すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、勇者のひとりに会う。

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私はその後を追うことはせず、いつの間にかバッグから離れていた少年の手を握り、目的地へ向かう。
最初は訳が分からなかったらしいが、私が進む方角を確認してギョッと身体を竦めると、今度は握られた手を放そうとめちゃくちゃに暴れ出した。
「ヤッ、ヤッ、ヤダァ───ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!もうしない!絶対しないからぁっ!!」
歳の頃は10歳か11歳か──自分が何をしていたのか、させられていたのか、ちゃんと理解しているようだ。
「うん。しないね。だからあの男と同じように手が離れた……んだけど、別に自衛団に渡すつもりじゃないよ?」
「ふっ…えぇ……うえぇ……ほ、ほん、と……か……で、すか……?」
身体強化及び貼り付きの術で繋いだ手を持ち上げると、まだ成長しきっていない少年の身体はぶらんと持ち上がる。
「ね?私から逃げられっこないのは、わかるだろう?だから大人しく付いてきてくれないかな?できれば君の身分をもらい受けたいんだ。両親は?」
「……い、いない……」
グズグズと涙と鼻水を垂らしながら、少年は思った通りの答えを返してきた。
「だよね。えぇと……他にも君みたいな子たちはいるの?あの男のところに」
「……いる。俺が一番上で、他に8歳の双子の男と女のきょうだいと、5歳と3歳の女の子……お、男は盗みしかできないけど、女は成長したら客を取れるからいい買い物した……って……」
「あぁん?」
自分でも思っていなかったほどの低い声が出た。
「買い物ぉ?」
「ヒィッ………」
ぶら下がったままの少年が器用に身体を竦めたが、私はそれに構わず抱きかかえると、先ほどまでツインテール少女から取っていた距離を詰めるようにさっさと冒険者ギルドに向かった。


まるで道場破りの如く私は冒険者ギルドに乗り込み、身分証を叩きつけると同時に依頼の出し方を受付嬢に聞いていた。
「そ、そういった依頼は……う、う、う、う、けられれれ………」
「あぁん?!」
またしても低い声が出た。
「そそそそそ、そういう……お、お、親無し子を、保護するのが、こここ孤児院で……そ、そこから出た子供のことままままではっ……」
孤児院はわかる。
わかるが──
「孤児院ならば、人身売買の温床になっても仕方ない?買われた子供は『自分の意志で出て行ったんだから、行方を調べる必要はない』と?」
「おいおいおい……いきなりヨソモンが何だぁ?」
「あぁん?!」
私は声のした方をギロリと睨みつけ、それが誰かと確認する前に怒鳴りつけた。
「余所者だからこそ、この状態がおかしいとわかるんだよ!ボケッ!!2歳か3歳の赤ん坊同然の子供が、寝床と飯と着替えを捨てて、自主的に浮浪児になる?バッカじゃねぇの?!この子が買われたのがいくつか知ってんのか?!少なくともこの子が孤児院を出たのが去年とか今年とかじゃねぇよ!少なくともこの子も3歳の頃には『買われて』、5歳ぐらいから『仕事』をさせられていたんだよ!痛めつけたお前らが子供の顔も覚えてないのか?!」
「エッ……あっ、ウゥ……そ、そんなはず、は……」
「……俺、このオッサンに初めて殴られたの、7歳の時だよ。俺の妹が誰かに売られるのが嫌で元いた孤児院に入って連れて出てきたところを見つかって……こいつが教えてくれた『7歳で泥棒かよ、生きていても碌なもんにならねぇだろうな』って。忘れねぇよ……そん時に手当てしてくれた女の先生がボコボコに蹴られているのを止めてくれて、身分証の見方と俺の名前の書き方教えてくれたんだ……そ、その後……俺の親父だってあいつが出てきやがって……」
身分証には不思議な術が施されており、産まれた時に赤ん坊の手のひらと足の裏を押しつけるとその生命反応が刻まれ、死ぬと赤く染まる仕様になっている。
特に孤児院などに預けられた子供たちはひとりずつその記録が保管され、いずれ院を出る時に返されるのだ。
それは孤児院にとって国から出してもらえる支援金に直結するため、子供を売っても10歳まで保管されるらしい。
「……さっき言ってた3歳の女の子、って」
「……妹。俺を捨てた親が、同じ孤児院に俺の妹も捨てやがった。でも俺もあいつもあの男が俺らの親だって言われて……親じゃねぇのに!!しかもあいつが、俺に言いやがった……」
少年はボソボソと話していたが、静まり返ったギルドの中に叫んだ言葉は、大人たちの怒りを込めた静寂に変えるのに十分だった。
「あいつ……あいつは……俺の妹が、俺が殴られた7歳になったら、俺の目の前でお、男を教えてやる……って……犯してやるって……ついでに俺にも妹をらせて『近親相姦』って罪になるから、逃げられねぇぞって……それから妹をいろんな男に売るんだって!おま…お前らみたいな!自衛団が女を欲しがっているから、他の捨てられっ子と同じように売るんだって!!おま、お前らが買ってる女は……女の子はっ!俺らのっ!仲間だったんだよっ!!」
ざわり。
目の前に出てきたへらへら笑っていた男が、気配を変えた。
「お前……本当か?」
「嘘ついてどうするんだよ?!前に同じこと言ったのに、お前のとこの下っ端、何て言ったか知ってるのか?!知らねぇよなぁ!お前がいない時にあいつら、俺をボコって言いやがったんだから!!『それがどうした?あんなガキ、俺らの性処理以外に稼げねえんだから、ただ股開いてりゃいいんだよ!お前も男娼にしてやろうか?』ってなぁ!」
「…………」
「ああ、犯られたよ?感謝した方がいいのか?そいつらに銅貨3枚恵んでもらって、それで女先生のとこで治療してもらえたからよぉ?顔までは覚えてないけど、5人か6人はいたよなぁ‥‥…アアアアアアアアア───ッ!!」
その時のことを思い出したのだろう──少年はいきなり私に縋りつき、大声で泣き出した。

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