その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

文字の大きさ
287 / 437
第二章 アーウェン少年期 領地編

伯爵は迎えに出る ③

しおりを挟む
ラウドが領主として任命したデミアス・キニー・ウェデリアン伯爵を差し置いて目の前の悪漢どもを暇潰しのように片付けた結果、悪党どもにとって快適なホテルだった牢屋は本来の使用法を思い出され、その監視役はこの町出身の兵たちが担う。
言ってしまえば悪党とそれを追うはずの警邏はズブズブの関係であり、見せかけで逮捕されてもねぐらにしていた牢屋へ帰って来るだけの話であり、翌日には「もう反省した」と勝手に『保釈』されてしまうのだから世話はない。
だが今では彼らが持つ鍵はすべて取り上げられ、そもそも出られないようにラウドが格子と扉枠を凍り付かせて開かないようにしてしまった。
連日ウェデリアン伯爵家の執事長を連れてきては面通しをし、ひとりずつ何をしたのか誰に迷惑をかけたのかの聞き取りを行っている。
軽犯罪は『今は』行っていないと言う者もいたが、それは子供の頃にやっていたことを現在はやっていないというだけであり、そうでもしないと生きていけない子供たちを束ねて上前をハネているという事実を暴かれてひとつずつ罪状が積み重なっていった。
特にボスだった男はこの町の金持ち連中に手出しはしなかったものの、貴族たちが構える別荘から金目の物を盗んだり、貧民街の少女や町に訪れた若い女性を犯して売春宿に売り飛ばすなどを仲間と共に行っていたことも明らかになり、ゆくゆくはここではなく領都で裁かれることをラウドが決めた。


そんなラウドはすぐにアーウェンやカラたちを見つけて合流できたため、その歩みを妻がいるであろう領主館へと転換した。
道すがら何を目にし、何を学んだのかを聞いては目を細める。
血の繋がった我が子──嫡男であるリグレとはこういった関わり合いをした記憶がなく、実に貴族らしくすぐに乳母や家庭教師の手に預けてしまったことを後悔しないでもない。
だが気が付いた時にはすでにリグレは貴族学園に入れるほどの知識を修め、むしろ進んで『次期ターランド伯爵当主』の誇りをもって進学した。
そんな息子を誇らしく思うのはもちろんだが、新たに養子にしたアーウェンの成長ぶりを目の当たりにできるのは、娘であるエレノアの成長とはまた違う喜びを感じる。
子供を性で差別する意図はないが、やはり娘のことは妻や乳母に任せておけばよいことが多く、ラウドが得るのは結果だけで、だからといって蔑ろにしているつもりはなかった。
それでもアーウェンの体調に合わせた今回の長い帰郷旅程は、今まで足りなかった父娘の関わりも増えて、エレノアの持つ魔力についてもよく考えるきっかけになったと言えなくもないだろう。


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...