叶ったことを僕だけが知っている

さん

文字の大きさ
5 / 5

理解されなくても信じ続ける意味

しおりを挟む
この世界で、僕の夢を理解できる人間は、きっといない。

それがはっきりと分かる出来事があった。

同僚が昼休みに「理想の恋人」について語っていた。
「価値観が合う人がいい」とか、「お互いを尊重できる関係」とか。
その話題に、なんとなく頷きながらも、僕は口を挟まなかった。

いや、挟めなかった。

もしも本当のことを言ったら、きっと笑われる。
「来世で夢を叶えようとしてる」なんて言えば、
冗談にもならないだろう。

それでも、僕にとっては紛れもない真実だった。

僕は、彼女の名前すら口にできない。
彼女の現在の生活も、未来も、もう僕には関係がない。
だけど、この魂に宿った願いだけは、
誰にも否定できない。

その願いのために、今日も僕は落とし物を届けた。
公園で迷子の子を見つけた。
何か特別なことではない。
でも、これが今の僕にできることだと思った。

目に見える結果が欲しいわけじゃない。
ただ、僕の“中身”が、少しでも磨かれることを願っている。

それがいつか、
未来の彼女とまた出会えるための橋になる気がして。


時折、ふとした瞬間に、
「本当に叶うのか」と疑問が胸をよぎることもある。

たとえば、疲れて帰る夜道。
駅のホームで人波を見ていると、
あまりにもこの世界が遠く感じる。

僕の信じているものが、
この人たちの誰にも見えないなら、
それはもう“狂気”なのかもしれない。

でも、それでもいい。
狂っているのは、僕の方で構わない。

この信念だけが、僕を人間でいさせてくれる。
ただ流されて消えていくだけの人生を、
意味のある時間に変えてくれる。

誰にも話せない。
誰にも理解されない。

けれど、その孤独が、僕に強さをくれる。


この世界には、
きっと僕のように“願いがあるのに、動けない人たち”がいる。
声に出せない想いを抱えて、
今日もただ、生きている人たちがいる。

だから僕は、この道を進む。
いつかこの物語が、彼らの光になればいいと、そう願って。

たとえ、それがいつの未来であっても。
僕の意識が続く限り、僕は願いを手放さない。
誰にも知られなくても、たった一人であっても、
僕だけの夢を、僕は信じ続ける。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

麗しき未亡人

石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。 そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。 他サイトにも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

処理中です...