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引き取る者。
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バルトロメイ専用の荷馬車は商人が引く物よりも小さく、確かにもう老年に至る運搬馬でも曳いて行けるだろう。
しかし──と、エピルスはふと首を傾げた。
「……おい?こいつら、運搬馬にしちゃぁ小さくねぇか?」
「あっ………」
しまったという顔で手綱を引いてきた男は首を竦めた。
「……いやぁ……こいつら、生まれつきそんなに身体がデカくなんなかったんだよ。だから軽い荷だけ運ばせていたんだが、あん時は無理させちまって……こん人のおかげで『役立たずは食っちまえ!』って領主さんが言い出す前にこうやってここに連れてこれたってもんで」
「ほう?」
領主だけでなく、この町の者たちのタンパク源のひとつとして馬肉を食するのは当たり前であったが、何やら思い入れがありそうに男は馬を愛おしそうに撫でる。
「あんまり仕事に向かねぇ奴だとわかってはいたんだが……たまたまこいつらは森ん中でそれぞれの母馬に産み落とされるところを見付けちまったんだ。そのまんま母馬はどっか行っちまって……変だと思ったんだが、可哀想で2匹とも連れ帰っちまった……乳をやったのも、世話したのも俺さぁ……」
使役する家畜を飼っている者は特別な感情を特定の家畜に注がないのが普通である。
しかしこの男は自分の拾い仔たちに肩入れし、働きの悪いこの2匹をどうにかしてこの町から連れ出せる方法に飛びついたらしい。
だいたい森で仔を産む母馬がいるなど、野馬の群れなどこの近辺で見かけたことはないのだが──
「そ、そんな大切な仔たちを……売ったりなんかしません!ちゃんと最後まで面倒見ますから!!」
「おっ、おう……あ、あんたなら何かそう言ってくれそうだと思ったんだ!……本当に、お願いするっ……しますよぅ……」
エピルスの困惑をよそに、バルトロメイと荷運び人の男は何やら感激の引き渡し式を行っていた。
それを見ていた何人かの女は──いや、こんな場面を見たところで心打たれるようなはずもない輩まで秘かに涙ぐみ、率先してバルトロメイへの餞別を積み込んでいる。
呆れるやら感心するやら荷物はどんどん地面から無くなり、件の冒険者は別れの挨拶を1人1人と交わした。
商隊とバルトロメイの荷馬車はゆっくりと動き出し、馬に慣れていると思えないのにバルトロメイは手綱をゆったりと持ったまま御者台に座っている。
引き渡してくれた男の言う通り馬たちは大人しく前を進む商隊の後を迷わずついていくが、『人を見る』と言われている知能のある動物にしては不思議なほどバルトロメイのことを馬鹿にしたりせずに、むしろ進んで懐いているように見えた。
これは一体どういうことかと首を捻りながらも、ビン町を拠点のひとつに持つ大商人のテイラー・ドファーニは他の者たちとあまり変わらぬように見えて、乗り心地はだいぶ快適な馬車に揺られている。
荷馬車と商人たち用の馬車と交互になっており、殿はバルトロメイだが、両側にはしっかりと護衛がいた。
それらは元々ドニーファ商会に正規雇用されている者と冒険者の混合ではあったが、非雇用者である冒険者たちは無事に目的地まで依頼主を送り届ければ、引退後の優良就職先を確保できるのだから皆真面目に勤める。
正規雇用されている方も引退冒険者がほとんどで、今一緒にいる現役たちと同僚になる可能性があるのだから、無理に先輩面をして雰囲気を悪くするのは自分の生活が危うくなることを理解して和気あいあいとやっていた。
しかし──と、エピルスはふと首を傾げた。
「……おい?こいつら、運搬馬にしちゃぁ小さくねぇか?」
「あっ………」
しまったという顔で手綱を引いてきた男は首を竦めた。
「……いやぁ……こいつら、生まれつきそんなに身体がデカくなんなかったんだよ。だから軽い荷だけ運ばせていたんだが、あん時は無理させちまって……こん人のおかげで『役立たずは食っちまえ!』って領主さんが言い出す前にこうやってここに連れてこれたってもんで」
「ほう?」
領主だけでなく、この町の者たちのタンパク源のひとつとして馬肉を食するのは当たり前であったが、何やら思い入れがありそうに男は馬を愛おしそうに撫でる。
「あんまり仕事に向かねぇ奴だとわかってはいたんだが……たまたまこいつらは森ん中でそれぞれの母馬に産み落とされるところを見付けちまったんだ。そのまんま母馬はどっか行っちまって……変だと思ったんだが、可哀想で2匹とも連れ帰っちまった……乳をやったのも、世話したのも俺さぁ……」
使役する家畜を飼っている者は特別な感情を特定の家畜に注がないのが普通である。
しかしこの男は自分の拾い仔たちに肩入れし、働きの悪いこの2匹をどうにかしてこの町から連れ出せる方法に飛びついたらしい。
だいたい森で仔を産む母馬がいるなど、野馬の群れなどこの近辺で見かけたことはないのだが──
「そ、そんな大切な仔たちを……売ったりなんかしません!ちゃんと最後まで面倒見ますから!!」
「おっ、おう……あ、あんたなら何かそう言ってくれそうだと思ったんだ!……本当に、お願いするっ……しますよぅ……」
エピルスの困惑をよそに、バルトロメイと荷運び人の男は何やら感激の引き渡し式を行っていた。
それを見ていた何人かの女は──いや、こんな場面を見たところで心打たれるようなはずもない輩まで秘かに涙ぐみ、率先してバルトロメイへの餞別を積み込んでいる。
呆れるやら感心するやら荷物はどんどん地面から無くなり、件の冒険者は別れの挨拶を1人1人と交わした。
商隊とバルトロメイの荷馬車はゆっくりと動き出し、馬に慣れていると思えないのにバルトロメイは手綱をゆったりと持ったまま御者台に座っている。
引き渡してくれた男の言う通り馬たちは大人しく前を進む商隊の後を迷わずついていくが、『人を見る』と言われている知能のある動物にしては不思議なほどバルトロメイのことを馬鹿にしたりせずに、むしろ進んで懐いているように見えた。
これは一体どういうことかと首を捻りながらも、ビン町を拠点のひとつに持つ大商人のテイラー・ドファーニは他の者たちとあまり変わらぬように見えて、乗り心地はだいぶ快適な馬車に揺られている。
荷馬車と商人たち用の馬車と交互になっており、殿はバルトロメイだが、両側にはしっかりと護衛がいた。
それらは元々ドニーファ商会に正規雇用されている者と冒険者の混合ではあったが、非雇用者である冒険者たちは無事に目的地まで依頼主を送り届ければ、引退後の優良就職先を確保できるのだから皆真面目に勤める。
正規雇用されている方も引退冒険者がほとんどで、今一緒にいる現役たちと同僚になる可能性があるのだから、無理に先輩面をして雰囲気を悪くするのは自分の生活が危うくなることを理解して和気あいあいとやっていた。
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