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第一章 アーウェン幼少期
家庭教師は頭を悩ませる ④
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ラウドの前にまた座ると、用意されていた羊皮紙が四枚、クレファーの前に差し出された。
それぞれ二枚組となる文面で、一組目には今後二年間のアーウェンへの教育勉学と、エレノアが希望するなら同じように勉学の時間を提供する契約文、それに伴う報酬、また今回の領地帰還中に行う授業は特別扱いとして別報酬が与えられる約束、その金額、また今後以下にターランド伯爵家及び使用人たちに対して知り得たことのすべてに秘匿守秘義務が生じるため、契約魔術を交わすことを了承することなどが書かれている。
もう一組にはターランド伯爵領の領都内にクレファーの両親が開業する予定の店に関する契約とそれに伴うチュラン・グラウエス一家の移住を許可する文言があり、そこにはすでに父も母もサインがしてあることに気が付いた。
「そちらの物に関しては、君のご両親が君と妹君の保証人ということで目を通すだけでよい。だがアーウェンとエレノアに関するこちらの物に関しては、しっかり目を通し、納得いかない部分があればお互いの条件をすり合わせよう」
だがクレファーがどんなに目を凝らしても不備はなく、それどころか用意された報酬額はクレファーが頼み込んでようやく得た家庭教師の賃金として得ていた半年分よりも多い。
しかもその数字は二年分をまとめたものではなく、ひと月分として用意されていると明記までしてあり、必要経費もその都度請求する権利までクレファーに与えられていた。
「こ…こんなに……?」
「王都にある貴族学院で、伯爵家の子供を所属させるためにかかる費用はそれ以上だ。ならば家庭教師である君は、その報酬を受け取る権利が発生する。しかも我らが要求しているのは通常の教育よりもかなり短期間で……という無茶なものだ。なるべく達成してほしいとは思っているが、頑張るのは君だけではなく、あの子もそうだろう……やはりまったく教育や養育といった義務を放棄されていたための遅れは否めない。それを埋める期待を込めての金額だと思ってほしい」
「はい」
自分の身には過ぎるような報酬と期待に一瞬逃げ出したい気持ちになったが、クレファーは何とか踏み止まり、手が震えないようにと緊張しながらもしっかりと自分の名前をサインする。
その後は今日の午後からカードを使った文字や数字を写し取るという学習に入ったことを伝えると、ラウドは思っていたよりもふたりがクレファーに懐き、そして喜んで学んでいることに驚いた。
「領都に着くまでの日数を使って、アーウェン様とエレノア様に数字の形と数え方なども学んでもらおうと考えています。文章を組み立てるまで学習が進むかわかりませんが、とりあえず馬車の中では手遊びやカードを読み上げて物の綴りと形を結びつける勉強を、休憩中に書き取り、またはパズルなどの手遊び、野営地では身体を動かす遊びなどをその都度組み立てたいと思います」
「わかった。移動の予定についてはロフェナに確認し、授業内容も相談してくれればいい。何か問題がない限りは私に特別報告する必要はないと心得ていてくれていい」
「畏まりました。授業予定計画書は必要でしょうか?」
「可能なら。あくまでも予定は予定で、進捗状態が芳しくない、もしくは進み過ぎてズレが生じた場合のみ、新たに提出してくれればいい」
「はい」
スッと手を横に振られるのを見て、ロフェナがクレファーの後ろに立って軽くお辞儀をラウドに向ける。
「では、本日はここまでです。クレファー先生、お疲れさまでした」
「あっ…は、はい……お、お時間ありがとう、ございました」
軽く椅子を引かれて立ち上がると、クレファーは騎士の礼などは知らないため、自分なりに身につけた礼儀でラウドに謝意と退出の意味を込めて頭を下げた。
それぞれ二枚組となる文面で、一組目には今後二年間のアーウェンへの教育勉学と、エレノアが希望するなら同じように勉学の時間を提供する契約文、それに伴う報酬、また今回の領地帰還中に行う授業は特別扱いとして別報酬が与えられる約束、その金額、また今後以下にターランド伯爵家及び使用人たちに対して知り得たことのすべてに秘匿守秘義務が生じるため、契約魔術を交わすことを了承することなどが書かれている。
もう一組にはターランド伯爵領の領都内にクレファーの両親が開業する予定の店に関する契約とそれに伴うチュラン・グラウエス一家の移住を許可する文言があり、そこにはすでに父も母もサインがしてあることに気が付いた。
「そちらの物に関しては、君のご両親が君と妹君の保証人ということで目を通すだけでよい。だがアーウェンとエレノアに関するこちらの物に関しては、しっかり目を通し、納得いかない部分があればお互いの条件をすり合わせよう」
だがクレファーがどんなに目を凝らしても不備はなく、それどころか用意された報酬額はクレファーが頼み込んでようやく得た家庭教師の賃金として得ていた半年分よりも多い。
しかもその数字は二年分をまとめたものではなく、ひと月分として用意されていると明記までしてあり、必要経費もその都度請求する権利までクレファーに与えられていた。
「こ…こんなに……?」
「王都にある貴族学院で、伯爵家の子供を所属させるためにかかる費用はそれ以上だ。ならば家庭教師である君は、その報酬を受け取る権利が発生する。しかも我らが要求しているのは通常の教育よりもかなり短期間で……という無茶なものだ。なるべく達成してほしいとは思っているが、頑張るのは君だけではなく、あの子もそうだろう……やはりまったく教育や養育といった義務を放棄されていたための遅れは否めない。それを埋める期待を込めての金額だと思ってほしい」
「はい」
自分の身には過ぎるような報酬と期待に一瞬逃げ出したい気持ちになったが、クレファーは何とか踏み止まり、手が震えないようにと緊張しながらもしっかりと自分の名前をサインする。
その後は今日の午後からカードを使った文字や数字を写し取るという学習に入ったことを伝えると、ラウドは思っていたよりもふたりがクレファーに懐き、そして喜んで学んでいることに驚いた。
「領都に着くまでの日数を使って、アーウェン様とエレノア様に数字の形と数え方なども学んでもらおうと考えています。文章を組み立てるまで学習が進むかわかりませんが、とりあえず馬車の中では手遊びやカードを読み上げて物の綴りと形を結びつける勉強を、休憩中に書き取り、またはパズルなどの手遊び、野営地では身体を動かす遊びなどをその都度組み立てたいと思います」
「わかった。移動の予定についてはロフェナに確認し、授業内容も相談してくれればいい。何か問題がない限りは私に特別報告する必要はないと心得ていてくれていい」
「畏まりました。授業予定計画書は必要でしょうか?」
「可能なら。あくまでも予定は予定で、進捗状態が芳しくない、もしくは進み過ぎてズレが生じた場合のみ、新たに提出してくれればいい」
「はい」
スッと手を横に振られるのを見て、ロフェナがクレファーの後ろに立って軽くお辞儀をラウドに向ける。
「では、本日はここまでです。クレファー先生、お疲れさまでした」
「あっ…は、はい……お、お時間ありがとう、ございました」
軽く椅子を引かれて立ち上がると、クレファーは騎士の礼などは知らないため、自分なりに身につけた礼儀でラウドに謝意と退出の意味を込めて頭を下げた。
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