156 / 235
賢者、『魔王(偽)』を討つ。
9
しおりを挟む
とはいえ、文言的には円の魔法陣と変わらない。
ただしどう頑張っても円の形にすることはできず、歪であっても四方を取り囲むことしかできないのが難点だった。
だがこの場合は何の問題もなく、すでに勇者たちの手によって魔石やら討伐部位やらを収穫し終わった魔物や魔獣の死体を囲む位置を確認し、まずは根元から固めることとする。
「もう地面に沁み込んでしまった血や腐液は仕方ないが、これ以上の被害を食い止めよう」
「あ、それは大丈夫。どっちにしてもここら辺は魔素が強いから、魔香の染みた体液ぐらいじゃ影響はないはずだから」
ラダが私の懸念を払しょくしてくれる。
どうやら地面に沁み込んでしまった分は結局循環し、魔素毒を含んだ植物が何かしら生えるだろうが、このあたりの植物生態を狂わせるほどではないらしい。
「むしろ狂ったら、どんな物が生えるのか知りたいくらいだけどね」
さすが薬師はそういった研究調査に目がないらしい。
「……後で始末がついたら、一緒に探しますよ」
「わっ!さっすが賢者様。助かるわ!こいつらったら、何見ても『何かの葉っぱ』としかわからないんだもの。いくら教えても教えがいがないったら」
「ラダの教え方が雑なんだよ!『先っぽがギザギザ~』とか『ツルッとしてる』とか!」
確かにその言い方ではわからないが、まあそれは後で考えればいい。
とりあえず私は幹の上の方──私の目線辺りに同じく四角い布の魔法陣を貼り付けていった。
「よし……その前に、ミウ、この死体のだいたい真ん中ぐらいにこの布を巻きつけた矢を入れれるかな?」
「まっかせてください!」
やることができたことで、魔石回収などに後れを取っていたミウが張り切った。
さりげない動作で特にキッチリと目測することもなく、ミウはシュッと軽い音を立ててやや上方に向かって矢を放ったが、狙い違わずストンと矢が動かない魔物の背中に突き刺さる。
そこは私が思った通りの部分──四方から計ってちょうど真ん中の部分だった。
始まりから始まり、ここを終わりと為す
地との接触を遮り、四方を壁とし
天を閉じよ
封
私が古代語で唱えると、耳を掠めるような不可視の音が立って、魔物たちが空間に閉じ込められる。
と同時に、周辺に漂っていた腐敗臭もぐっと薄まっていった。
「ふわぁ……すごい……」
「うん。すごい。臭くない!」
「へぇぇ…‥ホントだわ。私の鼻でもきつくないわ!」
「これはすごい……これならウルも目を覚ましても……大丈夫、か…?たぶん……?」
仲間が目を丸くし、鼻をひくつかせる。
私もそう言われて、このあたりに漂っていた腐敗臭にだいぶ嗅覚が麻痺していたことに気がついた。
だんだんと森の清々しい匂いにとってかわり、知らないうちに鈍痛が頭にあったことにも驚く。
「……これは確かに。そうか……匂いも……ふむ……これはまだ研究の余地が」
「うわっ!火が!!」
つい意識が手元の布に向いたが、誰かが声を上げたので、今しがた閉じた空間に目をやる。
ただしどう頑張っても円の形にすることはできず、歪であっても四方を取り囲むことしかできないのが難点だった。
だがこの場合は何の問題もなく、すでに勇者たちの手によって魔石やら討伐部位やらを収穫し終わった魔物や魔獣の死体を囲む位置を確認し、まずは根元から固めることとする。
「もう地面に沁み込んでしまった血や腐液は仕方ないが、これ以上の被害を食い止めよう」
「あ、それは大丈夫。どっちにしてもここら辺は魔素が強いから、魔香の染みた体液ぐらいじゃ影響はないはずだから」
ラダが私の懸念を払しょくしてくれる。
どうやら地面に沁み込んでしまった分は結局循環し、魔素毒を含んだ植物が何かしら生えるだろうが、このあたりの植物生態を狂わせるほどではないらしい。
「むしろ狂ったら、どんな物が生えるのか知りたいくらいだけどね」
さすが薬師はそういった研究調査に目がないらしい。
「……後で始末がついたら、一緒に探しますよ」
「わっ!さっすが賢者様。助かるわ!こいつらったら、何見ても『何かの葉っぱ』としかわからないんだもの。いくら教えても教えがいがないったら」
「ラダの教え方が雑なんだよ!『先っぽがギザギザ~』とか『ツルッとしてる』とか!」
確かにその言い方ではわからないが、まあそれは後で考えればいい。
とりあえず私は幹の上の方──私の目線辺りに同じく四角い布の魔法陣を貼り付けていった。
「よし……その前に、ミウ、この死体のだいたい真ん中ぐらいにこの布を巻きつけた矢を入れれるかな?」
「まっかせてください!」
やることができたことで、魔石回収などに後れを取っていたミウが張り切った。
さりげない動作で特にキッチリと目測することもなく、ミウはシュッと軽い音を立ててやや上方に向かって矢を放ったが、狙い違わずストンと矢が動かない魔物の背中に突き刺さる。
そこは私が思った通りの部分──四方から計ってちょうど真ん中の部分だった。
始まりから始まり、ここを終わりと為す
地との接触を遮り、四方を壁とし
天を閉じよ
封
私が古代語で唱えると、耳を掠めるような不可視の音が立って、魔物たちが空間に閉じ込められる。
と同時に、周辺に漂っていた腐敗臭もぐっと薄まっていった。
「ふわぁ……すごい……」
「うん。すごい。臭くない!」
「へぇぇ…‥ホントだわ。私の鼻でもきつくないわ!」
「これはすごい……これならウルも目を覚ましても……大丈夫、か…?たぶん……?」
仲間が目を丸くし、鼻をひくつかせる。
私もそう言われて、このあたりに漂っていた腐敗臭にだいぶ嗅覚が麻痺していたことに気がついた。
だんだんと森の清々しい匂いにとってかわり、知らないうちに鈍痛が頭にあったことにも驚く。
「……これは確かに。そうか……匂いも……ふむ……これはまだ研究の余地が」
「うわっ!火が!!」
つい意識が手元の布に向いたが、誰かが声を上げたので、今しがた閉じた空間に目をやる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる