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賢者、勇者のひとりに会う。
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それにしても賑やかだ。
いつの間にかザイは立派に『町』の中でも大きい部類に発展したようで、大きな通りのに建つ建物には様々な商品を見せ窓に並べたり、作業場を覗けるようにしたり、どういうギルドなのかわかる看板がぶら下がっているのに気を取られていると、先ほどの少女より幼い少年が私の横を通り過ぎかけた。
「っう?!」
おそらく暢気そうな旅人だと侮ってきたのだろう──少年の手が私の腰バックに貼りついていた。
「……ああ、それね?万が一があるといけないから、盗難防止の術が込められているんだよね。『ごめんなさい。もうしません』って言えば剥がれるんだけど、それが心から反省した言葉じゃないと、ず~っとそのままなんだよねぇ」
「なっ…ちっくしょぉ……」
私がにっこり笑って告げると、反省するどころかギロリと睨まれる。
「ど、どうしましたっ?この子が何かっ?!」
側にいた父親らしき中年が近付いてきてペコペコ頭を下げながら、その子を引き剥がそうとし──同じように腰バッグに手が貼り付いた。
「う~ん……困りましたねぇ。この子がしようとした『何か』を、保護者であるあなたもしようとした……と。私がこのバッグに術を掛けたわけじゃないんで、解呪するならケイミ村まで行かないといけないんですよねぇ……」
「え、ケイミィ?!あ……あんなとこ……行くのに3日もかかる……」
「あー……まぁ、そうでしょうねぇ」
私はリムに教えてもらった縮地術で人目に付かないようにしながらサクサク進んだが、確かに普通の人の足ならそれぐらいかかるだろう。
しかも今の彼は子供に合わせるように腰をかがめ、私に向かい合う姿勢だから、私が前に進むと彼は後ろ歩きをしないといけない。
「それにこの愉快な3人組を馬車で乗せてくれる人もいなさそうですしねぇ。たぶん冒険者ギルドに行けば、解呪できる人もいるかもしれないんで、一緒に行きましょう?」
「えっ……」
サァッと男の顔が青褪めたところを見ると、おそらく冒険者ギルドでは町の自衛を請け負う役目もあるのを知っているのだろう。
私も以前の人生の中で「護衛の仕事が出るまで、短期間で自衛団の手伝いしないと……」と繋ぎでやったこともあった。
特に大きな商団が遠い領地からやってきて露店を広げると、見知らぬ人たちに対して乱暴を働いたり、金銭を巻き上げようとするならず者が必ず湧くのだが──あれはいったいどういう法則なんだろう?
「そんなわけなので、さあ行きましょう!」
私が元気にそう言って、先ほどまでのゆったりした歩みを止めてスタスタ歩きだすと、男も少年も血の気が引いた顔で何とか私を引き留めようと足を踏ん張った。
残念ながら身体強化の魔術も使える私にとって意味はなく、ついでに彼らの足もほんのわずかに浮かせて抵抗を失くしてやると、面白いぐらいにスルスルと奥の建物に近付いていく。
「……君、この人の子供じゃないよね?」
「えっ?!」
キョロキョロと少年が辺りを見回し、それから私の顔を見上げた。
口の端だけで笑うと、サッと視線を男の方に泳がせてから顔を背ける。
「私ねぇ、お使いの子がほしいんだけど、この男と一緒に自衛団に連れて行かれるのと、どっちがいい?」
「いっ、嫌だ!!自衛団は嫌だっ!!」
うん、知ってる。
自衛団は『自衛』とついているが、自分たちの身を護るわけではなく、見せしめのためならばと、身寄りのない子供でも『犯罪者』として人前で酷く暴力を振るう輩もいると想像がついた。
「そっかぁ~、嫌かぁ~。じゃあ、君はこの仕事、初めてじゃないんだぁ~」
「おっ、俺は違う!!いつもはコイツひとりでやらせるんだっ!俺は初めてなんだっ!み、見逃してくれぇっ?!」
私がさっきまで少年にだけ向かって言った言葉とは別に、わざと男にも聞こえる声でそう言うと、見苦しい勢いで男が初犯を主張した。
「あっ、そう~」
