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「じゃ、二次会はカラオケで」
「全員参加な」
「近いから歩きで」など口々に会話が飛び交うなか、由奈は幹事の元に行った。
「お疲れ様です。このあと用事があるのでお先に失礼しますね。」
「えー?藤井さん帰っちゃうの?残念だな。」
「今日は楽しかったです。ご馳走様でした。」
「ホント残念だけど仕方ないね。今度の時はカラオケにも出てよ?…あと帰るのは主任だけかな。」
「皆に気付かれると色々うるさいから、どさくさに紛れて帰っちゃった方がいいよ?じゃ、行くよ」
「お疲れ様でした。」
・・・
「藤井さん、送る」私をよく思っていない筈の主任が、いつの間にか隣を歩いていた。
「もえさん、本当に頼んでくれてたんだ」と、私は独り言のような答えをした。
(主任は頼まれたら私でも送ってくれるんだ。しかも、「いいんですか?」とか「ありがとうございます」とか、もっと言い方があるだろうに私ってば…)
主任は当然のようにタクシーをつかまえて、私を奥に座らせた。「経堂方面へ頼む」と告げ、ネクタイを少し緩めた。私は色気をはらんだその仕草に気をとられながら、話に乗ってきてくれますようにと祈りつつ尋ねた。
「主任?聞いてもいいですか?」
「なんだ」
「主任は好きな人いますか」
「突然だな?いる…って言ったら?………藤井さんはどうなんだ?」
「私もいるって言ったら?………もう一つ聞いていいですか?」
「ははっ。今度はなんだ?」
「主任は私を抱けますか?」
「……」
「…あの、…yesかnoで答えてください」
「…yesだ」キッパリと言い切った。
(…主任、私を抱けるってはっきり言った…。私の事嫌ってるくせに。)
入社した時、5年振りに再開して、ほとんど会話した記憶はない。時々睨まれているかのような視線を感じるだけだ。
でも、私はどうしても主任が好きで、忘れられない。初恋を拗らせて、あれ以来好きな人もできた事がない。
今日しかこんなお願いを言う機会はないと思っていた。普段飲み会に参加しない主任が今日は一次会だけ参加することはわかっていた。会社で突然こんな事切り出せるはずないし、と。
「だったら今夜、私を抱いてください。」心を決めた私は、主任の目を見つめ、右手を主任の太ももにおいて、覚悟を決めてお願いした。
…「いいのか?」
目を反らさずに頷いた。
「ホテルと俺の部屋、どっちにする?」
どうせ一度きりなら、と、
「ホテルへ」
…心臓の音が主任に聞こえてるんじゃないかと思えるほどばくばくしているのを必死で隠しつつ、余裕のあるふりで答えた。
「◯◯ホテルへ」と運転手に告げ、私の口許に視線を落とした。
「気持ち変わるのなしな」と笑って啄むようなキスを くれた。
「全員参加な」
「近いから歩きで」など口々に会話が飛び交うなか、由奈は幹事の元に行った。
「お疲れ様です。このあと用事があるのでお先に失礼しますね。」
「えー?藤井さん帰っちゃうの?残念だな。」
「今日は楽しかったです。ご馳走様でした。」
「ホント残念だけど仕方ないね。今度の時はカラオケにも出てよ?…あと帰るのは主任だけかな。」
「皆に気付かれると色々うるさいから、どさくさに紛れて帰っちゃった方がいいよ?じゃ、行くよ」
「お疲れ様でした。」
・・・
「藤井さん、送る」私をよく思っていない筈の主任が、いつの間にか隣を歩いていた。
「もえさん、本当に頼んでくれてたんだ」と、私は独り言のような答えをした。
(主任は頼まれたら私でも送ってくれるんだ。しかも、「いいんですか?」とか「ありがとうございます」とか、もっと言い方があるだろうに私ってば…)
主任は当然のようにタクシーをつかまえて、私を奥に座らせた。「経堂方面へ頼む」と告げ、ネクタイを少し緩めた。私は色気をはらんだその仕草に気をとられながら、話に乗ってきてくれますようにと祈りつつ尋ねた。
「主任?聞いてもいいですか?」
「なんだ」
「主任は好きな人いますか」
「突然だな?いる…って言ったら?………藤井さんはどうなんだ?」
「私もいるって言ったら?………もう一つ聞いていいですか?」
「ははっ。今度はなんだ?」
「主任は私を抱けますか?」
「……」
「…あの、…yesかnoで答えてください」
「…yesだ」キッパリと言い切った。
(…主任、私を抱けるってはっきり言った…。私の事嫌ってるくせに。)
入社した時、5年振りに再開して、ほとんど会話した記憶はない。時々睨まれているかのような視線を感じるだけだ。
でも、私はどうしても主任が好きで、忘れられない。初恋を拗らせて、あれ以来好きな人もできた事がない。
今日しかこんなお願いを言う機会はないと思っていた。普段飲み会に参加しない主任が今日は一次会だけ参加することはわかっていた。会社で突然こんな事切り出せるはずないし、と。
「だったら今夜、私を抱いてください。」心を決めた私は、主任の目を見つめ、右手を主任の太ももにおいて、覚悟を決めてお願いした。
…「いいのか?」
目を反らさずに頷いた。
「ホテルと俺の部屋、どっちにする?」
どうせ一度きりなら、と、
「ホテルへ」
…心臓の音が主任に聞こえてるんじゃないかと思えるほどばくばくしているのを必死で隠しつつ、余裕のあるふりで答えた。
「◯◯ホテルへ」と運転手に告げ、私の口許に視線を落とした。
「気持ち変わるのなしな」と笑って啄むようなキスを くれた。
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