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第二章 アーウェン少年期 領地編
少年は義兄と外食を楽しむ ①
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どうやらアーウェンは共感力が高いのか──そうリグレは思いかけ、けれどもと思考の中で疑問符を浮かべる。
誰かが悲しむから泣く。
誰かが喜ぶから一緒に嬉しくなる。
誰かが怒るからつられて興奮する。
誰かが笑うから同じように笑う。
違う。
そうじゃないと違和感を感じるのは、久しぶりに会ったリグレや父母、そしてエレノアに対してアーウェンは時々『意味がわからない』という表情を浮かべることが多々あったからだ。
そしてさっきのように商店街長が愛想笑いをしていたのに同じ笑みを返すわけではなく、何故か怯えて助けを求めるかのようにリグレは感じた。
なのに「商店街が賑やかになった」と嬉しそうに話している同じ人をジッと見て、アーウェンは幸せそうに笑ったのである。
「アーウェン」
「はい」
「楽しい?」
「……たのしい?」
リグレがそっと尋ねると、アーウェンの顔からわずかに表情が抜け落ち、虚ろに言葉を繰り返す。
「うん……さっきはあのおじさんが怖いみたいだったのに」
「こわい……」
「今は怖くなさそうだから」
「……はい。こわくない、です」
ニコニコとまだ商店街で新しく始まったオープンテラス形式の説明をしている商店街長と、それに興味深そうに耳を傾けている義父の方に視線をやり、アーウェンはまたリグレを見上げた。
「おとうさま、おじさんとたのしそう……ぼくがいても、おこらないです」
「え?」
アーウェンが浮かべたのは純粋な笑みではなく、何か泣くのを堪えているようなおかしな笑い方だ──リグレはそう感じ、何か怖いモノを見てしまったようにギクッと身体を強張らせた。
リグレがアーウェンの言った言葉の意味を理解できるのはもっと後になるが、今は父が手招きをしているそのそばに行かねばならない。
商店街長はもっと領主と話しをしたい素振りだったが、話が途切れた瞬間にどこかの店の男が話しかけてきて、これ幸いにとラウドはその場を離れることにしたようだ。
だいたいまだ入り口に立った状態で、目的の店に向かってすらいない。
「……確かに領都内の繁栄も大切だが、今日はお前たちと出かけるのが第一目的だというのに……まったく……」
ブツブツと文句を言っているが、人が集まり賑やかに食事をしている姿を見るラウドの目は嬉しそうである。
そのまま先ほどと同じようにアーウェンに手を差し出し、義弟の反対側の手を取るリグレに向かって微笑みかけると、父子三人でゆったりと歩き出した。
誰かが悲しむから泣く。
誰かが喜ぶから一緒に嬉しくなる。
誰かが怒るからつられて興奮する。
誰かが笑うから同じように笑う。
違う。
そうじゃないと違和感を感じるのは、久しぶりに会ったリグレや父母、そしてエレノアに対してアーウェンは時々『意味がわからない』という表情を浮かべることが多々あったからだ。
そしてさっきのように商店街長が愛想笑いをしていたのに同じ笑みを返すわけではなく、何故か怯えて助けを求めるかのようにリグレは感じた。
なのに「商店街が賑やかになった」と嬉しそうに話している同じ人をジッと見て、アーウェンは幸せそうに笑ったのである。
「アーウェン」
「はい」
「楽しい?」
「……たのしい?」
リグレがそっと尋ねると、アーウェンの顔からわずかに表情が抜け落ち、虚ろに言葉を繰り返す。
「うん……さっきはあのおじさんが怖いみたいだったのに」
「こわい……」
「今は怖くなさそうだから」
「……はい。こわくない、です」
ニコニコとまだ商店街で新しく始まったオープンテラス形式の説明をしている商店街長と、それに興味深そうに耳を傾けている義父の方に視線をやり、アーウェンはまたリグレを見上げた。
「おとうさま、おじさんとたのしそう……ぼくがいても、おこらないです」
「え?」
アーウェンが浮かべたのは純粋な笑みではなく、何か泣くのを堪えているようなおかしな笑い方だ──リグレはそう感じ、何か怖いモノを見てしまったようにギクッと身体を強張らせた。
リグレがアーウェンの言った言葉の意味を理解できるのはもっと後になるが、今は父が手招きをしているそのそばに行かねばならない。
商店街長はもっと領主と話しをしたい素振りだったが、話が途切れた瞬間にどこかの店の男が話しかけてきて、これ幸いにとラウドはその場を離れることにしたようだ。
だいたいまだ入り口に立った状態で、目的の店に向かってすらいない。
「……確かに領都内の繁栄も大切だが、今日はお前たちと出かけるのが第一目的だというのに……まったく……」
ブツブツと文句を言っているが、人が集まり賑やかに食事をしている姿を見るラウドの目は嬉しそうである。
そのまま先ほどと同じようにアーウェンに手を差し出し、義弟の反対側の手を取るリグレに向かって微笑みかけると、父子三人でゆったりと歩き出した。
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