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第1章 学園編〜天然王子とその護衛(クラスメイト)たち
第8話 こんな梨月ちゃん、見たことないっ!
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【今回の学習】
妹は成長しました(色んな意味で)
—————————————————————
「明日からも頑張らないとなー」
朝、登校してきたモノレール乗り場にいる。俺が乗るのは男性専用なので乗車する人が少ない。
だが、女性用のモノレール乗り場は間を挟んで隣にある為……
「きゃー!!あの男の子カッコいい~!」
「新しい男の子かな?」
「例の2ーwの男の子かな!」
まるで男性アイドル並みの黄色い歓声を受けていた。
入り口には俺の姿を見ようとしているのか顔を覗かせたり、無理やり入ろうとしている人もいたが、警備員のおばちゃんたちに阻止されていた。
「梨月、まだかなぁー」
朝、帰る約束をしたのでここで待っている。そのことを翠に言うと「妹さんなら安心だね」と帰っていった。
そろそろメールでも打とうとした時だった。
「八神碧月くんですか?」
背後から声を掛けられた。
振り向くとそこには黒髪の三つ編みに分厚いメガネの女の子が立っていた。顔は髪とメガネで隠れていてよくわからない。
「そうですけど……?」
そう答えると女の子の表情がパァァァと明るくなった。
「私、黒崎千里と言います」
黒崎千里……。
「あー!申請をくれた人ですか!」
勧誘申請の返信をした人だ。
「は、はい!覚えていてくれたんですね!」
俺が思い出したのが嬉しかったのか、さらに明るくなる黒崎さん。
でも、あれ断りのメールなんだよな……。
「ごめんだけど、あの勧誘の申請は断るね」
「い、いえ!私こそすいませんでした!」
ペコペコと頭を下げて謝られる。
悪い人ではなさそうだ
「ちなみに何年生?」
「あっ、えっと、2年生です」
「俺と同級生だね!」
「そ、そ、そそうなんですか……!」
朱莉たち以外にも同級生がいて良かったー。
「そういえば選抜クラスにいない人ってどこにいるの?」
「えっと、女子生徒しかいないクラスが5つくらいあって……。そこで授業を受けたりしています……!」
なるほど。つまり、毎回その5つの教室から選抜クラスの生徒が選ばれる訳か……。
「ところで学園には慣れましたか?」
「いや、それが中々慣れなくて……。色々と学んでいるところだよ」
タマちゃんが教えてくれたのはまだほんの一部らしく、残りは学園生活を通しながら覚えた方が身につくと言われた。
「そうですか。あの、良かったら学園のことについて教えましょうか?」
「えっ、いいの?」
黒崎さんは俺より長く学園にいるし、色々知っているだろう。
教えてくれるなら助かる。
「はい。ではこれから——」
黒崎さんがそう言いかけた時だった。
俺たちの間に突如、足が出てきた。
どちらかといえば黒崎さん側に出てきた足だったが、彼女はヒョイと慣れたように交わした。
「外しましたか……」
「り、梨月……!」
蹴りを入れてきたのは妹の梨月だった。
「お兄ちゃんに近づかないで下さい……」
俺の前に立ち、まるで黒崎さんから遠ざけるように守っている。
心なしか声がいつもより低い。
「ふふっ……可愛い妹さん。もう少し仲良くしましょうよ」
「誰が貴方となんて……っ」
未だに状況が飲み込めないのは俺だけだ。
「お兄ちゃん、この人とどう言う関係ですか?」
「勧誘の申請が来たから断りのメールを入れた関係?」
そう答えると梨月は「はぁ……」とため息をついた。
「勧誘の返信が返ってきたくらいで調子に乗らないで下さい」
「嫉妬かな?妹さんでも嫉妬しているの?」
黒崎さんは相変わらずニヤニヤした表情だ。
その姿がよほど気に食わないのか、梨月の眉間にしわがよる。
「いい加減にして下さい。ここで一発やってもいいんですよ?」
まるで今から喧嘩を始めるみたいに拳を構える梨月。
黒崎さんもスクールバッグを下ろし、戦闘態勢に入る。
と、止めないと……。
「梨月、ダメだ!」
何をすれば分からなかったが、とりあえず梨月を背後から抱きしめた。
「お、お、お兄ちゃん!」
梨月が他人に暴力を振るうところは見たくない。
抱きしめたいことがよほど効いたのか、固まったまま動かなくなった。
この隙に……
「黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!」
一言謝り、梨月の手を引き、急いでモノレールに乗った。
◇◇◇
「話しかけられた。名前呼んでくれた……」
私、黒崎千里は今、人生最高の幸せを味わっている。
まさかの男子。しかもかなりイケメンと会話することができたから。
パラレルワールドになってから男は変わる人が多かった。自分の地位を利用してやりたい放題。女の子に優しくすることなんてしなくなった。
なのに……。
『黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!』
彼は何も悪くないのに私に謝ってくれた。この対応から彼がこのパラレルワールドでは珍しい紳士な男の子と察する。
「2ーWだけ独占してずるい……」
私も一応選考テストに参加したが、今回は菫沢恋白や花咲朱莉など、優秀な生徒が珍しく受けたため、あと一歩というところで落ちてしまった。
でも、まだチャンスはある。
彼のクラスに入るためには、指名するか、勧誘するかだ。しかし、勧誘は可能性がなさそうだ。
「指名しかないかぁ……」
これから私への好感度を上げてもらって、彼に気に入られて指名してもらわなくちゃ!
