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1.ファーストキスはイケメンと!?
「てなことで、俺、彼女出来ました~! ふぅ~!!」
「おおマジか…! やったじゃん! おめでとう!!」
「純にも早く、春が来るといいな(笑) まぁ、季節はもう夏だけどなぁ! なんちって!」
「お、おう……」
くっ……余計なお世話だっちゅうの……(涙)
鈴原純(すずはらじゅん) 大学3年生。
俺は今、同じ学部でかつ同じサークルの同級生、橋本達也(はしもとたつや)と、大学生御用達の激安大衆居酒屋にて、サシ飲みをしている。
「でな、純! 俺の彼女は細かいところにまで気を使えて、マジでいい女なのよ! 顔も可愛いし、俺にはもったいねえや!!」
「そうか、もったいないんだな! じゃあ早くも別れればいいんじゃないかな!」
あーあ、さすがに小一時間も彼女自慢を聞かされると、いくら仲の良い友達とはいえ、だんだんウザくなってきたぞ……
「いやいや、まず別れないね! でな、うちの彼女はよぉ!」
「うちの彼女って、3年くらい付き合ってるカップルの言い方よ!? 達也はまだ彼女と付き合って二週間だろ!?」
「あっ、すまんすまん、なんかもう、長いこと付き合ってるような感覚でさ! でさ、うちの彼女はよぉ!」
「おーい待て待て、いつまで続くんだこの惚気トーク!?」
達也の惚気話が止まらない。もうダメだ、飽きてきた。最初の15分くらいはおめでとうって思ってたけど、もういいわ、いい加減ウザくなってきたぞ……
そういう時はな、飲む!!ひたすらに酒を飲む!!
「すみません店員さん、芋焼酎ロックで、グラス5杯いっきに持ってきてください。」
「おいおい、純! そんなに飲むとお前、酔っ払ってフラフラになっちまうぞ!」
「飲みたい気分だから好きに飲ませてくれや。」
「そうか、お前そんなに俺に彼女が出来たことが嬉しいのか……!!祝い酒ってことか! くぅ!純、お前ってやつは!やっぱり親友だぜ!」
「いや、違いますけど!?? ま、まぁでも、もうそういう事でいいや……はは……」
達也の勘違いはさておき、芋焼酎ロックを数杯飲むうちに、俺はあっという間に酔ってしまった。
そこからさらに1時間ほど経過し……
「おい、純、飲みすぎじゃねえのか? 芋焼酎なんていくから……」
「いいんだよ(怒) なぁ、達也…… どうやって彼女作ったんだ…?」
「えっ? どうやってって…… うーん、まぁ、彼女とは1年の時からずっと仲良くて、3年になって思いきって告白してみた結果、成功したって感じだから、どうやってって言われてもなぁ…?」
「なぁ達也……おかしいと思うんだ……俺はさ、大学生になったら、出会いなんてそこら中にゴロゴロ転がってると思ってた……けど蓋を開けてみればどうよ……3年の6月にして、未だに彼女が出来てない……(涙) もう大学生活も後半戦なんだよ!! もうちょっとしたら就活も始まっちまうよ!! もし彼女がいたらさ、、インターンどこにしようかなぁ~? とか 一緒に面接対策しよっか! とか 同じ講義取ろうよ! とかさ、、、あ~、いろいろ出来ることがあるし、あったはずなんだ…… 達也、俺はな、このままじゃチー牛ライフを満喫しただけの大学生活で終わっちまうんだよぉ!! 俺は一人を謳歌するために大学生になったわけじゃないんだよぉ! うおぉ(涙)(涙)」
「わかったわかった(笑) 純の内に秘めたる熱い思いはわかったから、そんな、チー牛ライフとか言うなって(笑) 純、とりあえず落ち着こう、な?」
ちなみにチー牛とは、ネットスラングの一種である。陰キャ、ヲタクっぽい、などと同義語の扱いだ。
「俺は落ち着いてるぞ…… 達也は偉いよ。コミュ力も高いし、カッコいいし、達也には魅力だらけだ…… それに比べて俺はどうだ……? 俺はなぁ……!俺なんてなぁ……!」
「わかったって(笑) もうわかったから卑屈モードに入らないでくれ!(笑) というか待って、純にも1年の時から絡みがある女子がいるじゃん! 藤崎ちゃんとかどうなのよ?」
「えっ、あぁ…藤崎さんね… いや、無理だろ… 藤崎さん可愛いし、学部内の男達はみんな藤崎さんを狙ってるだろうし…俺なんかじゃ……」
達也が言っているのは同じ学部の同級生の女子、藤崎葵(ふじさきあおい)のことだ。葵はおっとりした雰囲気で可愛く、見た目も清楚でかつ、人付き合いも上手いという、まさに俺が求めている理想の女の子だ。
「そうかなぁ? だって、何度か二人で飯行ったりしたんでしょ?」
「あぁ、それはたまたまグループワークで一緒になったから課題をやろうみたいな話になって……」
「でも、課題のことだけじゃなくても、藤崎ちゃんと遊んだって言ってなかった?」
「あぁ…遊んだというか、たまたま大学終わりに本屋で会ったから、その流れでちょっと街ブラしたって感じだけど……」
「でもあれじゃん? 昼飯もちょいちょい藤崎ちゃんと一緒に食べてない?」
「あぁ…まぁ、同じ講義取ってるから、テスト対策の話とかするだけで…」
「藤崎ちゃんと教習所が一緒とか言ってなかったっけ?」
「あぁ…一緒だよ。教習所内でも話したりするけど、そんな盛り上がったりしてるわけじゃないしなぁ……」
「なぁ、純。」
達也が険しい表情で俺を見つめてくる。
「な、なに…?」
「あのな、思ったんだけど、ワンチャン藤崎ちゃんと付き合えるんじゃねえのか!?」
「な、何を言い出すかと思えば、そんな妄想みたいな……!!」
「いやだって、友達が言ってたけど、藤崎ちゃんも彼氏いないみたいだぞ? しかも、大学に入ってからまだ一度も彼氏出来てないらしいぞ?」
「へぇ~……まぁ藤崎さんに似合う男が見つからないだけなんじゃないかな。」
「その似合う男がお前かもしれねぇだろ純!! だってお前ら、普通に仲良いじゃん! 考えてもみろよ、華の大学生活、藤崎ちゃんだって彼氏欲しいだろ!でも未だにいないってことは、藤崎ちゃんに近しい男がいないんだよ!おそらく! でもお前はわりと近い男の存在として認識されてると思うぞ!」
「マジで……?」
「大マジよ。まぁ自惚れは危険だけど、純には心開いてると思うんだわ。だから、純からアプローチしてみろよ!な! このままチー牛ライフで終わりたくないんだろ!?」
「終わりたくねぇ(涙)(涙)」
「じゃあ突き進め! 純! お前のやることは一つしかない!」
「お、おう!!うおおお、なんかやる気出てきたぞ! 達也、ありがとう、お前は親友だっ!」
こうして、達也とのサシ飲みを後に、俺は一人暮らしのアパートへと帰る。
芋焼酎ロックでかなり酔ったせいか、まともな思考が働いていない俺は、LINEを開いて、藤崎葵のトーク画面を探す。
飲み過ぎて頭が痛い。視界がグラングランする。だが、今のこの勢いで藤崎さんに伝えたい。よーし、伝えるぞ…!
藤崎の名前を発見し、トーク画面を開いてさっそく、メッセージを入れる。
『夜分にごめん。藤崎さん、俺、どうしても伝えたいことがあって。俺は、あなたの事が好きです。だから、明日俺と二人で話す時間を作ってくれないかな。もし時間を作ってくれるなら、昼休み始めの13時に、旧館のほうの体育館の前に来てほしい。もちろん、来なくても大丈夫。藤崎さんに任せます。急に変なことを言ってしまってごめん。おやすみなさい。』
よし、これで送信っと……
完全に酒の力を借りたというやつだ。LINEで送るのもどうかとは思うが、藤崎さん本人に面と向かって言う勇気もない。
冷静に考えれば、来るか来ないかは藤崎さんに任せますというのもどうかと思うが……
そんな判断が出来る程、今の思考回路は正常ではない。はい、完全に飲みすぎです。
「まぁ、来なかったらごめんなさいってことだな……」
一人、部屋でボソッとつぶやく。
そして、気付いたら寝落ちしてしまっていた。
ーーーーーーーーーーーー
翌日。
午前の講義が終わり、俺はド緊張の足取りで、旧館の体育館へと向かう。
旧館の体育館は現在使われておらず、キャンパス内の端にあるため、わざわざそこまで行く学生もいないから、人はいないだろう。
ちなみに、昨日藤崎さんにLINEして以降、俺はLINEを開いていない。通知も消している。なぜかって? 怖いからだ。だから、13時に体育館の前に行き、藤崎さんが来るか来ないか、その結果を確認した後に、LINEを開こうと思う。
体育館の前に到着。周囲に人はいない。
時刻は13時05分。
あぁ、やっぱり来るわけないか。そりゃそうだ、酔いが覚めて冷静になった今、普通に考えたらメッセージで告白ってそもそもどうなんだ。しかし、来るか来ないかは任せますって、なんか俺は、自分が傷つかないような、卑怯なやり方をしてしまった気がする。
きっと、藤崎さんからも、なんだこいつって、そう思われてるだろう。
だから俺はチー牛なんだ……
そして時刻は13時15分。
もう藤崎さんが来ることはないだろう。
俺は体育館を後にしようとした、その時だった。
俺の視界に、身長180cmはあるか、スタイルも良く、長めの黒髪で、綺麗な顔立ちをした男がこっちに向かってくる。
俺は心の中で、『あのイケメン、同じ学部のやつだな、まぁ全然仲良くないけど。去年グループワークで一緒になったやつだ。その時LINEも交換したな。あーっと、名前なんて言ったっけなぁ?』
その男は俺の前まで来て、
「ごめん、遅れた。ここ、旧館の体育館? 初めて来たよ。」
「えっ? あっ、そうなんだ……」
このイケメンはなんで急に俺に話しかけてきたんだ?
