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青く、青い
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夏がさしかかろうとしたその日に、少し遠出をする用が出来た。
遠出とは言うが、バスを乗り継ぎ降り立った場所は、私が目指す高校がある隣町。足を踏み入れれば、人の多さに脱帽する。
焼けたアスファルトの香りが、林道の土とは違う夏らしさを思わせる。何処か湿気を含み息苦しさを纏わせる街中で、それでも人は歩む事を止めはしない。
待ち人が寛ぐバス停。人口の冷房で満たされ空気の層を跨げば、季節の変わり目と体が勘違いしてしまいそうな程に別世界だ。
色先輩の隣人、東星先輩は片手に持つ缶コーヒーを手放さず声を掛ける。
「あれ?長瀬後輩、早かったね」
「時刻表通りですよ?先輩は後輩に興味が無いんですか?」
飲み干した空き缶を、自販機に備え付けられたゴミ箱へ。
馴染み深い先輩は、その何処か飄々とした態度を崩さず私の方へ歩む。この街の友人宅で徹夜のゲームに勤しんでいたと聞いてはいるが、何時も通り
の様子に苛立ちが込みあがってくる。
__私は、この先輩が苦手だ。
飄々とした態度が気に食わないのか、自分でも明確に言う事が出来ないけれど。同種嫌悪だと冗談交じりに彼が言うので、私は睨み付ける事で否定した。
停留所隣の小粋な喫茶店を過ぎて、信号待ちの交差点で足を止めた東星先輩は、チカチカと点滅する歩道を横目に話を続ける。
本日は快晴であり、浅崎先輩たちの誕生日には少し遠い。
登山部のメンバーという事もあり、特に仲がいい同年代という事もあり。2人の誕生日プレゼントをどうしようかという話が浮かび、せっかくなのだから、二人に内緒で見作ろうという話が先輩との話題で上がり今に至る。
苦手とは言うが、四人での会話に支障はないし、同じ学校の先輩として悶着があった訳でもない。
会話は弾むのに、根本的な折り合いがつかない為か。
私が一方的に苦手認定をしているに過ぎないのか、先輩からの話題は尽きなく、此方としても途切れる事は無かった。
曰く、そんな関係だ。
付かず離れずの距離が遠いだけの関係。
距離感を図れない事を、私は苦手というのか。
幼馴染というには、遠く。他人というには近い。
実に、言葉に表すのが難しいな。
「なんだか今日はいつもより元気がいいよね。良い事でもあった?__あ、色と何かあった?」
「先輩。いい加減にその減らず口を止めないと、……実力行使ですよ?」
「……具体的には?」
「ホッチキスなんてどうですか?口止め料って事で」
__とまあ、何時もの如く雑談に花を咲かせ終え。
目標としている雑貨店には、徒歩で一時間。バスを使えば十数分といった所だ。
真夏表記ではない天気予報。
春というには強い日差しに暑がりはとことん弱い。故にバスでの移動で、目的地へと足を運ぶことにした。
幸い、待合室は冷房が効いていて。最寄りのバス停はすぐ近くで。バスの中も大概そう在る。
多少なりとも涼しさを求めて、罰は当たらないだろう。
十字路の先には駅があり、手前側には目的のバス停がある。
「物騒すぎ、ワロタ」
「叩きますね?」
現在進行形で、頭を叩いた。
悪びれも無くこちらへ視線を向ける先輩は、冗談交じりに話しを続ける。
「……叩く事は無いんじゃないか?」
「色先輩に許可はもらいましたよ?」
「其処に俺の許可は?」
「えっ。あると思ったんですか?」
先輩の頭を叩く許可は、誰にももらっていない訳だけど。
「あると信じていました」
やれやれだぜと言いたげな雰囲気で肩を落とす先輩に、罪悪感は浮かばなかった、浮かぶ必要もないだろ?
