隣の彼女

沢麻

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偽善者

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 「あれー? スマホ女子会は?」
 レオンが起き上がったはずみで優吾のイヤホンが外れた。
 「何その命名」
 「あ、ユヅキのグループ名って俺たちの中ではチームスマホ女子だから」
 万夢は苦笑して、二人の前に座った。風が強くて万夢のポニーテールが踊っている。
 「最近、ユヅキたちといないのな」
 軽い気持ちで優吾は言った。万夢は暗い顔になった。ハブられてるんだ、とわかった。謝るのも変なので、違う話題に変えた。
 だったら関口と居てやって欲しい。万夢は優等生だから、関口のアウトっぽさが緩和される。
 「……ユヅキたち、悪い遊び始めたんだよね」
 「へぇ、どんな?」
 「潤二郎に聞けば。なんか、私はあーゆーの無理」
 優吾とレオンは顔を見合わせた。軽い気持ちで「万夢はいいこちゃんだからなぁ」と言ったら、いきなりキレ出した。マジギレっぽい感じだったので、優吾とレオンは途中から茶化す感じに変えた。
 「やーい、いいこちゃん、いいこちゃんのマユメちゃん」
 「うるさい! ムカつく!」
 鬼ごっこのように、万夢が優吾やレオンに一撃加えようと追いかけてくる。足が速い優吾たちには到底追い付けないのはわかっているので、休憩しながらからかった。優吾やレオンは笑っているふりをした。万夢がキレているのはわかっていたが、今更真面目に謝れない。
 「その言い方マリサみたい! ほんっとムカつく!」
 万夢が遠くから叫んでいる。「板挟みで辛そうだよ」と言っていた関口の言葉を思い出した。じゃあどうすればいいのか、優吾はどうするのが正解なのか、わからない。些細な一言にも突っかかってくるほど、万夢は今弱っているのかもしれない。
 「なんかさ、めんどくさいし、もう帰るか」
 「そうだね。また、サッカーしような。二人しかいなかったけど、優吾と二人も、楽しかったわ」
 走りすぎた二人は息切れしながら別れた。万夢には悪かったが、正直めんどくさい。公園の方は振り向かずに、家路についた。
 優吾も、優等生の自分に疲れているのかもしれない。皆の面倒を見ているという傲りが、どこかにあった。しかしスマホが普及して、皆各々が武装して強くなり、各々が陰で助け合ったりいがみ合ったりして成長してきている。優吾の知らないその社会からはみ出して苦しんでいる人間のフォローまで、することはない。それが他でもない万夢であっても。
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