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その焦がれを手放す方法
無人駅
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人が全く寄り付かない、翁島という小さな無人駅がある。
市内の中でも少し端の方にあるその駅は、近辺にある高校を利用するには距離が掛かる為に学生の利用が望めなく。また、それよりも充実した駅の存在によって、住宅地の一角とはいえ寂れた孤島として息を潜めていた。
通常の駅としても利用は出来るが、それよりも翁島には近づきがたい噂が絶えなかった。
百を超える年月が染みついたこの駅では、幽霊と出会えるという都市伝説がある。いや、性格には神様に近い。その神様は呪いを司り、人を殺すらしい。
人に呪われない様に、神様に魅入られない様に。
我が振りを直す訳でもないけれど、毎年花を贈るのが習慣になっていた。
人を恨まず、神様を恨まず。
幼少期の頃。ふと通り過ぎたこの場所で何かが居た気がした。おぼろげな記憶のせいで夢と混濁しそうになるが、確かに何かを感じた事がある。
其処に神様がいる事を教えたのは、誰でも無い先輩だった。
「俺はその努力の過程も知らないですよ。先輩」
俺の先輩である七井八重は、凄惨な死体で発見された。
その遺体の頭部は、目を覆いたくなるほど酷く損壊していたと聞いている。それ程恨んでいる人物が居ると断言はできないが、否定も出来なかった。
七井八重はネット上で主に活動している絵師だった。
その繊細な絵は様々なところから評価を重ね、その群青色の夏の景色に焼き付かれた人間も多い。だが、人は目立つほど恨みを買いやすい。本人がどう思っても、他人の心情は分からない。
怒りや憎しみが込められて、神様に呪い殺されたとして。
だが、それに値する人間であるかと言われれば、決してそうではなかっただろう。
何かが口を開いた気がした。
菖蒲水仙の花が、多少緩和した寒空を悼むように寂しく揺れる。
「恨む事がどれ程。今更気付いたんです」
その溢れんばかりの才能を恨んだ人間はごまんといる。
自分が関係ないと本当に言えるだろうか?あの絵を超える事が出来なかった自分は、本当に恨んで妬んでいなかったと言えるだろうか?
今でも続いている悪辣なこの呪いは、誰のせいか?
あの惨たらしい死は、果てしない呪いだって断言できる。
だけどその呪いは、誰がしたのだろう?
「先輩の才能に憧れていたし、妬んでいたのかもしれません。それでも」
身勝手で悪辣だったからこそ、責任は取るべきだ。
__貴方は確かに人を殺したのだから。
「……責任だけは続けますから」
一昨年の八月。八重桜町北部の雑木林にて発見された七井八重さん(当時)16歳の事件で、警察は調査本部を解体。以降、連続通り魔事件として新しく調査本部が設立しました。
同じ犯人と思われる同様の事件は、今もなお犯人の特定には至っておらず、警察に対して市民の不安の声が増す一方です。警察は改めて周囲の聞き込みなどを行い情報提供を呼び掛けております。
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