すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

文字の大きさ
40 / 248
賢者、王都に旅立つ。

7

しおりを挟む
けれど──そうすると──もしかしたら──
「あっ!も、もちろんパトリック賢者様は別ですよ?!というか、もうすでに私のことは『女』どころか『子供』か『家族』ぐらいの認識でしょう?完全に意識されないというのは家族以外にはめったにないので、とても安心です」
ニヘッと笑うその顔はとても幼く、いつもどこかしら緊張していたのだと、今更ながらに気が付いた。
「……そんなに?」
「そうですよぉ。まぁ……ティグリスマスターもそういう意味ではパトリック賢者様と同類ですね。あの人は子供好きなんですよ、本当は。本人は絶対認めないと思いますけど!気負い過ぎてリィ君が7歳だとか関係なく痛めつけたって頭下げてましたけど……あ~…犯罪者にもかなり厳しい人だから、そこらへんの勘違いとか思い込みとかもあったんだと思いますけど」
「だとしてもねぇ……ちゃんと人の話を聞かないと」
町を出るときにリアムの妹を抱っこし、大きく手を振って見送ってくれたティグリスのだらしなく蕩けた笑顔を思い出す。
誠心誠意謝罪し、頭を擦りむかんばかりに土下座したティグリスを、リアムは『養父』として受け入れることを決めた。
そこにはもちろん妹ごと家族にしてくれるという条件も効いたに違いないが、他に一緒に住んでいた子供たちも丸ごと引き取ろうとしていた姿勢に、自分ひとりが反対していては話が進まないと折れたところもある。
「そこはまあ……『反省した』って言ってました。あと、周りに張り合って年齢に見合わないことも、もうしないって。そうですよねぇ……いくら偉い人になったからといって、それですぐ何十年も他の組織のトップにいたおじいちゃんたちに敵うわけないのに」
ふっと鼻で笑って、ミウは肩をすくめる。
「本当にパトリック賢者様のように様々に旅をして、いろんなものを見ているからこその重たい意見と、偉い人の下で動かずに昇進しただけの人の理想論込みの言葉じゃ、響き方が違います」
「……ミウの言葉の方が重い」
家族から異端として扱われ、冒険者としても色物に見られることが多かったであろうミウの経験から発せられる言葉は、聞く者が聞けば耳が痛いことばかりだ。
私自身が話すことにそんなに重みはないと思うが、それでも何らかの教訓を得たり気付くことがあれば、確かに『賢者』という称号を得る身としては嬉しい。
「リィ君がパトリック賢者様を『先生』と呼ぶのは、単に年長者だからじゃありません。学ぶべき師として尊敬するからこそ…です」
「……そう、なのかな……」
そう言い切るには、『私』という魂が重ねてきた転生の時間たちはあまりにも少ないような気がする。
むしろ今までになく『冒険者』としては長寿になりつつある今世にこそ、私自身が学ぶべきことがたくさんある気がするのだが──
「あっ!あそこ!!あそこが野営にいいんですよ!今日はここまでにしませんかっ?!」
黙り込んでしまった私を気遣うようにか、ちょうどミウがザイの町に向かう時に使ったという野営地を見つけ、明るく声を掛けてくれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

処理中です...