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儲けようとする者。
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一方で良い顔をしなかったのは、バルトロメイに二束三文でガラクタを押し付けようとした防具屋だった。
その店がそうだったとはすっかり忘れていたバルトロメイが何気なく店の扉を開けると、一瞬浮かべた愛想笑いをスッと引っ込め、店主はジロジロと頭の先からつま先まで値踏みする目で睨みつける。
軽装とはいえ明らかにこの村では手に入らない革鎧。
銘はわからないが少し異様な雰囲気を醸し出す長剣。
アレはここら辺では見たことのない魔獣の皮で作られたブーツではないか──
物を見る目を持たない者に対して無価値な物を法外に押し付ける才能のある店主は、確かに『見る目』を持っていた。
それに比べて、何の気負いもなく身につけるバルトロメイは間違いなく物の価値──『人間社会』における質の高低などには目もくれない『愚か者』であるのが一目で判る。
価値を見出すのならばあんなにドロドロにしたままにせず、きちんと手入れをして荷物の奥にしまいこみ、このような場所に来るのならばもっと安物を着込んでおくべきだ。
そうすれば何か困った時にこの武器屋などで売り払って路銀にし、店主はその防具を単に見せびらかすために着るような別の愚か者に何かしら『言い伝え』を付加価値として捏造すれば高く売れて、お互いのためになるではないか。
それはかなり身勝手な考え方である。
にちゃりと舌で唇を舐めながら、ああいった物を着用するのではなく飾ったり財産としてしまい込むようなこの辺りの田舎貴族を頭の中に思い浮かべつつ、どうやってあの間抜けそうな冒険者から革鎧とブーツを巻き上げようかと算段した。
下心を込めた目付きでジロジロと見られるのにも気付かないのか、バルトロメイは防具を眺めていた。
特に気になるものがあったというわけではなく、単に扉があり看板が掛かっていたから入ってみた──それだけである。
「特にいらないや」
ポツリと呟いて、もう用はないとばかりにさっさと踵を返した。
通る道すがら荷物は増えてきたが、今は荷馬車があり、それに十分積める。
もしくは誰か必要な人と出会い、自分の持っている物を譲って何故かさらに違う物をもらうこともあるが、亜空間収納袋のような物を購入してまで身につけておかねばならないような高級な物ではない。
おそらくはドファーニから贈られた革鎧とブーツが1番高いものかもしれないが、それらを手放すことなど考えもしなかった。
だから違うところに行こう。
そう思ったバルトロメイの動きを、慌てた声が遮った。
その店がそうだったとはすっかり忘れていたバルトロメイが何気なく店の扉を開けると、一瞬浮かべた愛想笑いをスッと引っ込め、店主はジロジロと頭の先からつま先まで値踏みする目で睨みつける。
軽装とはいえ明らかにこの村では手に入らない革鎧。
銘はわからないが少し異様な雰囲気を醸し出す長剣。
アレはここら辺では見たことのない魔獣の皮で作られたブーツではないか──
物を見る目を持たない者に対して無価値な物を法外に押し付ける才能のある店主は、確かに『見る目』を持っていた。
それに比べて、何の気負いもなく身につけるバルトロメイは間違いなく物の価値──『人間社会』における質の高低などには目もくれない『愚か者』であるのが一目で判る。
価値を見出すのならばあんなにドロドロにしたままにせず、きちんと手入れをして荷物の奥にしまいこみ、このような場所に来るのならばもっと安物を着込んでおくべきだ。
そうすれば何か困った時にこの武器屋などで売り払って路銀にし、店主はその防具を単に見せびらかすために着るような別の愚か者に何かしら『言い伝え』を付加価値として捏造すれば高く売れて、お互いのためになるではないか。
それはかなり身勝手な考え方である。
にちゃりと舌で唇を舐めながら、ああいった物を着用するのではなく飾ったり財産としてしまい込むようなこの辺りの田舎貴族を頭の中に思い浮かべつつ、どうやってあの間抜けそうな冒険者から革鎧とブーツを巻き上げようかと算段した。
下心を込めた目付きでジロジロと見られるのにも気付かないのか、バルトロメイは防具を眺めていた。
特に気になるものがあったというわけではなく、単に扉があり看板が掛かっていたから入ってみた──それだけである。
「特にいらないや」
ポツリと呟いて、もう用はないとばかりにさっさと踵を返した。
通る道すがら荷物は増えてきたが、今は荷馬車があり、それに十分積める。
もしくは誰か必要な人と出会い、自分の持っている物を譲って何故かさらに違う物をもらうこともあるが、亜空間収納袋のような物を購入してまで身につけておかねばならないような高級な物ではない。
おそらくはドファーニから贈られた革鎧とブーツが1番高いものかもしれないが、それらを手放すことなど考えもしなかった。
だから違うところに行こう。
そう思ったバルトロメイの動きを、慌てた声が遮った。
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