10 / 10
戦いの後には
しおりを挟む
剣を振り切った反動が時間差で身体の奥深くに押し寄せ、まるで張り詰めていた糸が一斉に緩むかのように全身の力が静かにしかし確実に奪われていく。
空はその場に立ったまま、前かがみになることすらできずただ荒い息を吐き出し続けていた。肺の内側がじりじりと熱を帯び、吸い込む空気が喉の奥を擦るたびにひりついた痛みを残す。心臓の鼓動は耳の奥で重く響き、視界の端がわずかに揺れる。
握り締めていた剣の重さが今になって一気に腕へとのしかかり、肩から肘、指先へと鈍い疲労が流れ落ちていく。震え始めた指がもはや力を保ちきれなくなったその瞬間、かちり、と乾いた小さな音を立てて、剣先がゆっくりと地面へ下がった。
踏ん張っているはずの脚も感覚が薄れ、地面に立っているという実感さえ曖昧になる。それでも倒れずにいられるのは、ただ、まだ立っていなければならないと身体が覚えているからに過ぎない。体の中にはもう余力などは無く立っているのがやっとだった。
――倒した。
その事実だけは疑いようもなく胸の奥に落ちていた。視線の先にはもはや息づく気配すら残していない魔物の骸が横たわり、先ほどまで確かにこちらへ牙を剥き、命を奪おうとしていた存在が完全に沈黙しているという現実を否応なく突きつけてくる。あれが敵でそしてあれを斬ったのは自分だということだけはどれほど意識が揺らいでいても揺るがない。
けれど、そこへ至るまでの過程を思い返そうとした途端、思考は霧の中へ放り込まれたかのように輪郭を失い、どうやって剣を振り、何を感じ、何が起きたのかを一つ一つ並べようとすればするほど、掴みかけた答えがふわりと空回りしていく。
それでも――。
手の中には確かに残っていた。
剣を振り抜いた瞬間に伝わってきたあの妙な感触。刃が肉を断ち、骨を砕いた時に覚えるはずの生々しい抵抗とはまるで違い、何かに触れたようでしかし同時に何もなかったような、現実と感覚の境目が曖昧になる手応え。それがまだ、指先に、腕に、はっきりと焼き付いたまま離れず今も微かに脈打つように残り続けている。
「……終わっ、た……?」
自分でも驚くほどかすれた声が喉の奥から零れ落ちた。誰かに問いかけたわけでもなく、答えを求めたわけでもない。ただ、現実を確かめるためだけの独り言のような呟きだった。
その瞬間だった。
「――空さんっ!」
背後から届いたその声は、張り詰め続けていた空気を一瞬で断ち切るほどの切迫した響きを帯びていて、戦いの余韻に取り残されていた空の意識を強引に現実へと引き戻した。次の瞬間、視界の端で淡い金色の軌跡が弾けるように揺れ、反応する間もなく、空の身体に柔らかな衝撃が正面からぶつかる。
ぎゅっ、と。
胸元に押し付けられた温もりが遅れてはっきりと伝わった。細く、震える腕が回され、逃がさないとでも言うように力を込められる。勢いよく飛び込んできたシエルがそのまま空に抱き着いていたのだと理解した時にはすでに身体はその重みを受け止めきれていなかった。
「……え?」
思わず漏れた間の抜けた声とは裏腹に、空の脚はぐらりと揺れ、踏ん張ろうとしたはずの足裏から力が抜けていく。戦いが終わったという安堵と、温もりがもたらす現実感が、張り詰めていたものを一気に解いてしまった。
「よ、よかった……っ、本当に……!」
震え混じりの声が、すぐ近くで聞こえる。シエルは強く抱きついたまま離れようとせず、その必死さがそのまま重さとなって空の身体にかかる。支えなければ、と思った意識とは裏腹に、腰から下が言うことを聞かず、視界がわずかに傾いていく。
「ちょ、まっ……!?」
思わず声を上げた瞬間にはもう遅かった。反射的に何か言葉を返そうとしたものの、もともと限界ぎりぎりだった脚は抱き着かれた衝撃と重みを受け止めきれるはずもなく力の抜けた膝が情けないほど素直に折れる。
