魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第24章 ドラゴニックエスタ トライアル

第1371話 誰かがやらないといけないなら、誰かがやらないといけない

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次の日になって、朝に目が覚めるとドラン達をエナリシアたちが待っていた。
「どうだった?」
「少し後悔した…と言っていいかな?まさか勝った後に皆と触れなくて、連中はイベントモードに入って、町には何もなかった。とは思わんかった。」
「少し不思議な感じでございます。」
「そして、朝見て回ると、誰も居ませんでした、味方もです。」
「大方向こうのスタンピードの依頼を受けた段階でイベントモードに入ってたんだ。戻ったのは首都の冒険者ギルドだろうよ。」
 なんか、全員が不満というか…やるせない顔になっていた。勝ってここまで何もないというのは想定外だったという顔だ。
「うーん。私が言う事ではないかもしれんが…気にするな、これ位いつでもあるし、いくらでもある。」
「そう言う物ですか?」
 柴崎もこういう経験がないのだろう。泣きそうな顔でこっちを見ていた。
「依頼で、頼まれた通りに作って後で後悔したっていう話の建築依頼も結構受ける。本人にとっては正しくても本当はだめだったと言う物も多い。だがそれを言えば相手は思った通りの建築ではないという。そう言う物だ。こういう苦い経験も…経験の内だ。報酬もない、タダ働きで勇者らしい賞賛のない戦いも勝利もな。だけど…一人でも幸せならそれでいいと自分に言うのが…一番じゃないのか?」
 結構良心の呵責とか、あと一人で大工のミスをフォローすべくくらい家の建築の手直しを夜12時までやっていたとか…そういうのを思い出した。雇った大工さんは定時で返さなないといけないが後期上誰かが直さないと次の工程に間に合わない時とかだ。こういう…自分を卑下したくなる勝利なんていくらでもあるぞ。
「だな。」
「でも悔しゅうございます。」
「そう思うなら自分の価値を安く売らない事だな。が覚えておいて欲しい。」
 その言葉に全員が、いや恥ずかしいな。
「誰かがやらないといけないなら、誰かがやらないといけないんだ。全員が拒否してもな。それをやったとしても誰も感謝しないだろうよ。だけど、やらないといけないならやるしかないんだ。それが今日自分に回ってきただけだ。世の中が回るとはそういう事だ。意味が今わからなくていい。だけど覚えておいてくれ。その欺瞞の上に社会は成り立つ。」
「お主、意外とセンチメンタルじゃな。」
「言うな。」
「…やはり主は凄い。」
「です。」
「勇者ってそう言う物か?」
「…勇者っていうのは村一番勇気がある奴だ。」
 エナリシアが答える。そう言えば彼女は移動する狩人一家だった。まるで原始人みたいな修正だった。
「…ただそれだけ。それが凄いとか…私には信じられない。そんな気追う必要もない。お前みたいなやつは死にやすいから英雄と言う。それだけだ。」
 なんかすとんと来るというか…
「英雄って…。」
「周りより凄いってだけだって。凄い男って事よ。それだけだよ。」
 そう言えば柴崎もエナリシアも記憶を共有して同じ思いを持っていた筈だ。
「ではなんで…死にやすいのでございます?」
「凄いと言われた奴は大抵口で載せられ…一番に獣にとびかかる役を与えられる。そいつが死ぬまで。」
 なんか、全員の顔が引きつったのが分かる。感覚の差だろうが、褒めたのが台無しだ。
「それじゃあ、すぐ死ぬって事?」
 流石にリンベルト君が震えて答えた。
「死んだ奴に多いってだけ、本当に偉くなるなら長になる。だから英雄は乗せられただけ。」
 ある意味心理なのだろう。確かにそうだ。本当に偉いならみんなが長にしようとするだろう。そうならないなら、おだてて使い潰すって事だ。
「でも…。」
「…今のあんたはそういう生き方してる。それだけ。」
 エナリシアの意見は厳しいがあっている。
「…でも言えるのは、誰かが一番やりしないと…その村は飢え死ぬ。だから必要。そういう事。」
 ある意味ドライだがそういう事だ。獣の狩りの時の一番槍は一番恨まれ…そして他の者が失敗すれば自分に被害が来る。だけどやらないといけない。やらないと獣が狩れないからだ。そういう意味では…あっているのだろうな…そしてそいつが村長になるわけではない。本当に偉いなら長になっているわけだ。そういう意味では捨て駒なのだろう。だけどやらないといけない板挟みは…この頃からずっとあるのかもしれないな。
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