バスの予定時刻を少し過ぎ、遅れたアナウンスに促されるまま搭乗すれば、先輩の独り言も静かになった。
窓の外では、日に当てられた人の波が駅へと足を運んでいる。
__バスに揺られるままに揺られながら目的地へ。
浅崎先輩姉妹の誕生日は、彼女らが双子だという事もあり同時に祝う事が習慣だった。東星先輩とは、この時期にかけては何時もきまって誕生日の品を悩ませる隣人となる。
浅崎先輩の好みを調査し、例年様々な品を送ってきたわけだけど。今年は高校受験などの一大イベントにより、例年以上に特別なモノを送ろうと言い出したのはつい先日。
あれやこれやと考え、この街にある伝統工芸品で、日常でも使えるような漆塗りのコップを送ろうと決着がついたのはつい昨日の事だ。
鮮やかで気品ある存在感が特徴的な漆器は、和風な先輩方々に合うだろうという満場一致の見解だった。
「__そういえば、先輩。色先輩達は、何色だと思いますか?」
「色の好みとか?」
「じゃなくって、イメージカラーですかね」
街バスを利用する客は少ないようで、数人の乗客がまばらに席を取る中、隣に座った先輩を一瞥する。
窓際の席では相変わらずの空き家が目立つペナントやらが垣間見れ、それでも流れる人の道に、田舎者としては人の多さに感嘆の息が零れそうになる。
その話題を口にしたのは、昨日最上先輩が色先輩の名前の由来について様々な考察をしていた事が由来だ。
その中で先輩は、色先輩を多彩であると表現し冗談を多く含んだ褒め殺しで困らせていた。
「私は、赤を公言していて。先輩も知る限りだとは思うのですけれど。浅崎姉妹先輩方々はどの色に当て嵌まると思いますか?」
「君がレット?……戦隊ものなら、真ん中だよ?」
「……何でそこで戦隊ものが出てくるのか分かんないですけど」
生憎そういうのには疎い。
だけども。まぁ、そういう奴には赤い色合いが多いというのは理解は出来ている。一応。先輩の言葉通りなら、そういう奴には赤が中心だというジンクスがあるのだろう。
「__まあ。そういうのって、アーティストとかでもあるよね」
まぁ、確かに。
イメージカラーと言えば、私はそちらの方が馴染み深い。
「最近ハマっている作詞家でもそういうのがありますよ。どうやら、全ての人間は色で示す事が出来るらしくて。多彩な色であるべき事が、今の現代の法律なんです」
「__でもね。俺的には、後輩ちゃんは」
其処で最上先輩は言葉を止めた。
考えを纏めているのか、何時もの表情とは暗く重い。飄々とした態度が取り柄の存在だというのに、思いつめたその顔はどこか別人の様でもあって。
「……なんです?」
「レッドよりも、黄昏。__かな?」
「__随分と濁ってますよね?」
黄昏は、夕方に見られる空である事は無論知っている。
一見色には見れないけど、黄昏色という言葉にある通り色合いの一種としても数えられる。暗く人の顔が見えない様な時間帯を指し、その言葉の意味には曖昧さに通じる所がある。
暗さと仄かな明るさが交わるその色味は、私の好みに合ってはいるけど。
曖昧なんて意味が好きな訳がない。
私はもっと、はっきりしている筈だ。
「最近夢を見るんだよね、最近。夢の中で教室に取り残されて、窓辺から光が零れているんだ。
その明かりが黄昏なのか、朝明けなのか判断がつかなくて。俺はとても悩む訳だけど。この夢はそれだけで終わってしまうんだ。
だから、君は黄昏が似合いそうだって思うよ」
「いや、全然意味が理解できないんですが?」
「性格に難あり、っていえば理解出来るかな?」
それに、何より。
黄昏は厳密には色では無い。
色を合わせた情景だ。
「……先輩は、夢でも暇人なんですね」
「まるで、何時も暇人の様に言わないでくれ」
「実際、先輩は暇人じゃないですか?