足元から支えが消えた感覚とともに視界がぐにゃりと歪み、森も空も、ついでにさっきまで倒していたはずの魔物の骸までがまとめて横へと傾いていく。
「あ――っ」
二人分の体重がそのまま勢いを失わずに重なり空の身体は抗う間もなく後ろへと倒れ込んだ。背中から地面に叩きつけられる感触は確かにあったものの、落ち葉と土が多少なりとも衝撃を吸ってくれたのか鋭い痛みよりも先に胸をぎゅっと押し潰されるような感覚が走り、肺の中の空気が一気に吐き出される。
「いっ痛っ……」
思わず漏れた声は痛みというよりも息が詰まったことへの抗議に近かった。
なんとか呼吸を整えようとしながら改めて前を見る。
――その瞬間だった。
視界いっぱいに飛び込んできたのは淡い金色の髪と驚くほど近い距離にあるシエルの顔だった。
「っ!?」
短い声が喉の奥でひっくり返る。
近い。
近すぎる。
瞬きをするたびにまつ毛の影が揺れるのが分かるほどの距離で視線を逸らす余裕すらない。戦いの直後だというのに別の意味で心臓が忙しくなり始めていた。
倒れ込んだ拍子に完全に体勢が崩れ、気づけばシエルは空の上に覆いかぶさる形になってた。胸元に顔が近く、いや近いというよりほぼ真正面で、呼吸のたびに吐息がかかる距離感に加えて、淡い香りと体温が遠慮なく伝わってきて、空の処理能力に対して明らかにオーバースペックな情報量が一気に流れ込む。
「あ、ご、ごめんなさい!」
シエルは慌てた様子でそう言うとなんとかこの状況を是正しようと身体を起こそうとするのだが、焦りすぎたせいで動きが妙にぎこちなく、手をついて距離を取ろうとするたびにバランスを崩し、そのたびに別の部分が揺れて当たるという、まるで狙っているかのような悪循環に突入してしまう。
結果として、離れようとしているはずなのになぜか接触ポイントが増え、圧迫感も増し、空の胸元には次々と予想外の衝撃が追加されていく形になり、状況を理解する前に頭の中で警告音が鳴り響き始めた。
――処理不能。
――許容量超過。
戦いの疲労も相まって、空の脳内は一気に熱を帯び、思考は停止し、顔は赤くなるを通り越して完全にフリーズし、ついには何も反応を返せないまま、堂々のオーバーヒートを起こす。
「あれ?空さん?空さんー!?」
すぐ目の前で聞こえるシエルの声にも答えられず、空はただ仰向けのまま、静かにしかし確実に限界を迎えていた。
その一連のやり取りを少し離れた場所からリィナは無言のまま眺めていた。倒れたまま動かなくなった空とその上で慌てふためいているシエルという、戦闘直後とは思えない光景にほんの一瞬だけ表情が緩みかけるがそれもすぐに消え、彼女は何事もなかったかのように視線を二人から外した。
興味を引かれたのは別のものだ。
リィナは静かに歩み寄り、地面に横たわる魔物の亡骸の傍らで足を止めると、しゃがみ込み、その断面を覗き込む。血の流れ方、肉の断ち切られ方、そして骨の露出――それらすべてが彼女の経験と照らし合わせるほどに違和感を強めていく。
切り口は異様なほどに綺麗だった。
引き裂かれた痕も無理に押し切った形跡もなく、まるで最初から二つに分かれていたかのように滑らかで、一本の線で迷いなく断たれている。力任せに振り下ろされた刃が生む荒れもなく、熟練の剣士が狙い澄まして放った一撃とも、どこか違う。
ましてや――。
先ほど見ていたあの素人丸出しの振り方で生まれるはずがない断面だ。
リィナは無意識のうちにわずかに眉を寄せる。
「……おかしいな」
