死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ

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26.終わっちゃった感じ……?

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古川の仕事が終わり、その後はお店を探して、一緒にご飯を食べにきた。

「改めて秋保ちゃん、会いたかったぜ!!」

「そうなんだ(笑) でも、私も涼介くんと話したかったかも。」

「おお!秋保ちゃんも俺を求めてた!? なんちって(笑) まぁ、飯食いながら、いろいろ話しましょ!」

俺と古川は、仕事の話やプライベートの話、同世代トークなどでたくさん話し込んで、盛り上がった。

「涼介くん、話してて本当に面白い(笑) あっ、そうだ、再来週末とかって空いてる? 行きたいところあるから、一緒に行こうよ。」

「おお!空いてる空いてる!行こうよ!どこでもなんでもいいよ! 俺は秋保ちゃんに付いていくぜ!」

ということで、ちゃっかり出かける約束も出来た。やったね!!

長いこと喋って時間も遅くなってきたので、古川とは解散。

女の子とご飯を食べた後、普段の俺ならウッキウキの気分で帰るのだが、やはり気分は晴れない。だが明日は、瀧本の事は笑って見送りたい。いつまでも考えるのはやめよう。

明日の瀧本の見送りに備えて、気持ちを整えるのであった。


ーーーーーーーーーーーー


土曜日。昼の12時。

約束通り、俺は瀧本の家に来ていた。

「お邪魔します!!」

「上がって上がって。」

荷作りを済ませた大きいキャリーバッグと、段ボールが何箱かチラホラ。段ボールは後から業者に持ってきてもらうらしい。

「なるほど、じゃあこの家を引き払うわけじゃないんですね?」

「そうだね、この部屋を引き払っちゃうと、半年後に帰ってくるところがなくなっちゃうからね(笑) その代わり、会社からは最大限の家賃補助を受けられるから、とりあえず家賃の面では損せずにやっていけそうだよ。」

「なら良かった! なんかもう、ずっと関西に住んじゃうんじゃないかって、そんな気持ちなんすよぉ!」

「大丈夫、帰ってくるよ(笑) 必要な荷物以外は、基本そのままにしておくしね。そうだ、昼飯まだだよね? 最後になんか作ろうか。しばらく皆川に料理振る舞えないし……」

「キタキタキタ!!はい!!是非とも作ってください!!」

やったぜ。瀧本の料理だ!!でも確かに……これ以降は半年後まで食べられないのか……ちょっとどころか、俺的にはかなりダメージがデカイ。

瀧本の作ってくれたお昼ご飯を噛み締めながら、俺は丁寧に、ゆっくりと味わった。

「うめぇよ……うめえんだこれが……!くっ……!」

「なんか、3日ぶりにご飯食べた人みたいな感じで感動してるね……?」

「そりゃそうですよ!!半年後まで瀧本さんの料理食べれないのは辛いっすよ!!」

「皆川、約束するよ、戻ってきたら、食べ飽きるまで俺が料理作るから。」

「よっしゃ、それだけを励みに生きていくか!!」

これにて、瀧本の手料理と、しばしのお別れをする決意は出来た。

昼飯を食べ終えて、瀧本は駅に向かう時間になった。

「瀧本さん、俺も駅まで行きますよ! 新幹線出発するギリギリまでいますから! 最後まで見送らせていただきます!」

「ありがとう、嬉しいよ。じゃあ駅まで見送ってもらおうかな。」

もう会えなくなるわけでもないのに、ものすごく寂しい。今更、寂しいから行かないでくださいとは言えないし、そもそも、そんなまるで、彼女みたいな発言は出来ない。部下なら上司の更なる飛躍を喜ばないとな。と、複雑な気持ちを内心に抱えたまま、瀧本と駅まで向かう。

時間はあっという間だった。話しているうちに駅に着いてしまった。

「皆川、見送りありがとうね。皆川が見送ってくれたから、関西支社でもやる気になれそうだよ。」

「そりゃもちろん、見送りするに決まってるじゃないすか!!向こうでも、ぶちかましてくださいよ!」

このままこんな感じでお別れするのもいいが、俺には、はっきりさせたいことがある。

「あ、あのですね、瀧本さん……あの……」

「うん、大丈夫、皆川の言いたい事は分かるよ。というか、それは俺から話さないとね。」

瀧本は真剣な眼差しで俺の顔を見ながら、話し始めた。

「皆川。ありがとうね、俺にチャンスをくれて。あの社員旅行の夜、俺は本当に最低なことをしたと思う。皆川が気にするなって言っても、やっぱり、自分自身では気にしちゃうかな…(笑) でも、そんな俺にも皆川はチャンスくれた。だから、短期間だけど、俺なりにアプローチ頑張ってみたんだけど……やっぱり気持ち悪かった……?」