庵先輩の様に伝統を守っている訳でも無くて、色先輩の様にまとめようともしないで、私の様にかわいい後輩でもない。
先輩の愉快な仲間たちが部活や勉強にはげむのを横目に、それを差し置いて。こんな所で油を売っているのでしょ?」
言葉を殺すように思いを吐いた。
こんな所で溢すような思いではないし、雑談の域を出ないこの話に付け加える事でもない。
それでも溢れそうになる言葉は止まりそうにないし、気を抜けば感情が決壊しそうに私を波打つ。
私は最上先輩の全てを知っている訳ではない。
だけども、私にとって色先輩以上の先輩は居ない。
「__まあ、それは否定できないね」
「否定しろ。其処は」
「いや冗談だから、足を蹴るのはNG」
私の憧れは、遠い事を知っている。
それでも、最上先輩は隣にいた。私を差し置いている様に思えた。
冗談めかし嗤う先輩を蹴り、その表情がどこか歪んでいたことを知らずに、私は窓際を眺める。
代り映えない景色に、暇を持て余しているのは私もだろう。
だから、私は怒るのだと説明を付ける。
「……時計が無ければ、それが黄昏か夜明けか分からない様に。君を理解する人間も、君を理解できる術が無ければ理解出来ないだろう。
だから、踏み出すしかないんだ。
君は自分の意思で他人を理解し、他人を学び、他人とどうあるべきかを考えなきゃいけない。それを手伝う事が出来たとしても、他人と繋がり続けるのは君の意思であるべきだ。
君は、曖昧な朝明けにも黄昏にもなってはいけない」
……その、知ったような口を無視する事も出来た筈だ。
「それは、先輩の経験からの言葉ですか?」
「……君は、僕ら以外の友達が少ないだろ?」
「それは先輩も同義じゃないですか?」
面倒くさい自分を理解しているので、そんな顔で答える。
「……AはBを兼ねてはならないから、君は違う君でいるべきだ。色の真似事だけはしない方がいい。
十人十色は、__なんというか。義務であるべきだろ?長瀬後輩」
色先輩を目指してはならない。
私には、その言葉がそう聞えた気がした。
隣の芝が青く見えても、其れを目指してはいけないと言われた気がした。
私の尊敬を、私の支えを否定しているような気がしてならなかった。
「先輩は」
「……」
「色先輩を、何色だと思いますか?」
最上先輩は、色先輩を。
「……アイツはもう、青色だよ」
__どこか、諦めているようだった。
遠出とは言うが、バスを乗り継ぎ降り立った場所は、私が目指す高校がある隣町。足を踏み入れれば、人の多さに脱帽する。
焼けたアスファルトの香りが、林道の土とは違う夏らしさを思わせる。何処か湿気を含み息苦しさを纏わせる街中で、それでも人は歩む事を止めはしない。
待ち人が寛ぐバス停。人口の冷房で満たされ空気の層を跨げば、季節の変わり目と体が勘違いしてしまいそうな程に別世界だ。
色先輩の隣人、東星先輩は片手に持つ缶コーヒーを手放さず声を掛ける。
「あれ?長瀬後輩、早かったね」
「時刻表通りですよ?先輩は後輩に興味が無いんですか?」
飲み干した空き缶を、自販機に備え付けられたゴミ箱へ。
馴染み深い先輩は、その何処か飄々とした態度を崩さず私の方へ歩む。この街の友人宅で徹夜のゲームに勤しんでいたと聞いてはいるが、何時も通り
の様子に苛立ちが込みあがってくる。
__私は、この先輩が苦手だ。
飄々とした態度が気に食わないのか、自分でも明確に言う事が出来ないけれど。同種嫌悪だと冗談交じりに彼が言うので、私は睨み付ける事で否定した。
停留所隣の小粋な喫茶店を過ぎて、信号待ちの交差点で足を止めた東星先輩は、チカチカと点滅する歩道を横目に話を続ける。
本日は快晴であり、浅崎先輩たちの誕生日には少し遠い。
登山部のメンバーという事もあり、特に仲がいい同年代という事もあり。2人の誕生日プレゼントをどうしようかという話が浮かび、せっかくなのだから、二人に内緒で見作ろうという話が先輩との話題で上がり今に至る。
苦手とは言うが、四人での会話に支障はないし、同じ学校の先輩として悶着があった訳でもない。
