間の悪い幸運勇者

察する者。

その噂の『ヨボヨボのジイサンたち』であるが、ようやく予定の半分ほどになった旅程中でも結構楽しく過ごしていた。
ある者はバルトロメイとラジムそれぞれの武器を駆使した戦い方をレクチャーし、ある者は2人が苦手とする分野から攻撃された時の防御方法を教え、ある者は単独野営の時に施しておく罠や簡易爆弾の作り方を見せる。
組み手の相手をし、娯楽である盤遊びボードゲームや札遊びカードゲームで戦術がいかに大事であるかを悟らせ、その対価として若者2人に馬の手入れや肩揉みといった労働を課した。
それはさながら『可愛い甥っ子を構い倒す年配者たち』に見えなくもなかったが、前方に固まる若い冒険者たちが考えるよりも遥かに強靭で狡猾、経験豊富な先達として隙を見せているに過ぎない。
彼らが何かしら企んでいることはわかっていたが詳しく内容を知ろうとは思わず、柔軟に対処する心積りでいればよいと思って過ごしているだけだ。
「……師匠たち、なぁんか隠してんだよなぁ～……」
「隠す？」
バルトロメイの荷馬車の中に設えたいつもの寝床でラジムがむぅと唇を尖らせながら呟くと、ウトウトしかけていたバルトロメイがそちらに顔を向ける。
「ああ……俺とバルトは夜はなるたけ荷馬車で寝ろって言ってくれてるじゃん？でもさ……」
「でも？」
「シッ………」
興味をそそられたバルトロメイの目はすっかり醒ましてゴロリと寝そべり、すっかり話し込む体勢になったが、ラジムは何か聞き取ったのか、自分の毛布を引き上げると同時にバルトロメイの頭も寝具に押さえつける。
次の瞬間に誰かが荷馬車の幌をそっとめくって中を覗き、ジロリと様子を窺ってからそっとまた幌を閉じて遠ざかった。
「あれ……って……」
「ああ、今夜の見回り当番のガジさんだろ……何かここんとこ毎晩、ああやって見回りの人がこの荷馬車を見に来るんだ」
「そうなの？」
「お前はまだまだ体力が足りねぇからな。もう昼間に扱かれてぐっすりだろ？」
クックッと声を抑えてラジムは笑ってバルトロメイの頭をガシガシと乱暴に撫でたが、ふっと真顔に戻る。
「まあ俺もまだまだ未熟だからよ、こうやっていろんな人に稽古つけてもらえるのはありがたいんだ。俺はまだＥランクだから、本当なら今回この護衛依頼は単独じゃ無理だったんだよ」
「あ、そうなの？」
「おう。でも師匠が『ドファーニさんは将来有望な冒険者には特別目をかけてくれるから』って俺も一緒でいいなら請け負いたいって申し出てくれてさ……おかげで俺だけじゃ出会うことすらできなかったはずのＣクラスやＤクラスの冒険者たちにいろいろ教えてもらうことまでできてんだ……本来なら1人の師匠に弟子入りして独り立ちするってのにさ」
「へぇ……」
特に目指していたわけでもなく、成り行きで冒険者となったバルトロメイにはピンとこない。