼差しで私と目を合わせた。ね、年齢高めのおじだ…!!きちんと整えられた眉や髭がいかにもな上品さを醸し出している。こんな洋風ファンタジーの執事みたいな人実在してるんだ……
「高橋晴香さん、貴女とは前々からお話がしてみたいと思っていたんです。」
「へぇっ!?」
思わずバカみたいな声が出た。大きい声を出してから気づいたけど、この人は別に私自身に興味があるんじゃなくて、学術的興味があるだけでしょ…!!ほんと、早とちりですごいことしてしまった。
「ふふ、どうですか、最近の生活は。」
目を細めて笑う鈴木さん。あぁ、本当に恥ずかしい…
「その…色々キツいこととかもありますけど、河村さんたちも優しいですし…悪くは、ないかな…って感じですかね」
「そうですか。それは良かったです。」
その顔で笑わないで下さい!!…などと言い出せるはずもなく、俳優さんでも見ないような属性のおじさまに出会えた幸せを噛み締める。
「くる香さんの指示で、先に内側学の勉強をすることになりました。始めましょうか。」
…私、授業が終わるまで生きていられるかな……?
「まず、内側学の七割を占める『内側教』の概要について知って頂きましょう。
内側教とは、扉や内側を信仰する宗教です。基本となる教義は、
「扉」の内側には神聖なもの達が、外側には穢れたもの達がいる。
人は「扉」の内側へ還るべきである。
人は「扉」の内側の為に団結せよ。
人は「扉」の内側を穢すな。
…の四つで、これらは四大原則と呼ばれています。内側教はいくつかの宗派に分かれますが、この四大原則はどの宗派でも一番重いものとされています。
内側教の起りは500年ほど前で、大崎 蒼葉が設立した「内側信仰会」という新興宗教が後に改名され今の「内側教」になりました。
内側教は元々一つでしたが、大崎蒼葉の死後、有力な信者たちが各々の解釈を広げていきました。今知られている宗派は主に三つで、「開放派」「復旧派」「聖域派」と呼ばれます。
内側教の中でも一番過激なのが「開放派」で、近年一番勢力を増しているのも開放派です。開放派は四大原則の二つ目、『人は「扉」の内側へ還るべきである』を重視しており、その名の通り、人為的に扉を開けようとする宗派です。扉を閉じようとする自衛隊を妨害したり、暴動を起こしたりするので、世間から危険視されています。
「復旧派」は、行動自体は開放派とあまり変わりません。しかし、復旧派は内側こそが正しい世界であるという考えのもと、さらに詳しい教義や戒律を増やした、典型的な「厳しい宗教」です。
内側教の中で一番穏健なのが「聖域派」です。聖域派は四代原則の四つ目『人は「扉」の内側を穢すな』を重視しており、扉を閉じることには否定的ですが、開放派や復旧派とは違い内側に入ることはしません。
…と、言うように、内側教はいくつにも枝分かれしていて、歴史も複雑です。…頑張りましょうね?」
「いや無理です!!」
慌てて答えたけど、また優しい笑顔を向けられてちょっと引いてしまう。
私ってつくづく、チョロい女………
買ってきた服やらをまじまじと眺めながらそう言った松邨さん。いや、あなたもだいぶ最近の女子でしょ。
ショッピングバッグから出され、タグを切ったり畳んだりすること10分くらい。ソファの上にずらっと並べられたのは、
・黒沼さんが選んだ就活生(?)コーデ
・膝上くらいの黒いスカート
・ダメージジーンズ(小野さん曰く偽物?らしい?)