会話は弾むのに、根本的な折り合いがつかない為か。
私が一方的に苦手認定をしているに過ぎないのか、先輩からの話題は尽きなく、此方としても途切れる事は無かった。
曰く、そんな関係だ。
付かず離れずの距離が遠いだけの関係。
距離感を図れない事を、私は苦手というのか。
幼馴染というには、遠く。他人というには近い。
実に、言葉に表すのが難しいな。
「なんだか今日はいつもより元気がいいよね。良い事でもあった?__あ、色と何かあった?」
「先輩。いい加減にその減らず口を止めないと、……実力行使ですよ?」
「……具体的には?」
「ホッチキスなんてどうですか?口止め料って事で」
__とまあ、何時もの如く雑談に花を咲かせ終え。
目標としている雑貨店には、徒歩で一時間。バスを使えば十数分といった所だ。
真夏表記ではない天気予報。
春というには強い日差しに暑がりはとことん弱い。故にバスでの移動で、目的地へと足を運ぶことにした。
幸い、待合室は冷房が効いていて。最寄りのバス停はすぐ近くで。バスの中も大概そう在る。
多少なりとも涼しさを求めて、罰は当たらないだろう。
十字路の先には駅があり、手前側には目的のバス停がある。
「物騒すぎ、ワロタ」
「叩きますね?」
現在進行形で、頭を叩いた。
悪びれも無くこちらへ視線を向ける先輩は、冗談交じりに話しを続ける。
「……叩く事は無いんじゃないか?」
「色先輩に許可はもらいましたよ?」
「其処に俺の許可は?」
「えっ。あると思ったんですか?」
先輩の頭を叩く許可は、誰にももらっていない訳だけど。
「あると信じていました」
やれやれだぜと言いたげな雰囲気で肩を落とす先輩に、罪悪感は浮かばなかった、浮かぶ必要もないだろ?
バスの予定時刻を少し過ぎ、遅れたアナウンスに促されるまま搭乗すれば、先輩の独り言も静かになった。
窓の外では、日に当てられた人の波が駅へと足を運んでいる。
__バスに揺られるままに揺られながら目的地へ。
浅崎先輩姉妹の誕生日は、彼女らが双子だという事もあり同時に祝う事が習慣だった。東星先輩とは、この時期にかけては何時もきまって誕生日の品を悩ませる隣人となる。
浅崎先輩の好みを調査し、例年様々な品を送ってきたわけだけど。今年は高校受験などの一大イベントにより、例年以上に特別なモノを送ろうと言い出したのはつい先日。
あれやこれやと考え、この街にある伝統工芸品で、日常でも使えるような漆塗りのコップを送ろうと決着がついたのはつい昨日の事だ。
鮮やかで気品ある存在感が特徴的な漆器は、和風な先輩方々に合うだろうという満場一致の見解だった。
「__そういえば、先輩。色先輩達は、何色だと思いますか?」
「色の好みとか?」
「じゃなくって、イメージカラーですかね」
街バスを利用する客は少ないようで、数人の乗客がまばらに席を取る中、隣に座った先輩を一瞥する。
窓際の席では相変わらずの空き家が目立つペナントやらが垣間見れ、それでも流れる人の道に、田舎者としては人の多さに感嘆の息が零れそうになる。
その話題を口にしたのは、昨日最上先輩が色先輩の名前の由来について様々な考察をしていた事が由来だ。
その中で先輩は、色先輩を多彩であると表現し冗談を多く含んだ褒め殺しで困らせていた。
「私は、赤を公言していて。先輩も知る限りだとは思うのですけれど。浅崎姉妹先輩方々はどの色に当て嵌まると思いますか?」
「君がレット?……戦隊ものなら、真ん中だよ?」
「……何でそこで戦隊ものが出てくるのか分かんないですけど」
生憎そういうのには疎い。
だけども。まぁ、そういう奴には赤い色合いが多いというのは理解は出来ている。一応。先輩の言葉通りなら、そういう奴には赤が中心だというジンクスがあるのだろう。
「__まあ。そういうのって、アーティストとかでもあるよね」
まぁ、確かに。
イメージカラーと言えば、私はそちらの方が馴染み深い。