今まで憂鬱だった学園生活が彼のお陰で素晴らしいものになりそうだ。
「ふふっ……八神碧月くん……待っていて下さいね」
彼の顔を思い浮かべながら笑う私であった。
妹は成長しました(色んな意味で)
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「明日からも頑張らないとなー」
朝、登校してきたモノレール乗り場にいる。俺が乗るのは男性専用なので乗車する人が少ない。
だが、女性用のモノレール乗り場は間を挟んで隣にある為……
「きゃー!!あの男の子カッコいい~!」
「新しい男の子かな?」
「例の2ーwの男の子かな!」
まるで男性アイドル並みの黄色い歓声を受けていた。
入り口には俺の姿を見ようとしているのか顔を覗かせたり、無理やり入ろうとしている人もいたが、警備員のおばちゃんたちに阻止されていた。
「梨月、まだかなぁー」
朝、帰る約束をしたのでここで待っている。そのことを翠に言うと「妹さんなら安心だね」と帰っていった。
そろそろメールでも打とうとした時だった。
「八神碧月くんですか?」
背後から声を掛けられた。
振り向くとそこには黒髪の三つ編みに分厚いメガネの女の子が立っていた。顔は髪とメガネで隠れていてよくわからない。
「そうですけど……?」
そう答えると女の子の表情がパァァァと明るくなった。
「私、黒崎千里と言います」
黒崎千里……。
「あー!申請をくれた人ですか!」
勧誘申請の返信をした人だ。
「は、はい!覚えていてくれたんですね!」
俺が思い出したのが嬉しかったのか、さらに明るくなる黒崎さん。
でも、あれ断りのメールなんだよな……。
「ごめんだけど、あの勧誘の申請は断るね」
「い、いえ!私こそすいませんでした!」
ペコペコと頭を下げて謝られる。
悪い人ではなさそうだ
「ちなみに何年生?」
「あっ、えっと、2年生です」
「俺と同級生だね!」
「そ、そ、そそうなんですか……!」
朱莉たち以外にも同級生がいて良かったー。
「そういえば選抜クラスにいない人ってどこにいるの?」
「えっと、女子生徒しかいないクラスが5つくらいあって……。そこで授業を受けたりしています……!」
なるほど。つまり、毎回その5つの教室から選抜クラスの生徒が選ばれる訳か……。
「ところで学園には慣れましたか?」
「いや、それが中々慣れなくて……。色々と学んでいるところだよ」
タマちゃんが教えてくれたのはまだほんの一部らしく、残りは学園生活を通しながら覚えた方が身につくと言われた。
「そうですか。あの、良かったら学園のことについて教えましょうか?」
「えっ、いいの?」
黒崎さんは俺より長く学園にいるし、色々知っているだろう。
教えてくれるなら助かる。
「はい。ではこれから——」
黒崎さんがそう言いかけた時だった。
俺たちの間に突如、足が出てきた。
どちらかといえば黒崎さん側に出てきた足だったが、彼女はヒョイと慣れたように交わした。
「外しましたか……」
「り、梨月……!」
蹴りを入れてきたのは妹の梨月だった。
「お兄ちゃんに近づかないで下さい……」
俺の前に立ち、まるで黒崎さんから遠ざけるように守っている。
心なしか声がいつもより低い。
「ふふっ……可愛い妹さん。もう少し仲良くしましょうよ」
「誰が貴方となんて……っ」
未だに状況が飲み込めないのは俺だけだ。
「お兄ちゃん、この人とどう言う関係ですか?」
「勧誘の申請が来たから断りのメールを入れた関係?」
そう答えると梨月は「はぁ……」とため息をついた。
「勧誘の返信が返ってきたくらいで調子に乗らないで下さい」
「嫉妬かな?妹さんでも嫉妬しているの?」
黒崎さんは相変わらずニヤニヤした表情だ。
その姿がよほど気に食わないのか、梨月の眉間にしわがよる。
「いい加減にして下さい。ここで一発やってもいいんですよ?」
まるで今から喧嘩を始めるみたいに拳を構える梨月。
黒崎さんもスクールバッグを下ろし、戦闘態勢に入る。
と、止めないと……。
「梨月、ダメだ!」
何をすれば分からなかったが、とりあえず梨月を背後から抱きしめた。
「お、お、お兄ちゃん!」
梨月が他人に暴力を振るうところは見たくない。
抱きしめたいことがよほど効いたのか、固まったまま動かなくなった。
この隙に……
「黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!」
一言謝り、梨月の手を引き、急いでモノレールに乗った。
◇◇◇
「話しかけられた。名前呼んでくれた……」
私、黒崎千里は今、人生最高の幸せを味わっている。
まさかの男子。しかもかなりイケメンと会話することができたから。
パラレルワールドになってから男は変わる人が多かった。自分の地位を利用してやりたい放題。女の子に優しくすることなんてしなくなった。
なのに……。
『黒崎さんもごめん!今日のところはこれで許して!』
彼は何も悪くないのに私に謝ってくれた。この対応から彼がこのパラレルワールドでは珍しい紳士な男の子と察する。
「2ーWだけ独占してずるい……」
私も一応選考テストに参加したが、今回は菫沢恋白や花咲朱莉など、優秀な生徒が珍しく受けたため、あと一歩というところで落ちてしまった。
でも、まだチャンスはある。
彼のクラスに入るためには、指名するか、勧誘するかだ。しかし、勧誘は可能性がなさそうだ。
「指名しかないかぁ……」
これから私への好感度を上げてもらって、彼に気に入られて指名してもらわなくちゃ!
今まで憂鬱だった学園生活が彼のお陰で素晴らしいものになりそうだ。
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彼の顔を思い浮かべながら笑う私であった。
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