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転校生
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しかしそれは杞憂だったようだ。茉莉沙は転校生らしく休み時間に友達に囲まれた。万夢と、その同じグループの面々はどうやら同じ感想を持ったようで身構えていたため乗り遅れた。もうすっかり茉莉沙は他のクラスメイトの質問攻めになっている。
優吾もいる。最前列に。
優吾は転校生が大好きだ。中学年の時も転校生が二回来たが、優吾は他の子達との橋渡し役をいつもやる。
茉莉沙にも、そうなのだろうか。優吾もあんなオレンジ色の子は生まれて初めて関わるのではないだろうか。
「はいはい、質問コーナー! まず俺ね」
優吾は率先して話している。無表情だった茉莉沙も、なんだか嬉しそうにしている。
「その髪の毛はなんで?」
「誕生日は? 血液型は?」
「家はどこ?」
盛り上がっている。輪に入れなかった万夢のグループは、どこか不満げな顔をしている。
「なんかさ、あの子……」
グループのユヅキが、何か言いかけた。悪口は、ろくなことがないから言わないようにしたい。でもなんか、気に入らないよね、と言いたいんだなとわかった。
万夢と優吾は、低学年の頃は一緒に帰っていた。家が近くて、他に家が近い子がいないからだった。それがいつしか、お互い同性の友達と帰るようになって、一緒に帰ることはほとんどなくなっていた。
「関口って俺らの家のもっと奥なんだって! 今日一緒に帰るぞ」
帰りの会が終わるといきなり優吾が後ろからそんなことを言ってきた。万夢はいつもグループと帰るので、必然的に他のみんなも一緒ということになる。万夢のグループと、優吾のグループと、転校生。大群だ。万夢たちはさっきは乗り遅れたが、うまく話せるだろうか。ユヅキやリオは、優吾たちが好きだから男子と帰れる方が嬉しそうだ。
「家どこか教えてよ。そしたら遊びに誘えるし。こいつ、こののっぽ、家近いよ。川口万夢」
優吾はいきなり万夢を茉莉沙に紹介した。のっぽって……。確かに万夢は身長が百六十五あって、クラスではでかいが。
「ねえラインやってる?」
学年でも一番早くスマホをゲットしたユヅキが茉莉沙に訊いた。茉莉沙は小さく、「やってない」と答える。
「そっか。ならやっぱり家に行って誘わないと遊べないね」
「……」
ユヅキは早くもマウンティングを始めているのだ。オレンジの髪色で度肝を抜いたつもりでも、ラインもやってないなんて。そう言っているのだ。万夢も最近までスマホがなかったから、ユヅキはあんまりだと思った。
「うわっ出た。ラインライン。女子は最近こぇぇなぁ」
「うるさい! 持ってないくせに!」
ユヅキと男子がいつものように言い争いを始めた。茉莉沙は興味がなさそうに、てくてくと歩を進める。やがて茉莉沙と他のメンバーの位置が開き、一緒に帰っているとは言えない状態になった。茉莉沙は怒ったのか。ラインがないことを馬鹿にされたから? 男子と女子の下らないやりとりにうんざりして? 一緒に帰ろうって言ったのはこっちなのに、嫌な気持ちにさせてしまったか?