そう言うとパッと男の手が離れ、踏ん張っていた男の身体がゴロンと後ろに転がり、慌てて人混みに紛れていく。
いつの間にかザイは立派に『町』の中でも大きい部類に発展したようで、大きな通りのに建つ建物には様々な商品を見せ窓に並べたり、作業場を覗けるようにしたり、どういうギルドなのかわかる看板がぶら下がっているのに気を取られていると、先ほどの少女より幼い少年が私の横を通り過ぎかけた。
「っう?!」
おそらく暢気そうな旅人だと侮ってきたのだろう──少年の手が私の腰バックに貼りついていた。
「……ああ、それね?万が一があるといけないから、盗難防止の術が込められているんだよね。『ごめんなさい。もうしません』って言えば剥がれるんだけど、それが心から反省した言葉じゃないと、ず~っとそのままなんだよねぇ」
「なっ…ちっくしょぉ……」
私がにっこり笑って告げると、反省するどころかギロリと睨まれる。
「ど、どうしましたっ?この子が何かっ?!」
側にいた父親らしき中年が近付いてきてペコペコ頭を下げながら、その子を引き剥がそうとし──同じように腰バッグに手が貼り付いた。
「う~ん……困りましたねぇ。この子がしようとした『何か』を、保護者であるあなたもしようとした……と。私がこのバッグに術を掛けたわけじゃないんで、解呪するならケイミ村まで行かないといけないんですよねぇ……」
「え、ケイミィ?!あ……あんなとこ……行くのに3日もかかる……」
「あー……まぁ、そうでしょうねぇ」
私はリムに教えてもらった縮地術で人目に付かないようにしながらサクサク進んだが、確かに普通の人の足ならそれぐらいかかるだろう。
しかも今の彼は子供に合わせるように腰をかがめ、私に向かい合う姿勢だから、私が前に進むと彼は後ろ歩きをしないといけない。
「それにこの愉快な3人組を馬車で乗せてくれる人もいなさそうですしねぇ。たぶん冒険者ギルドに行けば、解呪できる人もいるかもしれないんで、一緒に行きましょう?」
「えっ……」
サァッと男の顔が青褪めたところを見ると、おそらく冒険者ギルドでは町の自衛を請け負う役目もあるのを知っているのだろう。
私も以前の人生の中で「護衛の仕事が出るまで、短期間で自衛団の手伝いしないと……」と繋ぎでやったこともあった。
特に大きな商団が遠い領地からやってきて露店を広げると、見知らぬ人たちに対して乱暴を働いたり、金銭を巻き上げようとするならず者が必ず湧くのだが──あれはいったいどういう法則なんだろう?
「そんなわけなので、さあ行きましょう!」
私が元気にそう言って、先ほどまでのゆったりした歩みを止めてスタスタ歩きだすと、男も少年も血の気が引いた顔で何とか私を引き留めようと足を踏ん張った。
残念ながら身体強化の魔術も使える私にとって意味はなく、ついでに彼らの足もほんのわずかに浮かせて抵抗を失くしてやると、面白いぐらいにスルスルと奥の建物に近付いていく。
「……君、この人の子供じゃないよね?」
「えっ?!」
キョロキョロと少年が辺りを見回し、それから私の顔を見上げた。
口の端だけで笑うと、サッと視線を男の方に泳がせてから顔を背ける。
「私ねぇ、お使いの子がほしいんだけど、この男と一緒に自衛団に連れて行かれるのと、どっちがいい?」
「いっ、嫌だ!!自衛団は嫌だっ!!」
うん、知ってる。
自衛団は『自衛』とついているが、自分たちの身を護るわけではなく、見せしめのためならばと、身寄りのない子供でも『犯罪者』として人前で酷く暴力を振るう輩もいると想像がついた。
「そっかぁ~、嫌かぁ~。じゃあ、君はこの仕事、初めてじゃないんだぁ~」
「おっ、俺は違う!!いつもはコイツひとりでやらせるんだっ!俺は初めてなんだっ!み、見逃してくれぇっ?!」
私がさっきまで少年にだけ向かって言った言葉とは別に、わざと男にも聞こえる声でそう言うと、見苦しい勢いで男が初犯を主張した。
「あっ、そう~」
そう言うとパッと男の手が離れ、踏ん張っていた男の身体がゴロンと後ろに転がり、慌てて人混みに紛れていく。
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