その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第一章 アーウェン幼少期

伯爵は義息子の安全を優先する ②

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ターランド伯爵邸に忍び込むような間者はいないだろうが、さらに窓や鍵穴にまで防音と覗き見を防止する術をかけた魔術師は、一枚のガラス板を出す。
「これは……?」
「魔術所以外で使うことはほぼありませんが、王宮などに見慣れぬ植物などが持ち込まれた場合、どの地域で生息した物なのかを調べる術が掛けられています」
「なぜだ?」
「あからさまに毒性を疑うのは、友好関係を損なうので……しかし、相手国が意図せず毒物を贈ってくれることがあります。それがどの地域で主に生息しているのかを調べて記録しておきます」
「ほう……」
「そうすることで万が一戦争などになった場合、誤って食用しないように注意を促したり、我が国の植物研究の専門者に栽培と改良を命じるのです」
そこまで説明され、ラウドは何か思い当たったように目を見開いた。
「そういえば……後方援軍として地方に赴いた際、一番に『飲食注意書』が回ってきたな……いったいいつの間にそんな情報を得たのかと思っていたが……」
「はい。王都にいる時でも、常に王兵たちの援護になればと我々は頑張っているのです!」
バンッと胸を叩き、魔術師長は勢いよく立ち上がった。
魔術研究の数々は王国軍のためにあるが、使いこなせる者の多くはターランドのような高魔力を有する後方支援部隊か、魔剣士など限られた者しか恩恵を感じられない。
実際は戦場でも衛生的な医療部の維持や、魔物討伐などの際に身体防御力の向上などに役立っているのだが、目に見えないものに対して感謝の念を抱かれることはあまりないのだろう──なぜだか魔術師長は涙目になっていた。
「あっ……あぁ……うん……私たちはとても助かっている。と、ところで、このガラスを使って、一体何を……?」
「あっ、はい!」
やっと誰も入れないようにした理由を思い出したのか、魔術師はまた大人しくソファに座り直した。
「では、まずこの国の地図をいただけますか?」
「はい」
指示されるままにバラットがテーブルの上に地図を広げると、黒い屑を置いたガラス板をその上にかざす。
「まずは王国一の砂漠地帯に……反応がありませんね」
「反応があると、どうなるんですか…‥?」
好奇心丸出しのバラットに向かってにっこり笑うと、魔術師長はゆっくりとガラス板を動かした。
「可能性は限りなく低いですが、もし奇跡的に一本もしくは数本だけでも『魅惑の実』をつける成木があると、面白い反応が見れま……」
「まさかっ?!」
魔術師がそう言いかけた時、ある場所でほんのりと板が輝き、三人の男はじっとその場所を凝視した。

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