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賢者、魔獣の急襲に遭う。

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その衝撃にガクッと膝をついたのは、もちろん私のそばにいたカウラセンである。
「また……負けた……」
「え?」
意味がわからず、思わず私は彼を見下ろした。
「実は私の防御壁……カーテンのような薄さを誇るため防御膜ディフェンス・フィルムと名付けているのですが、まさしく壁と言っていい厚さの頃から……ミウラリアのあの強弓を防げたことがないんです……」
「え」
「まさしく神童と呼ばれ、大の大人が10人がかりでも打ち破れなかった防御壁……あれを初めて破られた時から研鑽を重ね……薄さと共にさらに強度も練度を上げ……魔術研究所で最高強度を誇るゴーレムの連続攻撃すら防いだというのに……ミウラリアの魔法矢5本の前では薄紙同然とは……」
「いや、あの……」
ミウの放つ矢に魔力が纏っているのは知っていたが、それでも防御壁を内側から射抜いて砕いたのには、私も衝撃を受けた。
しかしカウラセンが落ち込んでいるところ悪いが、慰めている暇はない。
「うん…悲しいね……もっと研鑽を積むしかないけれど……」
「や、やはり!そうですよね!」
「う、うん……なので、今はとにかくまた防御壁…いや、防御膜を張ってもらえないかね?」
「ハッ!…そ、そうでした!君たち!今のうちに負傷者を先ほどの防御膜の内側まで連れてきたまえ!もう1度膜を張る!」
「はっ、はい!!」
魔獣すら撥ねかえす強度の防御膜が打ち壊された瞬間に飛び出したケヴィンとデューンが、ラダの補助魔法を受けて身体能力や防御力を上げて、逃げ遅れた兵に噛みつこうとしていた魔獣を斃している。
さすがに彼らを連れて帰ってくることは無理だとカウラセンが命令を飛ばし、弾かれたようにまったく怪我をしていない者たちが仲間を救おうと走り出した。
「あっ!おい!勝手に動くなっ……」
「何が勝手だ!君こそ先頭を切って助けに行きたまえ!」
「ヒィッ!ハッ、ハイィッ!!」
確かにカウラセンは優秀らしい。
未だ動こうとせず、逆に仲間を助けようとする部下たちを叱りつける司令らしき男に向かって小さな火球を投げつけつつ、ゆっくりと防御壁──いや『防御膜』を頭上から展開している。
先ほどのように一気に降ろすのではなく、高さを維持しながらゆっくり張られていくというのはもの凄い技術だ。
しかも先ほどの攻撃魔法と同時というのは、なかなか器用な男である。
「いやぁ、素晴らしいね!」
「えっ…そ、そうですか?いやぁ……賢者殿に褒められてしまうとは……」
──意外とチョロいのかもしれない、この男は。


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