その言葉は答えを求めるでもなく誰かに聞かせるつもりもないまま、ぽつりと空気の中に落ちていった。小さく零れたその呟きには状況を飲み込みきれない困惑と無視するには危険すぎるという警戒、そして自分でも正体を掴みきれない興味が静かに混じり合っており、リィナの視線はなおも魔物の断面に縫い止められたまま、簡単には離れようとしなかった。
剣技として見れば空の動きは正直なところ拙い。踏み込みの浅さ、間合いの取り方の甘さ、体重移動のぎこちなさ――どれを取っても基礎が身についているとは言い難く、熟練者の目からすれば危なっかしい箇所ばかりだった。実際、あの戦いも紙一重のやり取りの連続であり、運と根性でどうにか生き残ったと言われても否定できない。
それなのに、この切断面だけはまるで別次元の仕事だった。
技量や経験といった積み重ねの延長線上にあるものではなく、理屈で説明しようとするとどこかが破綻する。狙った形跡も修正した痕もなく、ただ『そうなった』としか言いようのない完成されすぎた結果がそこにある。
だからこそリィナの興味は自然と移っていった。
上体を無理やり起こされているにもかかわらず、まだ意識が追いついていない空はシエルに両肩を掴まれたまま小刻みに揺さぶられていた。必死に名前を呼び続けるシエルの動きに合わせるように空の頭は情けなく左右へ振られ、そのたびに力の抜けきった腕がだらりと地面を叩いている。
そんな二人のやり取りを少し離れた場所から眺めながらリィナは改めて思う。命を懸けた戦いを終えた直後だというのに緊張感の欠片もない間の抜けた光景を生み出している少年と、先ほどまで戦場で揺るぎない確信を口にしていたとは思えないほど必死に彼を揺さぶっている少女――その落差と不釣り合いさが、先ほど見た異様な切断面の記憶と重なり胸の奥にじわりとした興味を残す。
「……中々面白そうな二人だね」
独り言のように零れたその感想には警戒よりも先にこれから先に何が起きるのかを少しだけ期待してしまう自分自身への苦笑がほんのわずかに滲んでいた。
空はその場に立ったまま、前かがみになることすらできずただ荒い息を吐き出し続けていた。肺の内側がじりじりと熱を帯び、吸い込む空気が喉の奥を擦るたびにひりついた痛みを残す。心臓の鼓動は耳の奥で重く響き、視界の端がわずかに揺れる。
握り締めていた剣の重さが今になって一気に腕へとのしかかり、肩から肘、指先へと鈍い疲労が流れ落ちていく。震え始めた指がもはや力を保ちきれなくなったその瞬間、かちり、と乾いた小さな音を立てて、剣先がゆっくりと地面へ下がった。
踏ん張っているはずの脚も感覚が薄れ、地面に立っているという実感さえ曖昧になる。それでも倒れずにいられるのは、ただ、まだ立っていなければならないと身体が覚えているからに過ぎない。体の中にはもう余力などは無く立っているのがやっとだった。
――倒した。
その事実だけは疑いようもなく胸の奥に落ちていた。視線の先にはもはや息づく気配すら残していない魔物の骸が横たわり、先ほどまで確かにこちらへ牙を剥き、命を奪おうとしていた存在が完全に沈黙しているという現実を否応なく突きつけてくる。あれが敵でそしてあれを斬ったのは自分だということだけはどれほど意識が揺らいでいても揺るがない。
けれど、そこへ至るまでの過程を思い返そうとした途端、思考は霧の中へ放り込まれたかのように輪郭を失い、どうやって剣を振り、何を感じ、何が起きたのかを一つ一つ並べようとすればするほど、掴みかけた答えがふわりと空回りしていく。
それでも――。
手の中には確かに残っていた。
剣を振り抜いた瞬間に伝わってきたあの妙な感触。刃が肉を断ち、骨を砕いた時に覚えるはずの生々しい抵抗とはまるで違い、何かに触れたようでしかし同時に何もなかったような、現実と感覚の境目が曖昧になる手応え。それがまだ、指先に、腕に、はっきりと焼き付いたまま離れず今も微かに脈打つように残り続けている。