「で、純は俺に話があるんだよね。いいよ、純。俺と付き合おうか。」
は? いきなり何を言ってるんだこのイケメンは……? 付き合うとかなんだとか。しかも、純って……馴れ馴れしいな。
「純? どうしたの? 話があるんだよね? それとも緊張? だったらさ。」
そう言うと、イケメンは俺に近づき、いきなり俺のあごをクイッと持ち上げ、唇を寄せてくる。
「んん!? んぐぅ!?」
何が起きている? なんで俺はイケメンから急にキスされてんの!? しかもこれ、人生初のキスなんだが……
唇を離すと、再びイケメンが話し出す。
「これは、純の告白に対する俺のアンサーね。よろしくね純。純も、俺のことは、藤崎じゃなくて、遥人って呼んで。」
そうだそうだ思い出した、それを聞いて思い出したわ、このイケメンの名前、藤崎だ。下の名前は遥人っていうのか。
って………
じゃなくてさ!?!?
「えっ、えっ、えっ、いやいやいやいや、意味わかんない意味わかんない!! 何だ、何がどうなってるの!?」
「純、慌てすぎ。もしかして誰かとキスするのは初めて?」
「うん、初めてだったよ。って、違う違う、そうじゃない!! 待て待て待て! 藤崎、いきなりなんのつもりよ!?」
俺は無事にファーストキスを終わらせたのであった。
「おおマジか…! やったじゃん! おめでとう!!」
「純にも早く、春が来るといいな(笑) まぁ、季節はもう夏だけどなぁ! なんちって!」
「お、おう……」
くっ……余計なお世話だっちゅうの……(涙)
鈴原純(すずはらじゅん) 大学3年生。
俺は今、同じ学部でかつ同じサークルの同級生、橋本達也(はしもとたつや)と、大学生御用達の激安大衆居酒屋にて、サシ飲みをしている。
「でな、純! 俺の彼女は細かいところにまで気を使えて、マジでいい女なのよ! 顔も可愛いし、俺にはもったいねえや!!」
「そうか、もったいないんだな! じゃあ早くも別れればいいんじゃないかな!」
あーあ、さすがに小一時間も彼女自慢を聞かされると、いくら仲の良い友達とはいえ、だんだんウザくなってきたぞ……
「いやいや、まず別れないね! でな、うちの彼女はよぉ!」
「うちの彼女って、3年くらい付き合ってるカップルの言い方よ!? 達也はまだ彼女と付き合って二週間だろ!?」
「あっ、すまんすまん、なんかもう、長いこと付き合ってるような感覚でさ! でさ、うちの彼女はよぉ!」
「おーい待て待て、いつまで続くんだこの惚気トーク!?」
達也の惚気話が止まらない。もうダメだ、飽きてきた。最初の15分くらいはおめでとうって思ってたけど、もういいわ、いい加減ウザくなってきたぞ……
そういう時はな、飲む!!ひたすらに酒を飲む!!
