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朱色を視しては一人待つ
朱色を視しては一人待つ13
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”朱色を視しては一人待つ”は、朱色の革靴だ。
履いた人間の適切なサイズに変化するが、その容姿は変わらない。その靴を履いた人間の意識を乗っ取り、強制的に”あと一歩”を埋める。その靴は自殺願望を持つ人間だけが視認でき、何も知らない人間に対しては魅力的に見せる。
この革靴は全国の屋上に出現し、哀れな人々の躊躇や後悔を殺してきた。唯一つ残されたか細い葛藤を易々と切り落とし人を落とす。然し、その存在は二十年前から確認されていない。
四方木幽霊の説明によれば、それは七井友里の特性によるものだそうだ。
この学園内で死んだ人間は、強制的に異常な性質を獲得する。朱色によって殺された彼女は、幽霊としてこの学園の異常達の性質を変える能力を獲得した。
しかし、その能力は自分自身の性質を変える事は出来ない。今の彼女は、自殺者を死に誘う靴の異常性と異常の性質を変える能力をどちらとも携えている。
私がすべきことは、未だに残る”朱色を視しては一人待つ”の異常を無力化し、七井友里を解放する事だそうだ。
その為には私が持つ異常性が必要で、その為に七井後輩と協力した。
四方木幽霊は、私が彼女を無力化してから彼女に会うそうだ。
理由は聞かない。たぶん彼女にも、葛藤はあるだろうから。
ノックをし、屋上の扉を開ける。
月明りと星々の煌めきが支配する世界で、暗闇でも分かる赤い靴が見えた。
そして視線を上げれば、四方木幽霊と同じ制服に身を包んだ幽霊が。
__夜風は実に冷たく、今が冬だという事を嫌でも思い出させる。
幽霊はこちらに近づき、その虚無顔を無理やり直して笑顔を造形した。
「__あー、ここは私有地なんですけど。廃墟探索?」
何処かで聞いたような物言いだ。その後に、ガールなんて付けそうな。私は何処か雰囲気が似ている後輩を思い出し、言葉をかけようと前に進む。何時も通り敬語は崩れずに白々しさを貫いた。
「申し遅れました。私は老猫探偵事務所で助手をしています巣立と申します」
「老猫探偵事務所?ああ、確かお得意様の。何時も七井家をご利用いただきありがとうございます」
そう言って頭を下げる七井幽霊。
だが、七井後輩が入ったとはいえお得意様という程の取引はしていなかった筈だ。__彼女が二十年前に死んだという事は、七井家と老猫探偵事務所の関係も彼女の中では二十年前で止まっているのだろう。二十年前といえば、名護探偵の先代に当たる父親が経営していた時代だ。
「__でも、確か老猫探偵事務所の探偵さんは長身イケメンのダディな叔父様では?」
「其処まで属性が盛られているかは分かりませんが、それは多分先代の話だと思います。今はその娘が継いでいまして、私は彼女の助手を務めています」
やはり、彼女の認識はその時間で止まっている。
「で、その助手さんがどうしたの?異品の管理なら、生憎だけど今は出来ないよ?」
「いえ、実は依頼がありまして。貴方の所持している異常性を無力化してほしいと」
異常性、という言葉に彼女は眉を顰める。
七井幽霊としての異常性ではなく、靴の方の異常性だと訂正する者のその表情は変わらない。それは、誰が依頼したのか?という考察を考えているようには見えない。私が手を伸ばすと、彼女は後ろに下がる。
「少し、手を拝借しても?」
「__君さ、赤い靴が見えない?」
赤い靴は自殺を考えている者だけが見る事が出来る。
そして私はソレが見えている。私にその気が無いとしても、何処か本心ではそう考えているのかもしれない。
それでも。
「奇麗な革靴ですね」
「じゃあ私に触れない方がいいよ?死ぬから」
生憎私は、今のところ予定がない。
「この靴が自殺を誘発する靴って分かっているんだろうけどさ。これ、如何やら触れるだけで効果あるから。私に振れたら君死ぬよ?」
つまり、彼女は赤い靴の異常性を持っているという事だろう。
それは七井幽霊自信が”朱色を視しては一人待つ”であると言っているようなものだ。それが混ざり合った結果だとしても、彼女自身の異常性があるのなら、それを切り離す事は出来る。
そして、何より。
「大丈夫ですよ。実は、それ位では死なないんです」
「__そ、君も大変だね。生きるって辛くない?」
「程々に楽しいですよ?」
巻き込まれることが多く、心労は絶えないが。
「依頼って?」
「後輩を救ってほしいそうです」
私の言葉に、初めて幽霊は動揺した。
私は、その幽霊に触れる。
長針は白。誘発させる死は私を取り込む前にその機能を停止する。
私が持つ異常性であるトロイメライの時計は、私の心臓の役割を担っている。それは時折、他人にも影響を及ぼす事が可能だ。私の長針は現在進行しているあらゆる事象を切り取り、それのみを停止させることが出来る。それは異常性に対しての切り札であり、連発が出来ない私の武器。
時空が一蹴淀み、その何者かは停止した。
