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4 邪魔者はいなくなった(※ブレンダ視点)
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あぁ、せいせいした!
双子として産まれて、ずっと傍に忌子であるあれが居るのに耐えられなかった。
公爵家でありながら子宝に恵まれず、私が亡くなってからでは次の子は望めず取り返しもつかない。だから殺す訳にもいかないし、せいぜい利用しようという父母には、私まで道具扱いされてるみたいで不愉快だった。
けど、一番不愉快なのは、忌子の方を王太子の婚約者にした事。なんで私じゃないの? と何度も聞いた。返ってくるのはいつも同じ返事。
「王室に不幸があっても、公爵家に不幸が無ければそれでいい」
たしかに王弟殿下である大公様もいらっしゃるし、その御子息もいる。いざとなれば頭はすげ替えが利く、という理屈は分かる。
だけど、私は忌子じゃないのに公爵家で婿を取り、あれが王宮で王妃になる? 耐えられないわ、そんな社交界。
いつバラそうかと機会を伺っていたけれど、我が家に王太子が通うようになって1年。ようやくチャンスが訪れた。
あれと二人きりでお茶をしている最中、ずっと物陰で張っていて正解だった。席を離れた隙に王太子に全てを打ち明けたら、顔色を蒼くして黙り込んで、すぐに帰ると言い出した。
我が家は王家の転覆を願う立場ではないことだけは、お父様の働きで理解されている。ただ、思っていた以上に重用されないことに痺れを切らしていたのは確か。
翌日、私との婚約を先に宣言してから婚約破棄をあれに突き付け、利用価値のなくなったあれは『野獣』と呼ばれる辺境伯領に嫁ぐことが決まった。
それまで与えられていた全てを取り上げられて……今までが分不相応だっただけのこと……金で雇った荒くれ者に、『野獣』に嫁ぐ貴族の娘だから、と人を使って言い含め、『野獣』を知らぬ者はいないから貞操だけは保証されて送られていった。
僅かな下着と一枚の替えの服だけ持たされて、粗雑な荷馬車で運ばれていったと聞いている。
そして、私は王太子殿下の次の婚約者として……姉妹の場合、一人が病気で婚約を解消した場合、大体はもう一人が後釜に収まるのが通例だ……正式に書類を交わした。
これで私は忌子であるあれから切り離され、王太子妃の地位も約束され、お父様たちは最初からそうしておけばよかったものを、遠縁から養子を取って爵位を継がせることになった。
全てうまく回り始めたわ。王太子妃教育だって、あの子ができた事が私にできないはずがない。
それに、王太子殿下の心だって、あの子が忌子と分かった瞬間宙に浮いた。すぐに私に夢中にさせて忘れさせてあげなくちゃ。
双子の下の子は忌子。
この国は遠い昔魔族の侵攻を受けた。魔王なんてもうお伽話の中にしか居ないけれど、その魔王がその代の王妃を犯して生まれた子が双子。
上の子は人間、下の子は魔物の特徴を継いでいた。角が生え、触れるものを皆腐らせ、呪いを振りまいて直ぐに死んだ。その時にはもう、当代の勇者が魔王を殺していたから、誰もその子を助けも育てられもしなかった。
そして、忌子を産んだ王妃も、その前に殺された国王も居ない中、玉座に収まったのが今の王族だと言い伝えられている。
市井でも忌子だと言って口減らしのために双子の下の子は殺されるし、貴族や王族ならばほとんど殺される。欲をかいた貴族……うちの両親のような場合、結局バレれば損をする。
今回ばかりは全てうまくいってくれたけれど。公爵家と王室の結婚、まして忌子の出産に関わった使用人や乳母は皆『亡くなって』いるし、今更誰も何も証明できない。
だからこそ、私一人が告げ口するだけで信憑性が出る。少し調べれば『忌子に関わった人間が死んでいる』と分かるのだから。
「あれがずっと表舞台にいたのが間違いなのよ。魔物の跋扈する辺境で、さっさと不幸を振りまいてのたれ死んでしまえばいいわ」
そして、私は将来の国母となる。
