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補償される者。
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焚火のおかげか夜明け前の数時間はいつもより見張りを減らしてもナニも現れず、代わりに騒ぎの生花野生動物も狩れなかったため、ドファーニは自分たちが運んでいる食品のいくつかを冒険者たちに特別手当として振る舞う。
たいてい冒険者が依頼を受けている最中に起こる被害については本人たちの責任になるのだが、ドファーニは同行している部下たちも使って、直接護衛している者も冒険者も関係なく被害の大小を聞き取り、前夜の被害についてはすべて補償してくれることとなった。
もっともその約束が果たされるには、次に到着する町に着くまで無事に護衛しきらねばならないが、武器や防具などに関しては護衛たちの予備の物を貸与してくれるという話であり、馬を失ってしまったのはともかく護衛には問題がない。
そして交代で立っていた見張りについて、馬がいなくなった者が夜に行う取り決めが新たに追加され、その者たちは日中荷馬車の中で休みながら進むこととし、逆に日中は護衛の任についていた者がしっかり休めそうだとあちこちで賑やかだった。
シェイジンを中心とした殿組で馬を失った者はいなかったが、今回の水棲魔物の襲撃によって穴の開いた護衛を補う形で少し人数が減り、特にバルトロメイと共にかなり大きな個体と対峙した冒険者はドファーニたちを守る中心部隊の方へ移動することになった。
自分の武器が折れる寸前となってもバルトロメイを守ろうとしたことと、混乱していたあの状況で冷静に水棲魔物に向かって魔物除けの松明に対する反応を観察できたことで、少しでも情報が欲しい雇い主の意向を汲まれた編成である。
それはそれで仕方のないことだが、後ろの守りが薄くなることをシェイジンは危ぶんだ。
「だいたいバルトはまだ戦力には程遠いし、第一他の奴らと違って荷馬車を動かさにゃならんし……」
ぶつくさと文句を言う師匠を見て、ラジムはバルトロメイに「アレを言っていいか?」と目で聞くが、残念ながら合図を送られた方にはそんな心の声をキャッチするだけの能力がなく、キョトンと見つめ返した。
「……あのさ、師匠」
「うん?何だ?」
まだ何か口の中で言っていたシェイジンに身体を寄せて、ラジムは小声で囁いた。
いつも大声で溌剌と会話をする弟子が表情を少し硬くして声を潜めたのに気が付くと、シェイジンはようやくこちらへと意識を向ける。
「そのことだけど。たぶん、大丈夫。後で話すけど」
「お、おう…?」
怪訝そうに返事をする師匠に向かってうんと力強く頷いたラジムは、他の冒険者たちよりもかなり量の少ない量の食べ物をようやく食べ終わったバルトロメイを誘って、最後に出発させる荷馬車にエンとヤシャ、そして自分の馬を繋ぐために走って戻った。
たいてい冒険者が依頼を受けている最中に起こる被害については本人たちの責任になるのだが、ドファーニは同行している部下たちも使って、直接護衛している者も冒険者も関係なく被害の大小を聞き取り、前夜の被害についてはすべて補償してくれることとなった。
もっともその約束が果たされるには、次に到着する町に着くまで無事に護衛しきらねばならないが、武器や防具などに関しては護衛たちの予備の物を貸与してくれるという話であり、馬を失ってしまったのはともかく護衛には問題がない。
そして交代で立っていた見張りについて、馬がいなくなった者が夜に行う取り決めが新たに追加され、その者たちは日中荷馬車の中で休みながら進むこととし、逆に日中は護衛の任についていた者がしっかり休めそうだとあちこちで賑やかだった。
シェイジンを中心とした殿組で馬を失った者はいなかったが、今回の水棲魔物の襲撃によって穴の開いた護衛を補う形で少し人数が減り、特にバルトロメイと共にかなり大きな個体と対峙した冒険者はドファーニたちを守る中心部隊の方へ移動することになった。
自分の武器が折れる寸前となってもバルトロメイを守ろうとしたことと、混乱していたあの状況で冷静に水棲魔物に向かって魔物除けの松明に対する反応を観察できたことで、少しでも情報が欲しい雇い主の意向を汲まれた編成である。
それはそれで仕方のないことだが、後ろの守りが薄くなることをシェイジンは危ぶんだ。
「だいたいバルトはまだ戦力には程遠いし、第一他の奴らと違って荷馬車を動かさにゃならんし……」
ぶつくさと文句を言う師匠を見て、ラジムはバルトロメイに「アレを言っていいか?」と目で聞くが、残念ながら合図を送られた方にはそんな心の声をキャッチするだけの能力がなく、キョトンと見つめ返した。
「……あのさ、師匠」
「うん?何だ?」
まだ何か口の中で言っていたシェイジンに身体を寄せて、ラジムは小声で囁いた。
いつも大声で溌剌と会話をする弟子が表情を少し硬くして声を潜めたのに気が付くと、シェイジンはようやくこちらへと意識を向ける。
「そのことだけど。たぶん、大丈夫。後で話すけど」
「お、おう…?」
怪訝そうに返事をする師匠に向かってうんと力強く頷いたラジムは、他の冒険者たちよりもかなり量の少ない量の食べ物をようやく食べ終わったバルトロメイを誘って、最後に出発させる荷馬車にエンとヤシャ、そして自分の馬を繋ぐために走って戻った。
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