快気夕町の廃墟ガール

四季の二乗

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傘を捧ぐ

傘を捧ぐ7

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 言葉も無い程に、私は不運を知らない。
 歩いた道は数知れず、騒いだ思い出も数知れない。
 幸福である事が私の仕事で、他人の不幸を奪うのが私の趣味だった。

 __傘を手放す事は、あるまいに。
 私は何故、傘を忘れてしまったのだろう?

「私だって、忘れる気は無かったんだよ。教授」
「ああ_知っているよ」

 騒がしさが続く海上で、私は一人の男に愚痴を溢した。
 その男は、真面目気質なスーツを身にまとい、温和な表情を崩さず地元の日本酒を煽っていた。友人達が居なくなる度。知らない誰かに更新される度。私は、こうして愚痴を溢す。

「でも知っているだろ?私に不幸は無い。私は、不幸を知る事が出来ないんだ。アイツは不幸が大好きでね。__多分、ストレス発散の心算なんだろうさ」

 何時の間にやら、その行事は噂となった。
 渡り傘。不運と雨を受け止め。不幸を収集する行事は、古臭い傘を携えながら街を練り歩くという行事だった。元々はこの街だけだったものが、何時の間にやら全国へと広がった。
 同じ景色の場所を練り歩いても、つまらないと思ったからだ。
 不幸収集は単なる趣味だ。何時も幸福である私が、不幸を知る為に足を踏み入れた結果に過ぎない。

 そういえば、思い出す。

 百年経てば、付喪神になるらしい。
 私が練り歩いて何年が経過したのだろうか?
 彼は、神様になれたのだろうか?

「他人に当たるのは感心しないがね。それに、彼も幸福を知ったのだろう?」
「幸福ばかりの人生が、私を明白に殺したんだ。教授」

 無言で酒を煽ると、教授は飲み過ぎだとグラスを取った。
 アルコールをそれなりに嗜んでいるというのに、一向に酔いは回りそうになかった。
 様々な声が、人の空間を形成している。
 __灰猫倶楽部。
 様々な女性が、歪で異常が蔓延る事情を知りつつ。それに対処する為の集団は、この街の裏方を担っている。

「どうだい? 続ける気力はあるのかな?」
「歩く程に思い至るんだ。私は、幸福が一番嫌いだ」

 他人の不幸が好きであるという訳ではないが。
 悪い私は、他人の不幸を奪うのを好んでいた。

「そうだね。__私は、続けるよ。私の”神様”が許さないだろうからね」



 __さて、今日も探そうか。
 迷子の神様を探すのは、骨が折れる。

 ……君は、いかがお過ごしでしょうか?











 傘を捧ぐ。
 それは所謂、思い入れである。
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