魔道具師アイクのキセキ~奴隷のようにこき使われた挙げ句クビにされたので店を開きます~

ツキ

文字の大きさ
6 / 19

うっかりじゃねーよ!

しおりを挟む
その日の夜、ベルが寝入った後、アイクは一人研究室にこもっていた。

 冒険者用の魔道具を作成するためだった。

 (宮廷にいた頃はよく夜に残業してたな) 

 クビになってからは残業をすることなどなかったのだ。

 残業することの懐かしさを感じつつも作業を進めていく。

 アイクは普通だと思っているが、今作っているひとつひとつのものが、イカれた効果を持っている。

 (これでお客さんが増えてくれるといいんだけどな)

 明日、店がどうなっているかを、この時のアイクはまだ知らなかった。



 次の日の開店直後、 なぜかわからないが、店は冒険者でいっぱいだった。

 「やべえ、マジで安い!レグルスさんの言ってた通りだぜ」

 「おい、こっちにはマジックリングまであるぞ。しかも効果が三つ?イカれてやがる…」

 入り口近くに目をやると、レグルスがこちらを見てにやにやしている。

 彼が何かしたのだろうか。

 レグルスが近づいてきた時を見計らって、アイクは声をかける。

 「レグルスさん、何をしたんですか?」

 「いや~。実は昨日、あの後酒場で飲んでたんだよ。そしたら酔った勢いで他の奴らに魔法剣のこと話しちまってよ。まあ、うっかりってやつだ。でもここまでとは思わなかったぜ」

 うっかりじゃねーよ!と心の中で叫びつつ現実でも叫ぶ。

 「うっかりじゃねーよ!」

 「いや~すまんすまん。こんなに来るとは思わなかったんだよ」

 アイクとレグルスが言い争っていると、隣から声が聞こえる。

 「あのー、店員さん。この魔法剣。属性が二つ付与されているって本当ですか」

 「はい、本当です。なんならこっちのやつは三つ付与されてますよ」

 「いやいや、やばすぎでしょ。属性三つ付与とかどこの伝説の武器よ…」

 あまりにオーバーな反応にアイクは首をかしげる。

 (これくらい普通だと思うんだけどな)

 「やろうと思えば五つくらいまでなら付与できるので、つけてほしかったら言ってくださいね」

 「いっ五つ?さすがに冗談でしょう」

 「いやいや、冗談じゃなくて本当ですよ。まあただ別料金にはなりますけど。」

 話しかけていたお姉さんは唖然としていた。

 隣を見るとレグルスもドン引きしていた。

 「おいおいおい。二つでも珍しいのに三つどころか五つまでできる?兄ちゃん、そりゃやべえよ」

 「やばいんですか?」

 「やばい。間違いなくやばい。国が動くレベルだぞ」

 「じゃあしばらくは付与数二つのものだけ売ることにします」

 「二つでも十分やべえけどな。だからこんなに冒険者が集まってるんだよ」

 「でもそれは半分くらいレグルスさんのせいですよね?」

 と言ってこの日は一日中レグルスを働かせた。

 閉店の頃にはアイク、レグルス、ベルの三人とも死にかけだった

 なおその日、店は過去最高の売り上げを記録した。

 

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

処理中です...