快気夕町の廃墟ガール

四季の二乗

文字の大きさ
19 / 33
朱色を視しては一人待つ

学園は如何にして死んだのか?

しおりを挟む
 子供の頃から、そういったモノがある事を知っていた。
 人のようにふるまう影や、美しい空へと登る銀世界。
 現代の科学では証明されない、こうだからと言った理屈ではない事象、物が存在する事を。それは意外と身近に在り、人の普遍を脅かす恐れがある事を。

 但しそれは、普通ではないからこそ話してはいけないモノだった。

 今思えば、そんな異常が”私”を殺したのだろう。人付き合いに問題はないけれど、何処か関係を詰められない人間になったのは、信じる前提がそもそも破綻していたからだ。ゲームのNPCとplayerでは、分かる世界が違うように。
 それを知っている人間と、知らない人間の差は大きい。
 他人が信用しなくても、そんなモノは案外身近な所にある。一般の人間が知らずのうちに巻き込まれることは確かにあって、その全てがロクな結果を生み出さない。
 管理を主な生業とする七井家では管理方法の採択が何よりも重要だった。そんな、人を助けられる仕事ではない事を幼い私は知っていた。

 人の目に届かず、それを朽ち果てさせない。
 維持管理だけを生業とした七井家の伝統よりも、私は”人”を救いたかった。



 そんな中、一つの話が舞い込んでくる。
 著名な進学校としても名高い、四宮高校である噂が界隈を賑わせているという話だった。

 






 ___幕間


 

 
 
 入学から半年が経った頃。私は、先輩の元へと足を進める。
 何時もより足取りは軽かった。我が部室である学習室Wは校舎端の物置同様の扱いをされているせいか、利便性と快適性が先生方々の頭から抜け落ちている。冬は寒く、夏は暑いという不条件を押し付けられながらも、文句も言わず活動している先輩は、コミュ障の鏡だろう。
 途中で会う先輩方に作り笑いで乗り気ながら、又は、何時も通りの定例文と持ち前の記憶力で程々の話題作りに勤しみながら、急かす足を止める事なく扉を開いた。

「ノック」

 不機嫌気味な先輩は、気分を隠そうともせずに唇を尖らせる。
 持ち前の崩れない屈託のある訳も無い笑顔を向ければ、興味なさげにペンを回した。

「先輩、どうしてこんな陰湿な場所で勉強をしているんですか?カーテン位、開けましょうよ」
「__ん…暗い?」
「視力どうなっているんですか?」

 生憎下がったことが無いと答える先輩に、嘆息を吐き向かい側の席に腰を落とした。
 この学校に所属する事になった私は、七井家の命を受けて噂話の解明に乗り出していた。

 焦らす様に鳴りやまない電話を切る。
 先輩は、此処ではマナーモードが常識だと唇を尖らせる。

「そういえば先輩。一つ聞きたい事があったのですが」
「何?」
「先輩は、幽霊についてどう思いますか?」

 単なる質問だ。
 意味の無い世間話。

「廃墟ガールに興味でも?」
「何ですか?それ」
「廃墟巡りを趣味としている人の事を指すそうだよ。アレ。登山ガールとかの亜種」
「__ああ、聞いたことがあります。でもああいう人たちって、廃墟が好きなのであって幽霊は目的ではないのでは?」

 言い直したところであまり変わっていない。

「じゃあ、心霊ガール?」
「心霊写真が好きそうですね」

 特に地縛霊らが好きそうな。

「そんなもんだよ。いるかどうか分からない。だって見た事が無いから」
「信じないと?」
「違うよ。私は見た事が無いから、居ると居ないが同居しているんだ」

 先輩は、そんな異質を否定しなかった。

「__成程、やっぱり先輩はとても変わった人ですね」

 おそらく、関わりさえも無いだろうに。

「そういえば、先輩。覚えています?先輩がこの学校を案内した時、この部室を紹介したんですよ」
「一年前の時?ああ、定員居なかったかったから、必死だっただけだよ」
「それを聞いて私は先輩に興味を持ったんです」

 だけど、私は。

【じつは、先輩?幽霊は、枯れ尾花じゃないんですよ】


 幽霊がいる所を、先輩に言えなかった。







 扉の幽霊。
 施錠の七不思議。

 そして、”朱色を視しては一人待つ”

 彼等は全てこの学園の”元生徒”であり、その他のも確認されている事象がこの学園を覆っている。
 だというのに、変わらない日常を続けているこの学園は、もう踏み越えてはいけない一線を越えている。
 それも多分誰かの謀略で、これを止めるのは私しかいない。

 失踪した人間と、死んだ人間は異常性を持つ。

 つまり裏を返せば、この学園で死ねば異物の仲間となる。
 新たな犠牲者を増やさない為には、この学園を封鎖するべきだ。
 報告書をまとめ終え、通知が鳴りやまない携帯に耳を当てる。仕事用の其れには、最速の不在着信が並んでいた。宛先は七井家の主。今回の調査でわかぅた事、しかしあるであろう地下室は発見できなかったと嘘を付いて。


 最初から間違っていた。
 

 致命的に歩む事を止めた私には、横に並ぶ資格も無いだろう。
 足を止めた私に出来る事は、違う道に足を踏み入れる事だった。


 この学園の異常性達は管理されていない。
 だから、管理できる異常性が必要なのだ。


 その、”朱い靴”を履いた。







 伝染された朱い色が私に宿る。
 朱色を視しては一人待ち、耐えきれなくなった私は自殺を強要される。

 だけどこれは、私の意思だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳 様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開? 第二巻は、ホラー風味です。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。 この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ) 題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...