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19 真実の愛なんてクソッタレだ
全校生徒の集会はお開きとなり、私はまだギクシャクとした距離感ながら、明らかに避けられることはなくなった。
ディーノ殿下が謝罪を禁じ、行動で示せと言った。みんな噂に流されていただけだ。どこかで噂を流してきた人のせいにしながら謝られるのも、そんな態度も私は望まないし受け入れない。
ただ、避けられるのは困るし、みっともないと思ったし、悲しかったし悔しかったし殿下を思いながら枕を殴った日もあった。
でも今日のこれで帳消しにしよう。そして、私はバルティ様の虫除けとして効果的すぎたようだ。
清い交際のうちはまだ誰かの妬心は抑えられていたのだろう。家格が釣り合うのだからそんな話になっていてもおかしくない、と。恋愛をしてるわけじゃないだろうと。
だけど、バルティ様は優しかった。他人から見たら、それこそ私に愛をもって接しているかのように。……私も少し、そんな気がしてしまうほどに。
ただ、真実の愛だとか、そんなのはもうクソッタレだ。言葉が悪いのは勘弁してもらおうかな、私は剣を手習いで続けている。私兵たちに混ざっていれば汚い言葉も内心覚えていくものだ。
お昼休みに、バルティ様とランチにしながら、暫くは生徒会を休んで真っ直ぐ帰るようにと言われた。たぶん、首謀者が出てきた時に、私がいるのは都合が悪いし、私が罵られるからかもしれないだろう。
「もちろん教室から馬車までは送りますから。いい、というまでは真っ直ぐお帰りくださいね」
「仕事がたまるんですが……」
「優秀な生徒会長が全てこなすそうですので、ご安心を」
「あら……、ふふ、それなら任せます」
バルティ様との時間は居心地がいい。触れられるのも嫌では無いし、私から触れたくなる時も……はしたないけれど、なくはない。
でも、暫くはあまり心を揺らしたく無い。清い交際は続けて、卒業と同時に契約は解消だ。
その間だけでも、私は彼を独り占めしたい。彼に時間と気持ちを委ねるのは、とても安心できる。
「そういえば……、あの全校集会は誰が?」
「……さぁ、誰でしょうね」
横を向いて水を飲む。
嘘が下手な人だ。嘘がつけないから、答えたくない時には目を逸らしてしまう。
私は自分でも知らないような、くすくすとした小さな笑いを溢してしまった。あまり淑女としてこんな風に笑うものでは無いのだけれど。目の端の涙を指先で拭う。
「なんです」
「いえ、将来の宰相閣下は腹芸が苦手なんだな、と思いまして」
「……そのうち、覚えます」
頭は回るし、正論を臆さず言えるこの人はいい宰相になるだろう。ただ、殿下の見せたような腹芸もできないと、きっと今度は殿下に置いて行かれてしまう。
「では、バルティ様。卒業まで契約が履行できたら、一歩前進ということにしましょう」
「……いいのですか? 半分は私のせいですよ」
「えぇ、あの演説を聞いて私を排そうなどという貴族の家名はしっかり覚えておきましょう。今回の件については処分はお任せします」
ここの所の騒動で、私の心は疲弊している。しっかりしなければとも思う反面、何かやる気が湧かないのだ。
バルティ様、甘えてしまってごめんなさい。でも、不器用で真っ直ぐな貴方なら悪くはしないと、信じています。
夏季休暇がもうすぐ来る。その間一度領地に帰って忘れよう。だからそれまで、契約ではなく貴方に甘える私でいさせてください。
ディーノ殿下が謝罪を禁じ、行動で示せと言った。みんな噂に流されていただけだ。どこかで噂を流してきた人のせいにしながら謝られるのも、そんな態度も私は望まないし受け入れない。
ただ、避けられるのは困るし、みっともないと思ったし、悲しかったし悔しかったし殿下を思いながら枕を殴った日もあった。
でも今日のこれで帳消しにしよう。そして、私はバルティ様の虫除けとして効果的すぎたようだ。
清い交際のうちはまだ誰かの妬心は抑えられていたのだろう。家格が釣り合うのだからそんな話になっていてもおかしくない、と。恋愛をしてるわけじゃないだろうと。
だけど、バルティ様は優しかった。他人から見たら、それこそ私に愛をもって接しているかのように。……私も少し、そんな気がしてしまうほどに。
ただ、真実の愛だとか、そんなのはもうクソッタレだ。言葉が悪いのは勘弁してもらおうかな、私は剣を手習いで続けている。私兵たちに混ざっていれば汚い言葉も内心覚えていくものだ。
お昼休みに、バルティ様とランチにしながら、暫くは生徒会を休んで真っ直ぐ帰るようにと言われた。たぶん、首謀者が出てきた時に、私がいるのは都合が悪いし、私が罵られるからかもしれないだろう。
「もちろん教室から馬車までは送りますから。いい、というまでは真っ直ぐお帰りくださいね」
「仕事がたまるんですが……」
「優秀な生徒会長が全てこなすそうですので、ご安心を」
「あら……、ふふ、それなら任せます」
バルティ様との時間は居心地がいい。触れられるのも嫌では無いし、私から触れたくなる時も……はしたないけれど、なくはない。
でも、暫くはあまり心を揺らしたく無い。清い交際は続けて、卒業と同時に契約は解消だ。
その間だけでも、私は彼を独り占めしたい。彼に時間と気持ちを委ねるのは、とても安心できる。
「そういえば……、あの全校集会は誰が?」
「……さぁ、誰でしょうね」
横を向いて水を飲む。
嘘が下手な人だ。嘘がつけないから、答えたくない時には目を逸らしてしまう。
私は自分でも知らないような、くすくすとした小さな笑いを溢してしまった。あまり淑女としてこんな風に笑うものでは無いのだけれど。目の端の涙を指先で拭う。
「なんです」
「いえ、将来の宰相閣下は腹芸が苦手なんだな、と思いまして」
「……そのうち、覚えます」
頭は回るし、正論を臆さず言えるこの人はいい宰相になるだろう。ただ、殿下の見せたような腹芸もできないと、きっと今度は殿下に置いて行かれてしまう。
「では、バルティ様。卒業まで契約が履行できたら、一歩前進ということにしましょう」
「……いいのですか? 半分は私のせいですよ」
「えぇ、あの演説を聞いて私を排そうなどという貴族の家名はしっかり覚えておきましょう。今回の件については処分はお任せします」
ここの所の騒動で、私の心は疲弊している。しっかりしなければとも思う反面、何かやる気が湧かないのだ。
バルティ様、甘えてしまってごめんなさい。でも、不器用で真っ直ぐな貴方なら悪くはしないと、信じています。
夏季休暇がもうすぐ来る。その間一度領地に帰って忘れよう。だからそれまで、契約ではなく貴方に甘える私でいさせてください。
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