「いやいやいや、気持ち悪いことなんてないです本当に。あと、本当にその、社員旅行の時の件は俺は気にしてないから大丈夫っすよ。これはマジです。」

「そう言ってもらえるとありがたい……な。」

「瀧本さん……その……俺、同性愛とか、いまいちピンと来ないというか、よく分からないってのが正直ありまして…だから、なんて言うか、うまく言えないんですけど……」

本当にうまく言えない、適切な言葉が頭に浮かんでこない。俺はちゃんと、伝えたいことがあるのに、今は出てこない。

「皆川、社員旅行の夜以降、いろいろと困らせちゃって本当にごめんね。気を遣わせたと思う。」

「いやいや、そうじゃないんですよ本当に…… なんかその、あーうまいこと言えねぇチクショー……」

「大丈夫。改めて言うけど、俺は皆川の事、好きだよ。でも、好きな相手を俺は困らせたくはないんだよね。俺のせいで困ってる皆川を、これ以上見たくないんだ。」

「困ってる……ですか? いや、困ってるとかとはまた違うと言うかですね……」

「だから、アプローチするとか、そういうのはもうしないね。今日で終わりにしよう。」

瀧本はきっぱりと言いきった。

「終わり……ですか? は、はぁ……わかりました……」

「それでさ、半年後、こっちに戻ってきたら普通にさ、またスニーカーとか見に行ったり、家でご飯食べたり、皆川とはそんな関係でいたいなって思うんだ。ダメ……かな?」

「ダメじゃないですよ。ぜんぜん、そうしましょうよ。俺も嬉しいっすよ。」

俺はそれで本当に嬉しいのか……?ただの仲良い上司と部下でいられれば、それでいいのか…?

「良かった……断られたらメンタルが死んでたかも……」

「いや、そんな断らないですって(笑) じゃあ、半年後、戻って来ても、俺達は仲良い上司と部下という事でいきますかね!!くぅううう、半年はなげーなおいっ!!」

今、内心ではこう思っている。多分俺の悪いところが出ている。いつもの、明るい皆川涼介を出すことで、本心を誤魔化している。

「皆川、あれだよね、気になってる女の子がいるって話してたよね。その子とうまくいくことを願ってるよ。」

「えっ、あぁ、ま、まぁそうっすね!! どうかなー!? うまくいくんでしょうかねぇ!?」

「皆川は明るくて面白いから、絶対ハマるはず。彼女出来たら紹介してね。」

「もしかしたら、瀧本さんがこっち戻ってきた時には紹介出来るかもですねぇ!? なんちって(笑) そもそも告白するかも分からないし、んでもって、フラれるかも分からないので、未知数な話ですよ(涙)」

なんでだ、俺のことが好きだって言っておいて、なんで俺の恋を応援出来るんだ。もう本当に、瀧本は気持ちを切り替えちまったのか?

「いや、皆川なら大丈夫。絶対うまくいくから。報告待ってるよ(笑) またさ、スニーカーとか、なんの話題でもいいから、連絡ちょうだいね。俺からも連絡するし。」

「もちろんですよ!! メンヘラ涼介くんモードで毎日1時間ごとに連絡してやろうかねぇ!?」

「1時間毎か……ちゃんと返信できるかな……」

「いや、俺の方が送れなくなりますわ!!」

あぁ、結局またいつもの皆川涼介になって誤魔化してしまった。

「それじゃあ、そろそろ行くね。皆川、本当にありがとう。仕事も頑張って。皆川はめちゃ優秀だから、半年後、戻ってきた時に期待してるよ。」

「スーパー涼介くんからアルティメット涼介くんになってるかもっすよ!! それじゃあ瀧本さん、しばしのお別れですが、いってらっしゃい!!」

「うん、またね。」

回りに人はたくさんいたが、俺は恥ずかしげもなく、大きく手を振りながら、瀧本を見送った。

瀧本は行ってしまった。

俺と瀧本の、さぁ何かが発展するかぁ!?みたいな展開も終わってしまったということだ。

瀧本を見送ってから少し時間が経ち、今度は怒りが湧いてきた。

そもそもよ?お前からキスしておいて、もう終わりにしようだぁ!?
何勝手にやめてんだよ(怒) 終わりにするかどうか、判断するのは俺だっつーの!!

と、もう行ってしまった瀧本に対して怒っても仕方がない。

あーそうだ、再来週は秋保ちゃんと出かける予定があるんだったな。瀧本から応援されたし、ちょっと本気出して秋保ちゃんを口説いてみようかなぁ!?

さて……

本当にこれで終わってしまったのか。いや終わったんだ。しつこく考えるのはやめよう。
瀧本が落ち着いた頃を見計らって、また連絡してみよう。
そう、仲良い上司と部下の関係としてだ。それでいいじゃないか。最初からそうだったんだ。

帰りの電車の中。俺はそうやって考えることで、自分の心を落ち着かせていたのだった。
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