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反対

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一応ルエナは王太子の正式な婚約者であるため、王城へ行く際には王家より女性騎士が派遣されるが、日常ではそこまで配慮されない。
ましてや王立貴族学園にも少なくない護衛騎士が派遣されているため、たとえ女性であったとしても学園内を騎士姿の者が闊歩すれば物々しくなりすぎてしまう。
それは元々この学園の成り立ち自体が貴族令息たちを平等に教育する機関であり、令嬢を受け入れることは想定されていなかった時代の名残とも言えた。
それ故に令嬢だからといって侍女を引き連れて歩くことは「規律にない」という理由で拒否され続けたため、その姿に扮した近衛をそばに置くわけにもいかない。
それは創立当時から変わらないことを誇りとしているため、時代によっては王家の者が複数入園したとて差別はされず、そのため護衛の代わりにわざわざ同じ時期に学園に所属する貴族令息の中から『学園内側近』という呼び名をつけて侍らせたのである。
その立ち位置に理由をつけるとすれば、単純に『学園を卒業した後にも、王太子または王子のために王宮で勤めるだけの能力があるか』という判断材料という意味しかないのだが、それがある種の特権と見られてしまうのは仕方がなかった。

しかしルエナのような極端な令嬢ではないにしても、やはりあまり下の階級の者と交わらない令嬢はこれまでもいたし、そのために悪意ある集団がひとりで行動する令嬢を陥れたということはなかったわけではない。
死亡事故などはさすがに起きてはいないが、後遺症が心配されるような大怪我をさせられることも稀にある。
多々あるわけではないのは、さすがにそこまで力の差があるわけでない令嬢同士では、後ろから不意打ちにぶつかったとしても、礼儀作法やダンスで知らずに鍛えられた体幹があって躓いただけで加害者が逃げてしまうためだ。
だからよほどのことが起きた時だけ女性騎士や戦闘技術のある侍女を学園内でもつけたいという声が上がるのだが、それがまかり通らないのは経済力や地位の違いや、逆にそれらを見せつけたい貴族の見栄に子供たちが振り回されることはあってはならないという学園内職員たちの反対意見が支持されてしまう。
そのため女性騎士が学園の護衛として配置されることは今までなかったが、それでは前世的だとリオンは反対していた。


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