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うっかりじゃねーよ!
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その日の夜、ベルが寝入った後、アイクは一人研究室にこもっていた。
冒険者用の魔道具を作成するためだった。
(宮廷にいた頃はよく夜に残業してたな)
クビになってからは残業をすることなどなかったのだ。
残業することの懐かしさを感じつつも作業を進めていく。
アイクは普通だと思っているが、今作っているひとつひとつのものが、イカれた効果を持っている。
(これでお客さんが増えてくれるといいんだけどな)
明日、店がどうなっているかを、この時のアイクはまだ知らなかった。
次の日の開店直後、 なぜかわからないが、店は冒険者でいっぱいだった。
「やべえ、マジで安い!レグルスさんの言ってた通りだぜ」
「おい、こっちにはマジックリングまであるぞ。しかも効果が三つ?イカれてやがる…」
入り口近くに目をやると、レグルスがこちらを見てにやにやしている。
彼が何かしたのだろうか。
レグルスが近づいてきた時を見計らって、アイクは声をかける。
「レグルスさん、何をしたんですか?」
「いや~。実は昨日、あの後酒場で飲んでたんだよ。そしたら酔った勢いで他の奴らに魔法剣のこと話しちまってよ。まあ、うっかりってやつだ。でもここまでとは思わなかったぜ」
うっかりじゃねーよ!と心の中で叫びつつ現実でも叫ぶ。
「うっかりじゃねーよ!」
「いや~すまんすまん。こんなに来るとは思わなかったんだよ」
アイクとレグルスが言い争っていると、隣から声が聞こえる。
「あのー、店員さん。この魔法剣。属性が二つ付与されているって本当ですか」
「はい、本当です。なんならこっちのやつは三つ付与されてますよ」
「いやいや、やばすぎでしょ。属性三つ付与とかどこの伝説の武器よ…」
あまりにオーバーな反応にアイクは首をかしげる。
(これくらい普通だと思うんだけどな)
「やろうと思えば五つくらいまでなら付与できるので、つけてほしかったら言ってくださいね」
「いっ五つ?さすがに冗談でしょう」
「いやいや、冗談じゃなくて本当ですよ。まあただ別料金にはなりますけど。」
話しかけていたお姉さんは唖然としていた。
隣を見るとレグルスもドン引きしていた。
「おいおいおい。二つでも珍しいのに三つどころか五つまでできる?兄ちゃん、そりゃやべえよ」
「やばいんですか?」
「やばい。間違いなくやばい。国が動くレベルだぞ」
「じゃあしばらくは付与数二つのものだけ売ることにします」
「二つでも十分やべえけどな。だからこんなに冒険者が集まってるんだよ」
「でもそれは半分くらいレグルスさんのせいですよね?」
と言ってこの日は一日中レグルスを働かせた。
閉店の頃にはアイク、レグルス、ベルの三人とも死にかけだった
なおその日、店は過去最高の売り上げを記録した。
冒険者用の魔道具を作成するためだった。
(宮廷にいた頃はよく夜に残業してたな)
クビになってからは残業をすることなどなかったのだ。
残業することの懐かしさを感じつつも作業を進めていく。
アイクは普通だと思っているが、今作っているひとつひとつのものが、イカれた効果を持っている。
(これでお客さんが増えてくれるといいんだけどな)
明日、店がどうなっているかを、この時のアイクはまだ知らなかった。
次の日の開店直後、 なぜかわからないが、店は冒険者でいっぱいだった。
「やべえ、マジで安い!レグルスさんの言ってた通りだぜ」
「おい、こっちにはマジックリングまであるぞ。しかも効果が三つ?イカれてやがる…」
入り口近くに目をやると、レグルスがこちらを見てにやにやしている。
彼が何かしたのだろうか。
レグルスが近づいてきた時を見計らって、アイクは声をかける。
「レグルスさん、何をしたんですか?」
「いや~。実は昨日、あの後酒場で飲んでたんだよ。そしたら酔った勢いで他の奴らに魔法剣のこと話しちまってよ。まあ、うっかりってやつだ。でもここまでとは思わなかったぜ」
うっかりじゃねーよ!と心の中で叫びつつ現実でも叫ぶ。
「うっかりじゃねーよ!」
「いや~すまんすまん。こんなに来るとは思わなかったんだよ」
アイクとレグルスが言い争っていると、隣から声が聞こえる。
「あのー、店員さん。この魔法剣。属性が二つ付与されているって本当ですか」
「はい、本当です。なんならこっちのやつは三つ付与されてますよ」
「いやいや、やばすぎでしょ。属性三つ付与とかどこの伝説の武器よ…」
あまりにオーバーな反応にアイクは首をかしげる。
(これくらい普通だと思うんだけどな)
「やろうと思えば五つくらいまでなら付与できるので、つけてほしかったら言ってくださいね」
「いっ五つ?さすがに冗談でしょう」
「いやいや、冗談じゃなくて本当ですよ。まあただ別料金にはなりますけど。」
話しかけていたお姉さんは唖然としていた。
隣を見るとレグルスもドン引きしていた。
「おいおいおい。二つでも珍しいのに三つどころか五つまでできる?兄ちゃん、そりゃやべえよ」
「やばいんですか?」
「やばい。間違いなくやばい。国が動くレベルだぞ」
「じゃあしばらくは付与数二つのものだけ売ることにします」
「二つでも十分やべえけどな。だからこんなに冒険者が集まってるんだよ」
「でもそれは半分くらいレグルスさんのせいですよね?」
と言ってこの日は一日中レグルスを働かせた。
閉店の頃にはアイク、レグルス、ベルの三人とも死にかけだった
なおその日、店は過去最高の売り上げを記録した。
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