「すみません店員さん、芋焼酎ロックで、グラス5杯いっきに持ってきてください。」
「おいおい、純! そんなに飲むとお前、酔っ払ってフラフラになっちまうぞ!」
「飲みたい気分だから好きに飲ませてくれや。」
「そうか、お前そんなに俺に彼女が出来たことが嬉しいのか……!!祝い酒ってことか! くぅ!純、お前ってやつは!やっぱり親友だぜ!」
「いや、違いますけど!?? ま、まぁでも、もうそういう事でいいや……はは……」
達也の勘違いはさておき、芋焼酎ロックを数杯飲むうちに、俺はあっという間に酔ってしまった。
そこからさらに1時間ほど経過し……
「おい、純、飲みすぎじゃねえのか? 芋焼酎なんていくから……」
「いいんだよ(怒) なぁ、達也…… どうやって彼女作ったんだ…?」
「えっ? どうやってって…… うーん、まぁ、彼女とは1年の時からずっと仲良くて、3年になって思いきって告白してみた結果、成功したって感じだから、どうやってって言われてもなぁ…?」
「なぁ達也……おかしいと思うんだ……俺はさ、大学生になったら、出会いなんてそこら中にゴロゴロ転がってると思ってた……けど蓋を開けてみればどうよ……3年の6月にして、未だに彼女が出来てない……(涙) もう大学生活も後半戦なんだよ!! もうちょっとしたら就活も始まっちまうよ!! もし彼女がいたらさ、、インターンどこにしようかなぁ~? とか 一緒に面接対策しよっか! とか 同じ講義取ろうよ! とかさ、、、あ~、いろいろ出来ることがあるし、あったはずなんだ…… 達也、俺はな、このままじゃチー牛ライフを満喫しただけの大学生活で終わっちまうんだよぉ!! 俺は一人を謳歌するために大学生になったわけじゃないんだよぉ! うおぉ(涙)(涙)」
「わかったわかった(笑) 純の内に秘めたる熱い思いはわかったから、そんな、チー牛ライフとか言うなって(笑) 純、とりあえず落ち着こう、な?」
ちなみにチー牛とは、ネットスラングの一種である。陰キャ、ヲタクっぽい、などと同義語の扱いだ。
「俺は落ち着いてるぞ…… 達也は偉いよ。コミュ力も高いし、カッコいいし、達也には魅力だらけだ…… それに比べて俺はどうだ……? 俺はなぁ……!俺なんてなぁ……!」
「わかったって(笑) もうわかったから卑屈モードに入らないでくれ!(笑) というか待って、純にも1年の時から絡みがある女子がいるじゃん! 藤崎ちゃんとかどうなのよ?」
「えっ、あぁ…藤崎さんね… いや、無理だろ… 藤崎さん可愛いし、学部内の男達はみんな藤崎さんを狙ってるだろうし…俺なんかじゃ……」
達也が言っているのは同じ学部の同級生の女子、藤崎葵(ふじさきあおい)のことだ。葵はおっとりした雰囲気で可愛く、見た目も清楚でかつ、人付き合いも上手いという、まさに俺が求めている理想の女の子だ。
「そうかなぁ? だって、何度か二人で飯行ったりしたんでしょ?」
「あぁ、それはたまたまグループワークで一緒になったから課題をやろうみたいな話になって……」
「でも、課題のことだけじゃなくても、藤崎ちゃんと遊んだって言ってなかった?」
「あぁ…遊んだというか、たまたま大学終わりに本屋で会ったから、その流れでちょっと街ブラしたって感じだけど……」
「でもあれじゃん? 昼飯もちょいちょい藤崎ちゃんと一緒に食べてない?」
「あぁ…まぁ、同じ講義取ってるから、テスト対策の話とかするだけで…」
「藤崎ちゃんと教習所が一緒とか言ってなかったっけ?」
「あぁ…一緒だよ。教習所内でも話したりするけど、そんな盛り上がったりしてるわけじゃないしなぁ……」
「なぁ、純。」
達也が険しい表情で俺を見つめてくる。
「な、なに…?」
「あのな、思ったんだけど、ワンチャン藤崎ちゃんと付き合えるんじゃねえのか!?」
「な、何を言い出すかと思えば、そんな妄想みたいな……!!」
「いやだって、友達が言ってたけど、藤崎ちゃんも彼氏いないみたいだぞ? しかも、大学に入ってからまだ一度も彼氏出来てないらしいぞ?」
「へぇ~……まぁ藤崎さんに似合う男が見つからないだけなんじゃないかな。」
「その似合う男がお前かもしれねぇだろ純!! だってお前ら、普通に仲良いじゃん! 考えてもみろよ、華の大学生活、藤崎ちゃんだって彼氏欲しいだろ!でも未だにいないってことは、藤崎ちゃんに近しい男がいないんだよ!おそらく! でもお前はわりと近い男の存在として認識されてると思うぞ!」
「マジで……?」
「大マジよ。まぁ自惚れは危険だけど、純には心開いてると思うんだわ。だから、純からアプローチしてみろよ!な! このままチー牛ライフで終わりたくないんだろ!?」
「終わりたくねぇ(涙)(涙)」
「じゃあ突き進め! 純! お前のやることは一つしかない!」
「お、おう!!うおおお、なんかやる気出てきたぞ! 達也、ありがとう、お前は親友だっ!」
こうして、達也とのサシ飲みを後に、俺は一人暮らしのアパートへと帰る。
芋焼酎ロックでかなり酔ったせいか、まともな思考が働いていない俺は、LINEを開いて、藤崎葵のトーク画面を探す。
飲み過ぎて頭が痛い。視界がグラングランする。だが、今のこの勢いで藤崎さんに伝えたい。よーし、伝えるぞ…!
