隣の彼女

沢麻

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発表会

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 さっきまでの気分が一気に落ちた。茉莉沙は優吾を嫌いだと思っていたから、やってこれた。取られる。このままでは、優吾を取られる。いや、もう取られているのかもしれない。万夢がダンスをしている間に、劇の主役級の二人は仲良くなっていた。
 茉莉沙はスマホを持っていると言っていたが、いまだに番号やラインを万夢には教えてくれない。まさか優吾には教えているのではないだろうか。茉莉沙はそのまま帰ったが、万夢は落ち着かず勉強も手につかなかった。
 スマホが点滅しているのに気付いた。優吾が返事をくれていたら、と思って手に取る。潤二郎だった。今日の塾の話だった。既読スルーして優吾とのトークルームに行く。まだ既読はつかない。するとまた潤二郎からラインがあった。
 《ところで川口、髪の毛短いのも可愛いな》
 万夢は思わず顔をしかめた。なんなんだろう。優吾以外の男子に可愛いと言われるのは気持ち悪い。
 劇の後、美容室に行ってショートカットにしてきたのだった。傷んだところがけっこうなくなって、爽快だった。まだ優吾には見せていない。文字で返信するのが嫌で、万夢はとりあえずありがとうのスタンプを押した。ありがたくなどない。すると潤二郎は性懲りもなくまたラインしてくる。
 《もし二人とも南栄に受かったら、付き合ってほしい》
 は? 
 何言ってるんだろうこいつ。潤二郎は女好きで、いやらしいことばかり考えてると言われている。万夢をそういう目で見ていたなんて。ていうか勉強しろ。何考えてるんだろう。これから塾で会うのに。
 万夢は返事が思い付かず、無視した。でもどうしても落ち着かなくて、誰かにこの気持ちを伝えたくて、再び優吾のトークルームに入った。
 《具合悪いのにごめん、聞いて。潤二郎がこんなこと入れてきた。どうしよう。迷惑なんだけど》
 スクリーンショットとともについ送ってしまった。送ってしばらくして後悔した。ものすごく悪いことをした気分になった。潤二郎が本当に万夢を好きだったとしたら、ひどいことをした。優吾と潤二郎は友達なんだから、優吾だって嫌な気持ちになるかもしれない。
 すると優吾から返事がきた。
 《そう? あいついい奴なんだよ》
 「……」
 どうしてこんなこと言うの。
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