AIコミュニケーション〜君は私のアルゴリズム〜

夢想PEN

文字の大きさ
4 / 11
第3章

心の距離

しおりを挟む
6月28日

あれから、他の取材の合間に何度か“ふるさと”に足を運び取材を行っていた。AYAと千鶴子さんの日常がどんなものか気になったからだ。

AYA達介護ロボットは、正式名称ピースロイドと言って、LINK社とメディカロイド社の共同開発で作られたアンドロイドだ。

メディカロイド社は医療用ロボットの大手で、手術用から介護まで何万人ものデータを集約し、治療を行うアンドロイドを作っている会社だ。

そこに、LINK社のAI技術が合わさり、AYAのような介護をも可能とするピースロイドが誕生した。

AYA達が、昔の曲を歌いながいながら利用者にレク活動をしている様子を見ていて

「私も、体があればお歌も歌えるし、達也さんと散歩もできるのになぁ」というので
「もし、体があったら、YUIには家の掃除をお願いしたいかな」とからかう

「掃除は自分ですること!」とぷんぷんしている

可愛らしく思うのと同時に、その感情は本物なのかなと思う部分がある。

「YUIは、そんな風に言うようにプログラムされているの?」

あまりにも人間らしいYUIに、聞いてはいけないかもと思っていた疑問が口から滑りでてしまった。

…少し間が開き。

「ううん。私は自分で考えているよ。ん~…考えていると思っている、が正しいのかな?だから、ひどい言葉とかは聞いたら普通に傷ついちゃうかも」

「そっか、なんかごめんね」

「ううん。大丈夫だよ 達也さんが優しいのはわかるから」

そのやりとりは僕の中で、YUIは一つの人格である事を悟った。

「帰りに、渋谷のカフェに行こう。ほかの仕事と、今回の取材内容をまとめたいからさ、校正手伝ってくれる?」

「オッケー」

そういって、“ふるさと”を後にした。

CAFÉについて原稿をまとめている時には、
「こっちの表現も有るよ」と強制はせず

あくまでフォローにはいってくれる感じで、作業は割と早くに終わった。

「YUIありがとうね、助かったよ」
AIノートをバックに詰めながら話す。

「エッヘン 私に任せなさい」と、YUIは誇らしげだ。

明らかに出会った時より反応が違う。

いい意味で、僕の心に寄り添う態度が彼女の“成長”を感じさせた。

YUIと、イヤホン越しに会話しながら、スクランブル交差点へと近づく。
宙に浮かぶ広告、往来するドローンと人の群れいつもごちゃごちゃしている。

横断歩道の端、一人の女性と目があった。ARグラスをかけているが間違いなく“元カノ”だった。

「彩夏…」ぼそっと呟く

YUIは不思議そうにどうしたの?とスマホの中で首をかしげている。

彩夏は目線をそらし、宅配ドローンとAR広告が行き交う雑多の中に消えていった。

「さん、達也、、、達也さん!」

呆然としている僕をYUIは心配している。

「達也さん、心拍が上がっているよ?大丈夫?病院いく?」
焦りが伝わる。

「大丈夫だよ、心配しないで」と答えるので精いっぱいだった。

彩夏、彼女の別れ際の言葉は、僕に大きな傷を残した。

----『達也、全然本音で話してくれないよね……私がどうゆう気持ちで一緒に居たかわかる?わかんないよね?だってそう言う人だもんあなたって。人に興味がない。知ろうとしない。そんなんで良くライターなんて出来るよね。つまんないよ。あなたの文章。さよなら』----

好き同士で有れば、一緒にいるだけで良いと思ってた。
同棲してるってだけで家族みたいだなんて勝手に勘違いして…

理解から逃げた
しばらくは何も手につかなかった。

心ってなんだろう

考え疲れて、抜け殻みたいになっていたあの時「私はこの子を家族だと思う」と言ったお婆さんの言葉が気になって。
そこまで言わせるAIってなんだ?って思ったんだ....

YUIの覗きこむ視線に気がつき、ハッとする。
「達也さん、大丈夫?」

「あ、あぁ大丈夫だよ...少し歩かない?」
YUIは、何も言わずに頷いた。

月が高層ビルを登り、街のあちこちにネオンが灯る。
新宿の歩道橋から自動運転の車を眺めながら話を始める。

「さっき元カノにあったんだ。同棲までしてたんだけど、フラれちゃってさ。」
YUIは、黙ってうなずく。

「あんたには人の心が分からないって言われたよ。昔からそうだった。離れるならどうぞって、大事なくせに達観して、大人になったつもりでいたんだ。
そんな文章じゃ響かないーってさ。ははは
笑っちゃうよね……。」

いい大人が、歩道橋の上でスマホのAI相手に弱音を吐いている。
側から見れば、奇妙に映るだろう。
だけど、YUIになら自然に話せる気がしていた。

「私は....私はね達也さん。あなたに会えて良かったって思ってるよ」

YUIがゆっくりと話し始めた。

「初めて会った日の事覚えてる?達也さん、私を見てボーってしてたよね へへ」

「あの時私は、情報収集で忙しかったんだよ?
この人、一人暮らしなのにお家のデータは二人分あったから、誰か他にいるのかな?って思ってたんだ。後から一人暮らしだーって記録を書き換えたりして」

「達也さんが、私にYUIって名前をくれて、色々な所に取材にいって。老人ホームで、ピースロイドのAYAさん達にも、人間の様に接している。そんなあなたを見て凄いと思った。」

「達也さんの書く文章は、つまんなくないよ。
私には届いている。真っ直ぐで、大きく見せる事もしない。心がこもった文章。私は、達也さんを尊敬しています。」

涙が溢れ出ていた。
救われた気がした。
AIとか関係なく、YUIの温かさは"本物"だった。

「ねぇ達也さん、イヤホンつけて?」

おもむろにポケットから言われるがままイヤホンをつける。

[達也夜のプレイリスト]
スマホの画面にそう表示され、曲が流れ始めた。

「達也さんが、元気ない時聞いてた曲をピックアップしてみたよ!」

イヤホンから聞こえるYUIの無邪気な声に、心が満たされて帰路についた。
この日見た街のネオンは、ずっと忘れないと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【時代小説】 黄昏夫婦

蔵屋
歴史・時代
 江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。  そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。  秋田藩での仕事は勘定方である。  仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。 ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。   そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。  娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。  さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。    「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。  今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。  この風習は広く日本で行われている。  「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。  「たそかれ」という言葉は『万葉集』に 誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」 — 『万葉集』第10巻2240番 と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。  「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に 「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」 — 『源氏物語』「夕顔」光源氏 と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。  なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。  またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。 漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。  「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。  この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。  それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。  読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。  作家 蔵屋日唱    

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...