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12 息苦しい『勉強会』
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「あ、昨日はありがとうな、あのクッキー。なぁ、引き抜いていったりしないから店を教えてくれよ」
「……本当に引き抜きません? あれ、私のお気に入りなんですけど」
「引き抜かないって! 2号店は勧めるけどな、全面的に俺の予算で出資する」
「王族って、そんなにお金持ちなんですか? いえ、貴族も事業に投資はしますから、まぁ、するんでしょうね」
グラード様が課題の途中でちょうどいい話題を提供してくれたので、私は軽口を叩いて返す事ができた。
気を遣われている気もするけれど、この人はよくも悪くも鋭すぎる人だ。そして、その鋭さを隠したり、時に大胆に使ったりする。
私が認めるまで、私のこのよく分からない感情はグラード様には届かないし、きっぱり否定できる。私が認めるまでは……、と、考える時点で認めてしまっているのかしら。
なんだか、唐突に悩んでしまって息苦しくなってしまった。
違う。こんな風に気まずい思いをしてこの方と過ごしたいわけじゃない。楽しく話せる、私のつまらない悩みを許容して、あっという間に解決するようにしてくれた人。
私の見た目に固執しない人。私と楽しく話して、私の内面を見て……あぁ! 嫌だ! 認めたくない!
「……おい、どうした? 顔が蒼いぞ」
本気で心配して顔を覗き込んでくる。私は下から覗き込まれて、どっと一気に血が上るのが分かった。今度は真っ赤な顔になっているに違いない。
他人との間に生まれる感情にこんなに振り回されるのは初めてだ。私がいつも覚えていたのは、最初は感謝、次にむなしさ、そして諦め。
グラード様は、ダメだ。私の感情を揺らしてしまう。土足で踏み込んでいるかと思いきや、ちゃんと入っていい場所までしか入ってこない。
全部、分かっているくせに!
感情の激流で私は不意に体から力が抜けてしまった。蒼くなったり赤くなったりしたせいだろうか、ソファの背もたれに力なくぼすっと沈んでしまった。
持っていたペンが床に落ちる。おい、とグラード様が声を掛けるが、なんだかその声も水の中にいるように遠く聞こえる。
見上げた天井が回って見える。私は、あぁ今体調が悪いんだ、というのを人生で初めて経験した。私の無敵の健康体も、精神的な負荷には耐えきれなかったようだ。
私は親友に打ち明けて拒絶された時よりも、情けない気持ちでいっぱいになった。
やっと出会えた許容してくれる人なのに、私は時間を無為にしている。失いたくないからこそ、認めたくないという矛盾した感情に振り回されて、一緒にいるのに、楽しく会話もできず、こうして体調まで崩して不様を晒している。
私の身体が抱き上げられてベッドに寝かされたのは、薄く覚えている。
認めてしまおう。私は、グラード様が好きだと。
枕の上で落ちていく意識の中で、私はうすらぼんやりとそんなことを考えた。
「……本当に引き抜きません? あれ、私のお気に入りなんですけど」
「引き抜かないって! 2号店は勧めるけどな、全面的に俺の予算で出資する」
「王族って、そんなにお金持ちなんですか? いえ、貴族も事業に投資はしますから、まぁ、するんでしょうね」
グラード様が課題の途中でちょうどいい話題を提供してくれたので、私は軽口を叩いて返す事ができた。
気を遣われている気もするけれど、この人はよくも悪くも鋭すぎる人だ。そして、その鋭さを隠したり、時に大胆に使ったりする。
私が認めるまで、私のこのよく分からない感情はグラード様には届かないし、きっぱり否定できる。私が認めるまでは……、と、考える時点で認めてしまっているのかしら。
なんだか、唐突に悩んでしまって息苦しくなってしまった。
違う。こんな風に気まずい思いをしてこの方と過ごしたいわけじゃない。楽しく話せる、私のつまらない悩みを許容して、あっという間に解決するようにしてくれた人。
私の見た目に固執しない人。私と楽しく話して、私の内面を見て……あぁ! 嫌だ! 認めたくない!
「……おい、どうした? 顔が蒼いぞ」
本気で心配して顔を覗き込んでくる。私は下から覗き込まれて、どっと一気に血が上るのが分かった。今度は真っ赤な顔になっているに違いない。
他人との間に生まれる感情にこんなに振り回されるのは初めてだ。私がいつも覚えていたのは、最初は感謝、次にむなしさ、そして諦め。
グラード様は、ダメだ。私の感情を揺らしてしまう。土足で踏み込んでいるかと思いきや、ちゃんと入っていい場所までしか入ってこない。
全部、分かっているくせに!
感情の激流で私は不意に体から力が抜けてしまった。蒼くなったり赤くなったりしたせいだろうか、ソファの背もたれに力なくぼすっと沈んでしまった。
持っていたペンが床に落ちる。おい、とグラード様が声を掛けるが、なんだかその声も水の中にいるように遠く聞こえる。
見上げた天井が回って見える。私は、あぁ今体調が悪いんだ、というのを人生で初めて経験した。私の無敵の健康体も、精神的な負荷には耐えきれなかったようだ。
私は親友に打ち明けて拒絶された時よりも、情けない気持ちでいっぱいになった。
やっと出会えた許容してくれる人なのに、私は時間を無為にしている。失いたくないからこそ、認めたくないという矛盾した感情に振り回されて、一緒にいるのに、楽しく会話もできず、こうして体調まで崩して不様を晒している。
私の身体が抱き上げられてベッドに寝かされたのは、薄く覚えている。
認めてしまおう。私は、グラード様が好きだと。
枕の上で落ちていく意識の中で、私はうすらぼんやりとそんなことを考えた。
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