私のようなたまたま忌子の姉として産まれてしまったような不幸な人を減らすために、絶対に忌子は殺すように、法を整えてみせるわ。
双子として産まれて、ずっと傍に忌子であるあれが居るのに耐えられなかった。
公爵家でありながら子宝に恵まれず、私が亡くなってからでは次の子は望めず取り返しもつかない。だから殺す訳にもいかないし、せいぜい利用しようという父母には、私まで道具扱いされてるみたいで不愉快だった。
けど、一番不愉快なのは、忌子の方を王太子の婚約者にした事。なんで私じゃないの? と何度も聞いた。返ってくるのはいつも同じ返事。
「王室に不幸があっても、公爵家に不幸が無ければそれでいい」
たしかに王弟殿下である大公様もいらっしゃるし、その御子息もいる。いざとなれば頭はすげ替えが利く、という理屈は分かる。
だけど、私は忌子じゃないのに公爵家で婿を取り、あれが王宮で王妃になる? 耐えられないわ、そんな社交界。
いつバラそうかと機会を伺っていたけれど、我が家に王太子が通うようになって1年。ようやくチャンスが訪れた。
あれと二人きりでお茶をしている最中、ずっと物陰で張っていて正解だった。席を離れた隙に王太子に全てを打ち明けたら、顔色を蒼くして黙り込んで、すぐに帰ると言い出した。
我が家は王家の転覆を願う立場ではないことだけは、お父様の働きで理解されている。ただ、思っていた以上に重用されないことに痺れを切らしていたのは確か。
翌日、私との婚約を先に宣言してから婚約破棄をあれに突き付け、利用価値のなくなったあれは『野獣』と呼ばれる辺境伯領に嫁ぐことが決まった。
それまで与えられていた全てを取り上げられて……今までが分不相応だっただけのこと……金で雇った荒くれ者に、『野獣』に嫁ぐ貴族の娘だから、と人を使って言い含め、『野獣』を知らぬ者はいないから貞操だけは保証されて送られていった。
僅かな下着と一枚の替えの服だけ持たされて、粗雑な荷馬車で運ばれていったと聞いている。
そして、私は王太子殿下の次の婚約者として……姉妹の場合、一人が病気で婚約を解消した場合、大体はもう一人が後釜に収まるのが通例だ……正式に書類を交わした。
これで私は忌子であるあれから切り離され、王太子妃の地位も約束され、お父様たちは最初からそうしておけばよかったものを、遠縁から養子を取って爵位を継がせることになった。
全てうまく回り始めたわ。王太子妃教育だって、あの子ができた事が私にできないはずがない。
それに、王太子殿下の心だって、あの子が忌子と分かった瞬間宙に浮いた。すぐに私に夢中にさせて忘れさせてあげなくちゃ。
双子の下の子は忌子。
この国は遠い昔魔族の侵攻を受けた。魔王なんてもうお伽話の中にしか居ないけれど、その魔王がその代の王妃を犯して生まれた子が双子。
上の子は人間、下の子は魔物の特徴を継いでいた。角が生え、触れるものを皆腐らせ、呪いを振りまいて直ぐに死んだ。その時にはもう、当代の勇者が魔王を殺していたから、誰もその子を助けも育てられもしなかった。
そして、忌子を産んだ王妃も、その前に殺された国王も居ない中、玉座に収まったのが今の王族だと言い伝えられている。
市井でも忌子だと言って口減らしのために双子の下の子は殺されるし、貴族や王族ならばほとんど殺される。欲をかいた貴族……うちの両親のような場合、結局バレれば損をする。
今回ばかりは全てうまくいってくれたけれど。公爵家と王室の結婚、まして忌子の出産に関わった使用人や乳母は皆『亡くなって』いるし、今更誰も何も証明できない。
だからこそ、私一人が告げ口するだけで信憑性が出る。少し調べれば『忌子に関わった人間が死んでいる』と分かるのだから。
「あれがずっと表舞台にいたのが間違いなのよ。魔物の跋扈する辺境で、さっさと不幸を振りまいてのたれ死んでしまえばいいわ」
そして、私は将来の国母となる。
私のようなたまたま忌子の姉として産まれてしまったような不幸な人を減らすために、絶対に忌子は殺すように、法を整えてみせるわ。
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