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記される者。
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今バルトロメイの懐には特殊な封印がかかった革袋があり、銀貨が1枚入っている。
それとは別にとりあえずの路銀として大銅貨50枚、中銅貨5枚が入っている革袋があった。
銅貨類はガンス家にいた間にちょこちょこと手伝いを頼まれ、お駄賃としてマロシュ老からもらった小銭を貯めた分だが、銀貨は初依頼料の先渡しだと言われたものである。
本来なら登録したばかりの新人冒険者に依頼などあるはずもないが、どうせならちゃんと報酬を払いたいということで一緒に冒険者ギルドに付いてきてくれ、手続きから依頼契約書の読み方、報酬の受け取り方までマロシュ老は付き合ってくれた。
「ほれ、わしの倅たち……レオシュの両親だが、今出稼ぎに行っておるじゃろう?アレらの出稼ぎ先まで護衛してもらうのに、ちょうど同じ方面へ行く商人たちに便乗させてもらったんじゃ。もう少ししたら帰って来るんじゃが、その時に手持ちがなかったら護衛してくれる冒険者を雇えんからのう……ついでに帰還護衛依頼を出しておこうと思っての」
「ほぇ~………」
依頼書を出すのに手数料がいるため、手持ちがなければ護衛なしで帰って来るか、行きにお願いしたようにこの町に来る商人の隊列に加えてもらわねばならないが、金が無ければ客人ではなく使用人扱いになるという。
今のところマロシュ老のところに息子夫婦から帰還のための護衛依頼を頼んでくれという言伝はないが、こうやって手数料をかけて先依頼を出しておけば万が一帰れないとなった時に事情を聴きに行ってくれるということだ。
「ギルドっちゅうのは依頼を受けて冒険者に預け、そして達成されたら報酬をもらえるっちゅう仕組みじゃからの。依頼主のある程度のお願いを融通してくれるんじゃ」
「ふぅん……」
「でも、すごいですねぇ!こんな少年……すいません、新人さんに指名依頼なんて!よっぽど腕がいいんでしょうねぇ……」
発行したばかりの冒険者登録カードをジロジロと見ながら、『受付嬢』のなんとかと紹介された女性がバカにしたような笑いを浮かべてバルトロメイとマロシュ老を見比べた。
バルトロメイはかつていた聖ガイ・トゥーオン神殿の僧兵神官たちがよく浮かべていたのとよく似たその笑いを見て、理由はわからないが自分に良い感情を抱いていないようだと判断する。
「ふんっ……よけいな詮索じゃわい。腕が良いとか悪いとかじゃありゃせんわ。さっさとその冒険者カードを寄こさんかっ!」
バッとカードを受付嬢からそのカードを奪い取り、その中に書かれている文字をチラリと見てからマロシュ老は本来の持ち主であるバルトロメイに渡してくれた。
「ほれ、ちゃんとお前の名前が書いてあるか、確認せぇよ」
「うん」
氏名 バルトロメイ・ルー
年齢 18
職業 なし
レベル 1
体力
腕力
防御力
魔力
未判明能力 あり
ちなみに『ルー』という氏は別になくてもよかったのだが、せっかくバルトバーシュとマクロメイという2人の師匠が『名前』をくれたので、自分の家名としてエクルー神官の『ルー』という最後の言葉をもらって登録した。
一応マロシュ老からは「ガンスという家名を使ってもよいぞ?」と提案もされたし、冒険者になる物の大半は平民でも資産も家名もないような者も多数いる。
だから最初は名前のみで、二つ名で呼ばれ始めるとそれをランク上昇による更新時に変更する者もいるらしい。
「まあ……うん。それでもいいんじゃが……」
マロシュ老はシュンとしていたが、どうせ『ガンス』という家名は息子にも孫にも受け継がれるし、男兄弟でも使っているのだから、まったく赤の他人であるバルトロメイが名乗る必要もないのだ。
だが本当の孫の1人のように思ってくれていたのだと思うと、ほんのりと胸の奥が暖かくなる気がする。