・Tシャツとか長袖とか、無難なものいくつか
・小野さんが選んだ文学少女みたいなワンピース
・ちょっとお高めでおしゃれな薄手のセーター
・河村さんが選んだ機能面全振りのスポーツ着
・有坂さんが選んだストリート系の服
……というように、もう本当に多種多様。
加えて、それだけではない。コスメやらゲームやら、ぬいぐるみやら…大量に買い込んでしまったというのだから。買いすぎ。お金使いすぎ。
「なんかほんとに申し訳ないです…全部家から持ってこれば済んだのに…」
爆買いあるある。特に女子。買った後から急にいろんな感情が押し寄せてくること。…本当に買いすぎだ。黒沼さんたちが良いよ良いよって言うから、ついそれに甘えすぎてしまったかもしれない。反省しないと。
「買い物に行く、と言うことが大切なのでしょう?女性の方にとっては特に。…どうですか、多少の憂さ晴らしにはなりましたか」
「な、なりました!これからの実験もがんばろー…と…思いました!」
にっこりと小野さんに微笑みかけられて、またオチてしまいそうになるも必死に堪えた。
「さて、これからは忙しくなるぞ。晴香、お前には異世界学と内側学の勉強をしてもらう。スペシャリストと名乗れるくらいになるまで叩き込んでやるから覚悟しておけ。」
「えーと…それはどういう学問なんですか…?」
異世界学、内側学。ぼんやり聞いたことはあるけど、なんのことだかはさっぱり……
「最近は学校で習わないのか?異世界学は内側そのものや対抗策に関する学問、内側学は内側教やら災害遺族やら、人に関わる歴史に重きを置く学問だな。」
「へぇ…そうなんですね…それって誰が教えてくれるんですか?」
「私の知り合いに、内側学の教授をやっていた奴がいてだな…」
「教授、…弓木は?」
「いえ…見てませんね、どこかで迷っているのでしょうか」
「あぁ…じゃ、先に晴香と話しておいてくれ。内側学の勉強を先にやろう。」
「わかりました。」
話が終わったのか、松邨さんはどこかへ去っていき、教授さんが私に近づいてくる。
「はじめまして、鈴木 尋と申します。昔は大学で内側学の教授をやっておりました。残念ながら、今はただの老いぼれですがね。」
「た、高橋晴香です!よろしくおねがいします…」
鈴木さんは白髪混じりの髪をおしゃれに固めていて、優しい眼差しで私と目を合わせた。ね、年齢高めのおじだ…!!きちんと整えられた眉や髭がいかにもな上品さを醸し出している。こんな洋風ファンタジーの執事みたいな人実在してるんだ……
「高橋晴香さん、貴女とは前々からお話がしてみたいと思っていたんです。」
「へぇっ!?」
思わずバカみたいな声が出た。大きい声を出してから気づいたけど、この人は別に私自身に興味があるんじゃなくて、学術的興味があるだけでしょ…!!ほんと、早とちりですごいことしてしまった。
「ふふ、どうですか、最近の生活は。」
目を細めて笑う鈴木さん。あぁ、本当に恥ずかしい…
「その…色々キツいこととかもありますけど、河村さんたちも優しいですし…悪くは、ないかな…って感じですかね」
「そうですか。それは良かったです。」
その顔で笑わないで下さい!!…などと言い出せるはずもなく、俳優さんでも見ないような属性のおじさまに出会えた幸せを噛み締める。
「くる香さんの指示で、先に内側学の勉強をすることになりました。始めましょうか。」
…私、授業が終わるまで生きていられるかな……?
「まず、内側学の七割を占める『内側教』の概要について知って頂きましょう。
内側教とは、扉や内側を信仰する宗教です。基本となる教義は、
「扉」の内側には神聖なもの達が、外側には穢れたもの達がいる。
人は「扉」の内側へ還るべきである。
人は「扉」の内側の為に団結せよ。
人は「扉」の内側を穢すな。
…の四つで、これらは四大原則と呼ばれています。内側教はいくつかの宗派に分かれますが、この四大原則はどの宗派でも一番重いものとされています。
内側教の起りは500年ほど前で、大崎 蒼葉が設立した「内側信仰会」という新興宗教が後に改名され今の「内側教」になりました。
内側教は元々一つでしたが、大崎蒼葉の死後、有力な信者たちが各々の解釈を広げていきました。今知られている宗派は主に三つで、「開放派」「復旧派」「聖域派」と呼ばれます。
内側教の中でも一番過激なのが「開放派」で、近年一番勢力を増しているのも開放派です。開放派は四大原則の二つ目、『人は「扉」の内側へ還るべきである』を重視しており、その名の通り、人為的に扉を開けようとする宗派です。扉を閉じようとする自衛隊を妨害したり、暴動を起こしたりするので、世間から危険視されています。
「復旧派」は、行動自体は開放派とあまり変わりません。しかし、復旧派は内側こそが正しい世界であるという考えのもと、さらに詳しい教義や戒律を増やした、典型的な「厳しい宗教」です。
内側教の中で一番穏健なのが「聖域派」です。聖域派は四代原則の四つ目『人は「扉」の内側を穢すな』を重視しており、扉を閉じることには否定的ですが、開放派や復旧派とは違い内側に入ることはしません。
…と、言うように、内側教はいくつにも枝分かれしていて、歴史も複雑です。…頑張りましょうね?」
「いや無理です!!」
慌てて答えたけど、また優しい笑顔を向けられてちょっと引いてしまう。
私ってつくづく、チョロい女………
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