その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第二章 アーウェン少年期 領地編

伯爵は幼子を思う ①

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アーウェンの持つ魔力に関しての詳しいことは領主館本邸に戻り、またカラに施されていた怪しげな術についても、今ここで明らかにすることは難しい。
だがもどかしいことにかわりはなく、それもあってこの一地方の大掃除をやろうかと思ったのかもしれない。
そう思うと、嫡男のリグレに関しては本当に手がかからなかったとしか思えなかった。
自分もそうやって乳母から家庭教師へ、そして長じてからは国の教育機関で然るべき王侯貴族としての教養や交流術、人脈作りの基礎を身につけたため、それが貴族子息のあるべき姿とは知っているが、何故だかアーウェンに関しては自分の手元に置いておきたい気持ちが日増しに強くなる。
しかしアーウェンを引き取った理由のひとつに、王都ではなく領内の兵力強化のためにアーウェンの母方である騎士爵を持つキャステ家由来の血筋を当てにしているだけだ。

───いや、それはただの言い訳である。

ラウド・ニアス・デュ・ターランドに『予見』の力はない。
また魔力持ちではあっても、他人の力を見分けたり過去視ができたりするわけでもない。
だがそれでも、何故かかなり血の繋がりの薄いサウラス男爵家も含むすべての一族の記録を教会から取り寄せ見比べていた時、一番幼いアーウェンの名前が目に留まった。
嫌な感じだった。
『産まれた』という記録はあれど、その後の成長の具合──教会へ連れてこられたかどうかや、貴族の子供としては特別な意味合いのある一歳から三歳までの魔力鑑定も記録されてはいなかったのである。
しかしそれはサウラス男爵家の長男ロアンだけは小さいながらも拝領している領村を父に代わって治めるために様々に届け出はされていたが、四人の子供達は出産以外の届け出はないから、おそらくはその扱いは『アーウェンのみ』というわけではなかった。
だからそれはあまりにも貧乏なために、教会への寄進というよけいな出費はできなかったのだろうと考えたが──それがキャステ家というターランド一族とはサウラス家の姻戚という以外の繋がりのない方面から情報を集めてみると、様相が変わるのである。


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