永久的にその機能を停止した赤い靴が人を殺す事は無くなり、彼女はただの幽霊に戻っただろう。
【成功。ですね】
後ろから、声が聞こえた。
履いた人間の適切なサイズに変化するが、その容姿は変わらない。その靴を履いた人間の意識を乗っ取り、強制的に”あと一歩”を埋める。その靴は自殺願望を持つ人間だけが視認でき、何も知らない人間に対しては魅力的に見せる。
この革靴は全国の屋上に出現し、哀れな人々の躊躇や後悔を殺してきた。唯一つ残されたか細い葛藤を易々と切り落とし人を落とす。然し、その存在は二十年前から確認されていない。
四方木幽霊の説明によれば、それは七井友里の特性によるものだそうだ。
この学園内で死んだ人間は、強制的に異常な性質を獲得する。朱色によって殺された彼女は、幽霊としてこの学園の異常達の性質を変える能力を獲得した。
しかし、その能力は自分自身の性質を変える事は出来ない。今の彼女は、自殺者を死に誘う靴の異常性と異常の性質を変える能力をどちらとも携えている。
私がすべきことは、未だに残る”朱色を視しては一人待つ”の異常を無力化し、七井友里を解放する事だそうだ。
その為には私が持つ異常性が必要で、その為に七井後輩と協力した。
四方木幽霊は、私が彼女を無力化してから彼女に会うそうだ。
理由は聞かない。たぶん彼女にも、葛藤はあるだろうから。
ノックをし、屋上の扉を開ける。
月明りと星々の煌めきが支配する世界で、暗闇でも分かる赤い靴が見えた。
そして視線を上げれば、四方木幽霊と同じ制服に身を包んだ幽霊が。
__夜風は実に冷たく、今が冬だという事を嫌でも思い出させる。
幽霊はこちらに近づき、その虚無顔を無理やり直して笑顔を造形した。
「__あー、ここは私有地なんですけど。廃墟探索?」
何処かで聞いたような物言いだ。その後に、ガールなんて付けそうな。私は何処か雰囲気が似ている後輩を思い出し、言葉をかけようと前に進む。何時も通り敬語は崩れずに白々しさを貫いた。
「申し遅れました。私は老猫探偵事務所で助手をしています巣立と申します」
「老猫探偵事務所?ああ、確かお得意様の。何時も七井家をご利用いただきありがとうございます」
そう言って頭を下げる七井幽霊。
だが、七井後輩が入ったとはいえお得意様という程の取引はしていなかった筈だ。__彼女が二十年前に死んだという事は、七井家と老猫探偵事務所の関係も彼女の中では二十年前で止まっているのだろう。二十年前といえば、名護探偵の先代に当たる父親が経営していた時代だ。
「__でも、確か老猫探偵事務所の探偵さんは長身イケメンのダディな叔父様では?」
「其処まで属性が盛られているかは分かりませんが、それは多分先代の話だと思います。今はその娘が継いでいまして、私は彼女の助手を務めています」
やはり、彼女の認識はその時間で止まっている。
「で、その助手さんがどうしたの?異品の管理なら、生憎だけど今は出来ないよ?」
「いえ、実は依頼がありまして。貴方の所持している異常性を無力化してほしいと」
異常性、という言葉に彼女は眉を顰める。
七井幽霊としての異常性ではなく、靴の方の異常性だと訂正する者のその表情は変わらない。それは、誰が依頼したのか?という考察を考えているようには見えない。私が手を伸ばすと、彼女は後ろに下がる。
「少し、手を拝借しても?」
「__君さ、赤い靴が見えない?」
赤い靴は自殺を考えている者だけが見る事が出来る。
そして私はソレが見えている。私にその気が無いとしても、何処か本心ではそう考えているのかもしれない。
それでも。
「奇麗な革靴ですね」
「じゃあ私に触れない方がいいよ?死ぬから」
生憎私は、今のところ予定がない。
「この靴が自殺を誘発する靴って分かっているんだろうけどさ。これ、如何やら触れるだけで効果あるから。私に振れたら君死ぬよ?」
つまり、彼女は赤い靴の異常性を持っているという事だろう。
それは七井幽霊自信が”朱色を視しては一人待つ”であると言っているようなものだ。それが混ざり合った結果だとしても、彼女自身の異常性があるのなら、それを切り離す事は出来る。
そして、何より。
「大丈夫ですよ。実は、それ位では死なないんです」
「__そ、君も大変だね。生きるって辛くない?」
「程々に楽しいですよ?」
巻き込まれることが多く、心労は絶えないが。
「依頼って?」
「後輩を救ってほしいそうです」
私の言葉に、初めて幽霊は動揺した。
私は、その幽霊に触れる。
長針は白。誘発させる死は私を取り込む前にその機能を停止する。
私が持つ異常性であるトロイメライの時計は、私の心臓の役割を担っている。それは時折、他人にも影響を及ぼす事が可能だ。私の長針は現在進行しているあらゆる事象を切り取り、それのみを停止させることが出来る。それは異常性に対しての切り札であり、連発が出来ない私の武器。
時空が一蹴淀み、その何者かは停止した。
永久的にその機能を停止した赤い靴が人を殺す事は無くなり、彼女はただの幽霊に戻っただろう。
【成功。ですね】
後ろから、声が聞こえた。
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