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しおりを挟むその日の夜、自室で食事を済ますとラモンに呼ばれていた。
「ソフィー、聖女就任の式ご苦労でした。聖女様になった気分はいかがですか?」
その言葉の真意はきっと、なぜエセ聖女をやらされているのか、気になりませんか?そう言うことだったのだろう。
薄々気づいていた。私はもしかして、ラモンに守られているんじゃないかと。
私が存在するだけで、魔獣が大量に襲ってくる危険性が伴っているのだ。早急な解決方法としては、私を殺すか一生幽閉することだろう。しかし、ラモンはあえてその方向性をとらず、エセ聖女様として祭り上げ手元に置くことを選択した。つまり、私は守られているのではないだろうかと。
「ラモン。あなたはどうして私を、その、聖女として生かしてくれているの?」
この質問を口にするのは怖かった。もし真実が、私の想像を超えた方向にあったら?もし彼の気が変わってしまったら私はどうなるのだろうか。
「ソフィーも馬鹿ではないみたいで安心したよ。それはね、我が国の問題とさらにはヨド帝国の間の問題も絡んでいるんだ。」
詳しい話は逸らされてしまったが、つまり聖女という切り札が現在神官長であるラモンのもとにあると都合が良い、そう言うことらしい。でもそれは一方で、
「ソフィーは聖女ではない。さらに言うと、君と言う存在がいると言うことは、そう遠くない未来に本物の聖女様が現れるのは事実だろう。」
そうなのだ。
私と対局、否、私を終わらせる聖女様がいつか必ず現れる。
その時、私はどうなるのだろうか。それに私を聖女として偽っているラモンはどうなるの?
これ以上彼に質問をぶつける勇気をなくした私はこの場に立ち尽くすのが精一杯だった。
****
その頃ヨド帝国にて。
「殿下、昨日聖女就任の儀が執り行なわれたようです。」
この言葉に耳を疑い、素直に言えばこちらとしてはしてやられたようなものだった。
聖女は我が帝国の創造神である闇の神ヨドルトを救済する聖なる乙女なのだ。それを婦神である月の女神を祀るマリーナ教会に先に手に入れられたとあってはならない状況だ。
さらに不信感がぬぐえない。
あの夜、聖女と名乗る彼女を助けた時彼女は瞳を長髪で覆い隠していた。
私はまだ彼女真の姿を知らない。
でもそれと同時に、彼女の手に触れた瞬間、心臓の跳ね返りが激しかったことを覚えている。
理由は分からない。ただ、なぜか離れたあとも彼女の美しい月色の髪が目に焼き付いて離れなかった。
これは、彼女に直接あって確かめるしかないな。
聖女就任の数日後、ハルミド殿下直々の招待状が届けられるのであった。
****
今私は聖堂に徴収されている。
私の目の前には大きな金の杯を持った神官たちがゾロゾロと並んでいる。
そう、この杯はただの杯ではない。
これは神聖なる魔力を蓄え、各地領地にて土地の豊穣を高めるこれはこれは素晴らしい杯なのだ。
それをぱっと見100個ほど、ずらりと並べられ、私は貼り付けた笑みの裏でものすごい冷汗をかいていた。
私、聖なる魔力なんて持ってないよ!
最後の杯を受け取った瞬間、来るとは思ってたけど、お決まりの御光が背中に差し込んだ。
そしてそれを神官たちが、またもやなんと素晴らしいと言いたげな眼差しで見上げてくる。
神官たちが聖堂から出ていくと、聴き慣れた靴音がこちらに向かってきた。
「光女様、まだご就任したばかりと言いますのにこのような数を引き受けられては、いささか体にご負担をかけてはしまいませんか?もともと、魔力補充は上位神官たちの職務でありましたし、このツヴァイめに代行させてはくださいませんか?」
ツヴァイ様、あなたは神ですか?
サングラス事件もそうでしたが、杯もなんとかしてくれるの?やったー!
「待ちなさい。ツヴァイ。」
後ろからラモンが口を出す。
「聖なる光の巫女手ずからの魔力の方が民は喜ぶのではないですか?せっかくですので聖女様には主要領地の分は承って頂きましょう。」
そう言うと私のところには一際大きなカップが10個ほど渡されていた。
ラモンを見ると、また腹黒スマイルを浮かべ私を見下ろしている。そう簡単には問屋が落としてくれなさそうだ。
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