藤崎の名前を発見し、トーク画面を開いてさっそく、メッセージを入れる。
『夜分にごめん。藤崎さん、俺、どうしても伝えたいことがあって。俺は、あなたの事が好きです。だから、明日俺と二人で話す時間を作ってくれないかな。もし時間を作ってくれるなら、昼休み始めの13時に、旧館のほうの体育館の前に来てほしい。もちろん、来なくても大丈夫。藤崎さんに任せます。急に変なことを言ってしまってごめん。おやすみなさい。』
よし、これで送信っと……
完全に酒の力を借りたというやつだ。LINEで送るのもどうかとは思うが、藤崎さん本人に面と向かって言う勇気もない。
冷静に考えれば、来るか来ないかは藤崎さんに任せますというのもどうかと思うが……
そんな判断が出来る程、今の思考回路は正常ではない。はい、完全に飲みすぎです。
「まぁ、来なかったらごめんなさいってことだな……」
一人、部屋でボソッとつぶやく。
そして、気付いたら寝落ちしてしまっていた。
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翌日。
午前の講義が終わり、俺はド緊張の足取りで、旧館の体育館へと向かう。
旧館の体育館は現在使われておらず、キャンパス内の端にあるため、わざわざそこまで行く学生もいないから、人はいないだろう。
ちなみに、昨日藤崎さんにLINEして以降、俺はLINEを開いていない。通知も消している。なぜかって? 怖いからだ。だから、13時に体育館の前に行き、藤崎さんが来るか来ないか、その結果を確認した後に、LINEを開こうと思う。
体育館の前に到着。周囲に人はいない。
時刻は13時05分。
あぁ、やっぱり来るわけないか。そりゃそうだ、酔いが覚めて冷静になった今、普通に考えたらメッセージで告白ってそもそもどうなんだ。しかし、来るか来ないかは任せますって、なんか俺は、自分が傷つかないような、卑怯なやり方をしてしまった気がする。
きっと、藤崎さんからも、なんだこいつって、そう思われてるだろう。
だから俺はチー牛なんだ……
そして時刻は13時15分。
もう藤崎さんが来ることはないだろう。
俺は体育館を後にしようとした、その時だった。
俺の視界に、身長180cmはあるか、スタイルも良く、長めの黒髪で、綺麗な顔立ちをした男がこっちに向かってくる。
俺は心の中で、『あのイケメン、同じ学部のやつだな、まぁ全然仲良くないけど。去年グループワークで一緒になったやつだ。その時LINEも交換したな。あーっと、名前なんて言ったっけなぁ?』
その男は俺の前まで来て、
「ごめん、遅れた。ここ、旧館の体育館? 初めて来たよ。」
「えっ? あっ、そうなんだ……」
このイケメンはなんで急に俺に話しかけてきたんだ?
「で、純は俺に話があるんだよね。いいよ、純。俺と付き合おうか。」
は? いきなり何を言ってるんだこのイケメンは……? 付き合うとかなんだとか。しかも、純って……馴れ馴れしいな。
「純? どうしたの? 話があるんだよね? それとも緊張? だったらさ。」
そう言うと、イケメンは俺に近づき、いきなり俺のあごをクイッと持ち上げ、唇を寄せてくる。
「んん!? んぐぅ!?」
何が起きている? なんで俺はイケメンから急にキスされてんの!? しかもこれ、人生初のキスなんだが……
唇を離すと、再びイケメンが話し出す。
「これは、純の告白に対する俺のアンサーね。よろしくね純。純も、俺のことは、藤崎じゃなくて、遥人って呼んで。」
そうだそうだ思い出した、それを聞いて思い出したわ、このイケメンの名前、藤崎だ。下の名前は遥人っていうのか。
って………
じゃなくてさ!?!?
「えっ、えっ、えっ、いやいやいやいや、意味わかんない意味わかんない!! 何だ、何がどうなってるの!?」
「純、慌てすぎ。もしかして誰かとキスするのは初めて?」
「うん、初めてだったよ。って、違う違う、そうじゃない!! 待て待て待て! 藤崎、いきなりなんのつもりよ!?」
俺は無事にファーストキスを終わらせたのであった。
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