一瞬だけ『ガンス』を名乗っても良いかなと思わないでもなかったが、バルトロメイは自分が気付いていないだけで案外頑固なところがあったらしい。
それとは別にとりあえずの路銀として大銅貨50枚、中銅貨5枚が入っている革袋があった。
銅貨類はガンス家にいた間にちょこちょこと手伝いを頼まれ、お駄賃としてマロシュ老からもらった小銭を貯めた分だが、銀貨は初依頼料の先渡しだと言われたものである。
本来なら登録したばかりの新人冒険者に依頼などあるはずもないが、どうせならちゃんと報酬を払いたいということで一緒に冒険者ギルドに付いてきてくれ、手続きから依頼契約書の読み方、報酬の受け取り方までマロシュ老は付き合ってくれた。
「ほれ、わしの倅たち……レオシュの両親だが、今出稼ぎに行っておるじゃろう?アレらの出稼ぎ先まで護衛してもらうのに、ちょうど同じ方面へ行く商人たちに便乗させてもらったんじゃ。もう少ししたら帰って来るんじゃが、その時に手持ちがなかったら護衛してくれる冒険者を雇えんからのう……ついでに帰還護衛依頼を出しておこうと思っての」
「ほぇ~………」
依頼書を出すのに手数料がいるため、手持ちがなければ護衛なしで帰って来るか、行きにお願いしたようにこの町に来る商人の隊列に加えてもらわねばならないが、金が無ければ客人ではなく使用人扱いになるという。
今のところマロシュ老のところに息子夫婦から帰還のための護衛依頼を頼んでくれという言伝はないが、こうやって手数料をかけて先依頼を出しておけば万が一帰れないとなった時に事情を聴きに行ってくれるということだ。
「ギルドっちゅうのは依頼を受けて冒険者に預け、そして達成されたら報酬をもらえるっちゅう仕組みじゃからの。依頼主のある程度のお願いを融通してくれるんじゃ」
「ふぅん……」
「でも、すごいですねぇ!こんな少年……すいません、新人さんに指名依頼なんて!よっぽど腕がいいんでしょうねぇ……」
発行したばかりの冒険者登録カードをジロジロと見ながら、『受付嬢』のなんとかと紹介された女性がバカにしたような笑いを浮かべてバルトロメイとマロシュ老を見比べた。
バルトロメイはかつていた聖ガイ・トゥーオン神殿の僧兵神官たちがよく浮かべていたのとよく似たその笑いを見て、理由はわからないが自分に良い感情を抱いていないようだと判断する。
「ふんっ……よけいな詮索じゃわい。腕が良いとか悪いとかじゃありゃせんわ。さっさとその冒険者カードを寄こさんかっ!」
バッとカードを受付嬢からそのカードを奪い取り、その中に書かれている文字をチラリと見てからマロシュ老は本来の持ち主であるバルトロメイに渡してくれた。
「ほれ、ちゃんとお前の名前が書いてあるか、確認せぇよ」
「うん」
氏名 バルトロメイ・ルー
年齢 18
職業 なし
レベル 1
体力
腕力
防御力
魔力
未判明能力 あり
ちなみに『ルー』という氏は別になくてもよかったのだが、せっかくバルトバーシュとマクロメイという2人の師匠が『名前』をくれたので、自分の家名としてエクルー神官の『ルー』という最後の言葉をもらって登録した。
一応マロシュ老からは「ガンスという家名を使ってもよいぞ?」と提案もされたし、冒険者になる物の大半は平民でも資産も家名もないような者も多数いる。
だから最初は名前のみで、二つ名で呼ばれ始めるとそれをランク上昇による更新時に変更する者もいるらしい。
「まあ……うん。それでもいいんじゃが……」
マロシュ老はシュンとしていたが、どうせ『ガンス』という家名は息子にも孫にも受け継がれるし、男兄弟でも使っているのだから、まったく赤の他人であるバルトロメイが名乗る必要もないのだ。
だが本当の孫の1人のように思ってくれていたのだと思うと、ほんのりと胸の奥が暖かくなる気がする。
一瞬だけ『ガンス』を名乗っても良いかなと思わないでもなかったが、バルトロメイは自分が気付いていないだけで案外頑固なところがあったらしい。
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