「マリサちゃん」
万夢は駆け足で追い付いて、茉莉沙に声をかけた。関口さん、のほうがよかったかな、と言ってから後悔する。
「ごめんね、なんか。あの子たちいっつもあんな感じでさ」
「え?」
茉莉沙は興味がなさそうにこちらを見た。怒ってるわけではなさそうだ。
「あー……ははは。あ、私、家が近いみたいだよ。よろしくね」
「あぁ、うん。なんだっけ名前」
「川口万夢。マユメとか、マユってみんな呼ぶかな! マリサちゃんは……」
「マリサでいい」
「わかった!」
茉莉沙はオレンジ色の髪の毛のくせにものすごいハスキーボイスで話すと緊張する。これはやっぱりおしゃれで染めてるのではなく、ヤンキー系かもしれない。
いつの間にか万夢と茉莉沙は二人で帰っていた。
優吾もいる。最前列に。
優吾は転校生が大好きだ。中学年の時も転校生が二回来たが、優吾は他の子達との橋渡し役をいつもやる。
茉莉沙にも、そうなのだろうか。優吾もあんなオレンジ色の子は生まれて初めて関わるのではないだろうか。
「はいはい、質問コーナー! まず俺ね」
優吾は率先して話している。無表情だった茉莉沙も、なんだか嬉しそうにしている。
「その髪の毛はなんで?」
「誕生日は? 血液型は?」
「家はどこ?」
盛り上がっている。輪に入れなかった万夢のグループは、どこか不満げな顔をしている。
「なんかさ、あの子……」
グループのユヅキが、何か言いかけた。悪口は、ろくなことがないから言わないようにしたい。でもなんか、気に入らないよね、と言いたいんだなとわかった。
万夢と優吾は、低学年の頃は一緒に帰っていた。家が近くて、他に家が近い子がいないからだった。それがいつしか、お互い同性の友達と帰るようになって、一緒に帰ることはほとんどなくなっていた。
「関口って俺らの家のもっと奥なんだって! 今日一緒に帰るぞ」
帰りの会が終わるといきなり優吾が後ろからそんなことを言ってきた。万夢はいつもグループと帰るので、必然的に他のみんなも一緒ということになる。万夢のグループと、優吾のグループと、転校生。大群だ。万夢たちはさっきは乗り遅れたが、うまく話せるだろうか。ユヅキやリオは、優吾たちが好きだから男子と帰れる方が嬉しそうだ。
「家どこか教えてよ。そしたら遊びに誘えるし。こいつ、こののっぽ、家近いよ。川口万夢」
優吾はいきなり万夢を茉莉沙に紹介した。のっぽって……。確かに万夢は身長が百六十五あって、クラスではでかいが。
「ねえラインやってる?」
学年でも一番早くスマホをゲットしたユヅキが茉莉沙に訊いた。茉莉沙は小さく、「やってない」と答える。
「そっか。ならやっぱり家に行って誘わないと遊べないね」
「……」
ユヅキは早くもマウンティングを始めているのだ。オレンジの髪色で度肝を抜いたつもりでも、ラインもやってないなんて。そう言っているのだ。万夢も最近までスマホがなかったから、ユヅキはあんまりだと思った。
「うわっ出た。ラインライン。女子は最近こぇぇなぁ」
「うるさい! 持ってないくせに!」
ユヅキと男子がいつものように言い争いを始めた。茉莉沙は興味がなさそうに、てくてくと歩を進める。やがて茉莉沙と他のメンバーの位置が開き、一緒に帰っているとは言えない状態になった。茉莉沙は怒ったのか。ラインがないことを馬鹿にされたから? 男子と女子の下らないやりとりにうんざりして? 一緒に帰ろうって言ったのはこっちなのに、嫌な気持ちにさせてしまったか?
「マリサちゃん」
万夢は駆け足で追い付いて、茉莉沙に声をかけた。関口さん、のほうがよかったかな、と言ってから後悔する。
「ごめんね、なんか。あの子たちいっつもあんな感じでさ」
「え?」
茉莉沙は興味がなさそうにこちらを見た。怒ってるわけではなさそうだ。
「あー……ははは。あ、私、家が近いみたいだよ。よろしくね」
「あぁ、うん。なんだっけ名前」
「川口万夢。マユメとか、マユってみんな呼ぶかな! マリサちゃんは……」
「マリサでいい」
「わかった!」
茉莉沙はオレンジ色の髪の毛のくせにものすごいハスキーボイスで話すと緊張する。これはやっぱりおしゃれで染めてるのではなく、ヤンキー系かもしれない。
いつの間にか万夢と茉莉沙は二人で帰っていた。
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