※異世界ロブスター※

Egimon

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第三章 転生王妃

第七十五話 プロローグ

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「そっちに行ったぞ! スターダティルは前に出て奴の注意を引け。ウチョニーはそっちのデカブツを頼む。コイツの相手は俺たちが!」

 水の精霊ヴァダパーダ=ドゥフ討伐の一件以降、俺たちは再び旅に出ていた。
 とにかく強くなることを目指し、より山の奥へ。準精霊が多くいるというこの地域まで移動していた。アーキダハラの国からは、少々距離が離れてしまっている。

 今戦っているのは、以前にボンスタたちとも相手をした獣龍ズェストル。それに、これまた準精霊種である、角龍ウゴトロピッツァ。両者ともこの森を代表する準精霊であり、実力は申し分ない。

 角龍ウゴトロピッツァは獣龍ズェストルよりもさらに巨大な身体を持っており、滞空時間こそ限界があるものの、その突進から放たれる角の一撃は、大岩を砕くほどである。あれには、耐久力に秀でているウチョニーが適任だ。

 対し獣龍ズェストルは、準精霊よろしく魔法に長けた生物である。
 全身至る所から魔法を放ち、こちらを寄せ付けない戦い方をする。他の魔獣や準精霊とも共闘するほどの知能を持った、厄介な生き物だ。

 しかし、一般に強敵と言われる彼らも、今の俺たちからすれば大したことはなかった。それだけ、ドゥフとの決戦が俺たちを成長させているのだ。

 ウチョニーがウゴトロピッツァの気を引いている間、俺とスターダティルはズェストルの相手をしている。正直、彼女が角龍を倒す方が早いだろうから、こっちは持久戦をするのが得策だ。

 スターダティルがズェストルの前面に躍り出て、奴の魔法を誘う。
 一撃でも喰らえば、プロツィリャントなど簡単に粉砕できてしまうほどの威力を持った魔法だが、スターダティルは持ち前の身体能力でヒラリと躱して見せた。

「熱線魔法ッ!」

 そこにすかさず、俺の熱線魔法が放たれた。獣龍ズェストルほどの準精霊ならば対抗魔法を持っていてもおかしくはないが、スターダティルへ魔法を放った直後で反応できなかったようだ。わずかに身体を反らせるも、前足に大きな損傷を負わせることができた。

 賢い相棒であるスターダティルは、瞬時に判断しその足へと食らいつく。獣龍ズェストルはこれを嫌がり、特大の風魔法を発生させた。
 しかし突如、その魔法は撃ちださせることなく消滅する。

 スターダティルだ。彼の対抗魔法が、獣龍ズェストルの魔法を打ち消しているのだ。
 ズェストルが驚愕しているのがよくわかる。何せ、こんに小さな準精霊が、龍と精霊に股を掛けるズェストルの魔法を打ち消せるはずがない。そう思っていたのだろう。

 まあ、本来ならそうだろうな。普通のプロツィリャントでも不可能ではないが、絶対的に魔力量が足りない。ならば、その身体能力で避けてしまう方が簡単だ。少々安全性に欠けるがな。

 しかし、うちのスターダティルに限ってそんなことはありえない。
 体格が小さいゆえ通常のプロツィリャントと魔力量に差はないが、今の彼には無尽蔵と言える魔力が存在する。ズェストルの魔法を止める程度、何と言うことはない。

 スターダティルが奴の魔法を止めている間に、俺は攻撃を開始した。
 普段ならば俺の最も得意とする水系魔法を使うところだが、これはあくまでも力を手に入れるための戦闘。いつも通りでは意味がない。

「空間切断ッ!」

 アーキダハラから教わった新魔法、空間切断。空間系においてまったく新しい技術を取り込んだ、ムドラストも教えてくれなかった魔法である。
 この魔法は相手の防御力などまったく無視して、空間ごと敵を切断することが可能なのだ。

 今度は足ではなく、ズェストルの象徴的な翼を切断した。
 大絶叫を上げながら血をまき散らすズェストル。しかし容赦のない風魔法が、さらに彼を襲った。当然、スターダティルのものである。

「こっちは片付いちゃったよ~。手伝おっか~?」

 そこへのんきな声が飛んできた。横目でチラリと確認すると、角龍ウゴトロピッツァが横倒しになっていた。最大の武器である角も圧し折られ、翼は切断されている。四本の足も、かなりのダメージを負っている様子だ。

「本当に強いなウチョニーは。なら、魔力砲を撃ってくれるか? スターダティルがそろそろ魔力切れを起こしそうだ」

「オッケー。無属性、魔力砲!」

 彼女から放たれた純粋な魔力の塊は、そのまま獣龍ズェストルの顎を撃ちぬく。
 しかし、やはり彼女の魔法は不十分だ。巨体を誇るズェストルには、どうしても打撃力が足りていない。

 しかし、この魔法の本当の意味は……。

「オオオオオォォォォオオオオオオ!!!!!!」

 波のある、プロツィリャント特有の鳴き声。スターダティルが大声で叫んだ瞬間、ウチョニーから放たれた魔法が彼へと吸収されていく。そう、群体魔法であった。

 魔力切れを起こしかけていたスターダティルの動きが、途端にキレを取り戻す。
 獣龍ズェストルの攻撃を躱し、的確に傷口を狙って魔法を放ち、時に爪や牙で攻撃した。無尽蔵に動き続ける彼に、さしものズェストルも防戦一方になるしかない。

「チェックメイトだ、雷砲ッ!」

 疲れて頭が下に垂れてきたところを、俺が雷の砲弾で撃ちぬく。
 直線的ではあるが、空間切断よりも相手に当たるのは早い。これを躱すのは、今のズェストルには不可能だっただろう。

 頭部を貫かれたズェストルは、その巨体を地面へと打ち付けこと切れる。

「よくやったなウチョニー、スターダティル! 俺たちの連携も随分洗練されてきた。さぁ、肉を剝ぎ取って内臓を取り出すぞ。精霊種の魂臓と魔法細胞は、今後力を手に入れるにあたって重要だ!」

「そうだね!」「オオォオオン!」

 獣龍ズェストルや角龍ウゴトロピッツァのような準精霊からは、良質な魔法細胞が取り出せる。ウチョニーの解剖技術を進展させれば、これを体内に組み込みより高性能な魔法細胞を得られる算段が立っているのだ。それこそ、強くなるための近道である。

 ついでに、獣龍ズェストルと角龍ウゴトロピッツァの魂臓も移植しておこう。彼らにしか扱えない魔法が存在するかもしれないし、また精霊特有の魔法制御技術が存在するかもしれない。

『聞こえるか、ニーズベステニー。私だ、アストライア族族長、ムドラストだ』

 そんなことをしていると、頭の中に声が聞こえた。

「し、師匠!? こんな距離から念話ですか!? いや、そんなことをしているということは、重要な案件ですね」

 通常念話魔法というのは、距離が離れているほど難易度が高くなるのだ。音がぶつ切りになったり、音量が小さかったり、そもそも届かないこともある。
 にもかかわらず、ムドラストのそれは抜群に聞き取りやすく、また返信のための魔法線まで引いてくれていた。

『手短に言う。リーンビレニーが復活した。大至急、大精霊ロンジェグイダと霊王ウチェリトを連れて、部族まで戻ってきてくれ。二人には、リーンビレニーという名前を伝えれば通じる。頼んだぞ、ニーズベステニー』

 大精霊ロンジェグイダ様に、霊王ウチェリト様!? そんな大物を呼び出すなんて、アストライア族でいったい何が起こったというんだ。
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