「最近ハマっている作詞家でもそういうのがありますよ。どうやら、全ての人間は色で示す事が出来るらしくて。多彩な色であるべき事が、今の現代の法律なんです」
「__でもね。俺的には、後輩ちゃんは」
其処で最上先輩は言葉を止めた。
考えを纏めているのか、何時もの表情とは暗く重い。飄々とした態度が取り柄の存在だというのに、思いつめたその顔はどこか別人の様でもあって。
「……なんです?」
「レッドよりも、黄昏。__かな?」
「__随分と濁ってますよね?」
黄昏は、夕方に見られる空である事は無論知っている。
一見色には見れないけど、黄昏色という言葉にある通り色合いの一種としても数えられる。暗く人の顔が見えない様な時間帯を指し、その言葉の意味には曖昧さに通じる所がある。
暗さと仄かな明るさが交わるその色味は、私の好みに合ってはいるけど。
曖昧なんて意味が好きな訳がない。
私はもっと、はっきりしている筈だ。
「最近夢を見るんだよね、最近。夢の中で教室に取り残されて、窓辺から光が零れているんだ。
その明かりが黄昏なのか、朝明けなのか判断がつかなくて。俺はとても悩む訳だけど。この夢はそれだけで終わってしまうんだ。
だから、君は黄昏が似合いそうだって思うよ」
「いや、全然意味が理解できないんですが?」
「性格に難あり、っていえば理解出来るかな?」
それに、何より。
黄昏は厳密には色では無い。
色を合わせた情景だ。
「……先輩は、夢でも暇人なんですね」
「まるで、何時も暇人の様に言わないでくれ」
「実際、先輩は暇人じゃないですか?
庵先輩の様に伝統を守っている訳でも無くて、色先輩の様にまとめようともしないで、私の様にかわいい後輩でもない。
先輩の愉快な仲間たちが部活や勉強にはげむのを横目に、それを差し置いて。こんな所で油を売っているのでしょ?」
言葉を殺すように思いを吐いた。
こんな所で溢すような思いではないし、雑談の域を出ないこの話に付け加える事でもない。
それでも溢れそうになる言葉は止まりそうにないし、気を抜けば感情が決壊しそうに私を波打つ。
私は最上先輩の全てを知っている訳ではない。
だけども、私にとって色先輩以上の先輩は居ない。
「__まあ、それは否定できないね」
「否定しろ。其処は」
「いや冗談だから、足を蹴るのはNG」
私の憧れは、遠い事を知っている。
それでも、最上先輩は隣にいた。私を差し置いている様に思えた。
冗談めかし嗤う先輩を蹴り、その表情がどこか歪んでいたことを知らずに、私は窓際を眺める。
代り映えない景色に、暇を持て余しているのは私もだろう。
だから、私は怒るのだと説明を付ける。
「……時計が無ければ、それが黄昏か夜明けか分からない様に。君を理解する人間も、君を理解できる術が無ければ理解出来ないだろう。
だから、踏み出すしかないんだ。
君は自分の意思で他人を理解し、他人を学び、他人とどうあるべきかを考えなきゃいけない。それを手伝う事が出来たとしても、他人と繋がり続けるのは君の意思であるべきだ。
君は、曖昧な朝明けにも黄昏にもなってはいけない」
……その、知ったような口を無視する事も出来た筈だ。
「それは、先輩の経験からの言葉ですか?」
「……君は、僕ら以外の友達が少ないだろ?」
「それは先輩も同義じゃないですか?」
面倒くさい自分を理解しているので、そんな顔で答える。
「……AはBを兼ねてはならないから、君は違う君でいるべきだ。色の真似事だけはしない方がいい。
十人十色は、__なんというか。義務であるべきだろ?長瀬後輩」
色先輩を目指してはならない。
私には、その言葉がそう聞えた気がした。
隣の芝が青く見えても、其れを目指してはいけないと言われた気がした。
私の尊敬を、私の支えを否定しているような気がしてならなかった。
「先輩は」
「……」
「色先輩を、何色だと思いますか?」
最上先輩は、色先輩を。
「……アイツはもう、青色だよ」
__どこか、諦めているようだった。
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