後ろに誰かがいる気がする

沢麻

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本多玲哉

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 「あの公園でさ、なんかこないだ男の人が殴られて事件になったじゃん。怖いよね」
 ユウカがまた可愛く本多の袖を掴んできた。ストーカーが倒されて安心しているかと思ったのに、そうかユウカはあいつがストーカーだとは夢にも思っていないことを知った。
 「通り魔かな、こわいよね」
 「俺が送ってやってるし、大丈夫だよ」
 あの男と思われる奴が殴られて重体になったというのは三日前のことだ。ユウカと前回に一緒に帰ったのはもっと前。ユウカは数日女子たちと過ごしていた。
 「ていうかね本多さぁー、いい加減イチナに返事してくれない? 期待させるのもあれだし、ないならないでいいと思うんだよね」
 「えっ」
 思わぬことを言われて玲哉は戸惑った。木村への返事を先延ばしにきているからこそユウカと一緒に帰れていたのに、ここで終わりにしてしまってはユウカがこちらに来る理由がなくなってしまう。ユウカのことが好きだが、ユウカに好かれているという実感はいまいちだった。そこまで自分に自信が持てない。
 「何。どう思ってるの」
 「……どうも思ってない。これが本音」
 正直に答えた。
 「だから付き合っても、好きになれそうではない」
 「つまりなしってこと」
 追求してくるユウカが急にめんどくさくなった。
 「そういうことになるね。言っといてよ」
 「自分で言うとかはないわけ?」
 「だから自分で言わなきゃ、とか思えるほど木村の存在はでかくないわけ。どっちでもいいわけ。いい奴ではあると思うけど、それだけ」
 「……」
 ユウカは黙った。さすがに酷いことを言ってしまったかもしれない。ユウカにとっては、木村はどうでもいい存在であるわけがない。
 これでもうユウカと帰るのも最後か。さっきまで袖を引っ張っていたのに、それもなくなっている。
 「わかった。よーくわかった。私がうまく伝えておくわ」
 ユウカは立ち止まった。
 「え、なんで止まるの」
 「イチナのとこに行くに決まってんでしょ」
 「はっ? まじで。帰りどうするんだよ。お前通り魔とか、ストーカーとか怖くねぇの?」
 あぁ、本当に終わってしまうんだ。玲哉は怖くなった。悩み続けているふりをしておくんだった。
 「怖くないよーだ」
 ユウカはいたずらに笑うと、踵を返して駆けていった。なんだ、どういう意味だ? 玲哉は一人、取り残されて呆然とするしかなかった。
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