後ろに誰かがいる気がする

沢麻

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真由美

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 優花はいつも友達の家にいるようで、あまり在宅でない。部活を引退してからは、家に帰らない理由を作っているのかと思うほど毎日遅い。真由美も仕事があるが、時には真由美よりも一時間も遅く帰るときもある。
 真由美と顔を合わせるのが嫌なのだ。もうそんなことはわかっている。しかし母親だから、必要なことは話しかけなければならない。その度に迷惑そうにされて、傷付かないわけがない。こんな状態だから、「まなちゃんのママから聞いたけど……」とストーカーのことを聞き出すのは至難の技だろう。
 買ってきたからあげを取り分け、冷蔵庫にあったきゅうりの漬物とミニトマト、レタスを出す。お湯を沸かしていると優花が帰って来た。ただいまも最近は言わない。
 「おかえりー」
 真由美は明るい声で言う。返事はなく、真っ直ぐ部屋に鞄を置きに行く様子が目に浮かんだ。
 「もうご飯できるよーおいでー」
 できるよも何も惣菜なのだが、とりあえず声かけ。多分真由美が食べ終わった頃に来る。先に食べ終わってあげたほうが優花のためだと思い、真由美は立ったままからあげと野菜を食べ、お茶を飲んだ。米はいらないと感じた。ストーカーの話を聞いてから、胸がざわついて食欲がない。
 湯呑みを洗っていると、優花が来た。こちらを見ないように伏し目がちで食卓につく姿は、我が子ながらすごく美しい。優花は多分、親の欲目を抜きにしてもかなり外見が良く、学校でももてるのではないだろうかと思う。そうなるとストーカー説は、あながち嘘とも言えないかもしれない。
 「どこ行ってたの?」
 「イチナの家」
 イチナとは、部活が一緒だった木村一那だろう。一人っ子で、お金持ちで、親が甘い印象がある。
 「二人で遊んでたの?」
 「ルイとか、リコとか、部活メンで」
 「愛美ちゃんとは最近は仲良くないの?」
 「は?」
 優花がしかめっ面を上げた。からあげと米ばかり食べて、野菜には手をつけていない。
 「愛美なんて全然。あいつ嘘つきだしおしゃべりだし嫌われてるし。部活も違うし。言わなかったっけ?」
 「……そうだっけ」
 悪口を言うときだけ生き生きして見えて悲しくなった。まな、まな、といつも手を繋いでいたのが昨日のことのようなのに、子供の成長は本当に早い。
 「今日スーパーで愛美ちゃんのお母さんと会ったから、ふと思っただけ」
 「……へぇー。とりあえず優花は、イチナ、ルイ、リコと四人でいるからだいたい。まぁその中でもリコはあんまり好きじゃないけどね。でもイチナと仲良いから、仕方なくって感じだけど」
 ルイは鳴沢瑠衣、リコは佐藤莉子か。莉子は転校生で、可愛い顔をした子だったはず。ライバル心から、気に入らないと言っているのかもしれない。
 愛美の名を出したら不機嫌になってしまったので、ストーカーの話はやめにして真由美は洗い物の続きを始めた。別に優花に変わった様子はない。しかし、暫く注意して動向をチェックしよう。
 「レタスも食べなさいよ」
 「わかってるって! 今食べようとしてたとこだし」
 いつも通りだ。大丈夫だ。
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