「……終わっ、た……?」
自分でも驚くほどかすれた声が喉の奥から零れ落ちた。誰かに問いかけたわけでもなく、答えを求めたわけでもない。ただ、現実を確かめるためだけの独り言のような呟きだった。
その瞬間だった。
「――空さんっ!」
背後から届いたその声は、張り詰め続けていた空気を一瞬で断ち切るほどの切迫した響きを帯びていて、戦いの余韻に取り残されていた空の意識を強引に現実へと引き戻した。次の瞬間、視界の端で淡い金色の軌跡が弾けるように揺れ、反応する間もなく、空の身体に柔らかな衝撃が正面からぶつかる。
ぎゅっ、と。
胸元に押し付けられた温もりが遅れてはっきりと伝わった。細く、震える腕が回され、逃がさないとでも言うように力を込められる。勢いよく飛び込んできたシエルがそのまま空に抱き着いていたのだと理解した時にはすでに身体はその重みを受け止めきれていなかった。
「……え?」
思わず漏れた間の抜けた声とは裏腹に、空の脚はぐらりと揺れ、踏ん張ろうとしたはずの足裏から力が抜けていく。戦いが終わったという安堵と、温もりがもたらす現実感が、張り詰めていたものを一気に解いてしまった。
「よ、よかった……っ、本当に……!」
震え混じりの声が、すぐ近くで聞こえる。シエルは強く抱きついたまま離れようとせず、その必死さがそのまま重さとなって空の身体にかかる。支えなければ、と思った意識とは裏腹に、腰から下が言うことを聞かず、視界がわずかに傾いていく。
「ちょ、まっ……!?」
思わず声を上げた瞬間にはもう遅かった。反射的に何か言葉を返そうとしたものの、もともと限界ぎりぎりだった脚は抱き着かれた衝撃と重みを受け止めきれるはずもなく力の抜けた膝が情けないほど素直に折れる。
足元から支えが消えた感覚とともに視界がぐにゃりと歪み、森も空も、ついでにさっきまで倒していたはずの魔物の骸までがまとめて横へと傾いていく。
「あ――っ」
二人分の体重がそのまま勢いを失わずに重なり空の身体は抗う間もなく後ろへと倒れ込んだ。背中から地面に叩きつけられる感触は確かにあったものの、落ち葉と土が多少なりとも衝撃を吸ってくれたのか鋭い痛みよりも先に胸をぎゅっと押し潰されるような感覚が走り、肺の中の空気が一気に吐き出される。
「いっ痛っ……」
思わず漏れた声は痛みというよりも息が詰まったことへの抗議に近かった。
なんとか呼吸を整えようとしながら改めて前を見る。
――その瞬間だった。
視界いっぱいに飛び込んできたのは淡い金色の髪と驚くほど近い距離にあるシエルの顔だった。
「っ!?」
短い声が喉の奥でひっくり返る。
近い。
近すぎる。
瞬きをするたびにまつ毛の影が揺れるのが分かるほどの距離で視線を逸らす余裕すらない。戦いの直後だというのに別の意味で心臓が忙しくなり始めていた。
倒れ込んだ拍子に完全に体勢が崩れ、気づけばシエルは空の上に覆いかぶさる形になってた。胸元に顔が近く、いや近いというよりほぼ真正面で、呼吸のたびに吐息がかかる距離感に加えて、淡い香りと体温が遠慮なく伝わってきて、空の処理能力に対して明らかにオーバースペックな情報量が一気に流れ込む。
「あ、ご、ごめんなさい!」
シエルは慌てた様子でそう言うとなんとかこの状況を是正しようと身体を起こそうとするのだが、焦りすぎたせいで動きが妙にぎこちなく、手をついて距離を取ろうとするたびにバランスを崩し、そのたびに別の部分が揺れて当たるという、まるで狙っているかのような悪循環に突入してしまう。
結果として、離れようとしているはずなのになぜか接触ポイントが増え、圧迫感も増し、空の胸元には次々と予想外の衝撃が追加されていく形になり、状況を理解する前に頭の中で警告音が鳴り響き始めた。
――処理不能。
――許容量超過。
戦いの疲労も相まって、空の脳内は一気に熱を帯び、思考は停止し、顔は赤くなるを通り越して完全にフリーズし、ついには何も反応を返せないまま、堂々のオーバーヒートを起こす。
「あれ?空さん?空さんー!?」
すぐ目の前で聞こえるシエルの声にも答えられず、空はただ仰向けのまま、静かにしかし確実に限界を迎えていた。
その一連のやり取りを少し離れた場所からリィナは無言のまま眺めていた。倒れたまま動かなくなった空とその上で慌てふためいているシエルという、戦闘直後とは思えない光景にほんの一瞬だけ表情が緩みかけるがそれもすぐに消え、彼女は何事もなかったかのように視線を二人から外した。
興味を引かれたのは別のものだ。
リィナは静かに歩み寄り、地面に横たわる魔物の亡骸の傍らで足を止めると、しゃがみ込み、その断面を覗き込む。血の流れ方、肉の断ち切られ方、そして骨の露出――それらすべてが彼女の経験と照らし合わせるほどに違和感を強めていく。
切り口は異様なほどに綺麗だった。
引き裂かれた痕も無理に押し切った形跡もなく、まるで最初から二つに分かれていたかのように滑らかで、一本の線で迷いなく断たれている。力任せに振り下ろされた刃が生む荒れもなく、熟練の剣士が狙い澄まして放った一撃とも、どこか違う。
ましてや――。
先ほど見ていたあの素人丸出しの振り方で生まれるはずがない断面だ。
リィナは無意識のうちにわずかに眉を寄せる。
「……おかしいな」
その言葉は答えを求めるでもなく誰かに聞かせるつもりもないまま、ぽつりと空気の中に落ちていった。小さく零れたその呟きには状況を飲み込みきれない困惑と無視するには危険すぎるという警戒、そして自分でも正体を掴みきれない興味が静かに混じり合っており、リィナの視線はなおも魔物の断面に縫い止められたまま、簡単には離れようとしなかった。
剣技として見れば空の動きは正直なところ拙い。踏み込みの浅さ、間合いの取り方の甘さ、体重移動のぎこちなさ――どれを取っても基礎が身についているとは言い難く、熟練者の目からすれば危なっかしい箇所ばかりだった。実際、あの戦いも紙一重のやり取りの連続であり、運と根性でどうにか生き残ったと言われても否定できない。
それなのに、この切断面だけはまるで別次元の仕事だった。
技量や経験といった積み重ねの延長線上にあるものではなく、理屈で説明しようとするとどこかが破綻する。狙った形跡も修正した痕もなく、ただ『そうなった』としか言いようのない完成されすぎた結果がそこにある。
だからこそリィナの興味は自然と移っていった。
上体を無理やり起こされているにもかかわらず、まだ意識が追いついていない空はシエルに両肩を掴まれたまま小刻みに揺さぶられていた。必死に名前を呼び続けるシエルの動きに合わせるように空の頭は情けなく左右へ振られ、そのたびに力の抜けきった腕がだらりと地面を叩いている。
そんな二人のやり取りを少し離れた場所から眺めながらリィナは改めて思う。命を懸けた戦いを終えた直後だというのに緊張感の欠片もない間の抜けた光景を生み出している少年と、先ほどまで戦場で揺るぎない確信を口にしていたとは思えないほど必死に彼を揺さぶっている少女――その落差と不釣り合いさが、先ほど見た異様な切断面の記憶と重なり胸の奥にじわりとした興味を残す。
「……中々面白そうな二人だね」
独り言のように零れたその感想には警戒よりも先にこれから先に何が起きるのかを少しだけ期待してしまう自分自身への苦笑がほんのわずかに滲んでいた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる