森の愛し子〜治癒魔法で世界を救う〜

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【第一章】出会いの始まり

始まりの出会い

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―これから始まるこの物語は、魔法が舞台の世界。そして自然に囲まれた地に住む、とある少女のお話―

 ―暗闇の森。
 そこは人が決して立ち入ることはない場所。
 人々がこの森を訪れない理由は、この森には魔獣が棲んでいるからだ。
 魔獣は、冒険者にとっては絶好の獲物。
 しかし、暗闇の森は複雑な地形に加えて、そこに棲む魔獣は数も多く強い者もいるため、実力のある冒険者たちも自ら入ることはしないのだ。

 そんな森の中にひっそりと佇む一つの家。
 この森に住むただ一人の少女、レイ。彼女が住んでいる家だ。
 丸太づくりの構造の二階建ての家に、小さな庭がある暖かみのある印象を与える一軒家だ。

「……今日は湖に魚を釣りに行こうと思うのだけど、あなたも一緒にどう?フェン」
 レイは家の庭にいる、ある者に話しかけた。
 ―フェン。
 彼女にそう呼ばれたのは、聖獣であるフェンリルだ。フェンリルは、体が大きく、鋭い爪を持ち、朝日に当たると白く煌めく毛並みが特徴だ。
 聖獣とは、この世界で上位種の存在である。

 フェンはレイが幼い頃、この森で倒れていたところを彼女に助けられた。それからは彼女と一緒に暮らしている。
「そうだな。私も、一緒に行こう」
 フェンが大きな体で伸びをしながら言った。
 レイは一度、家にローブを取りに戻る。家に入り、着ている長袖のブラウスと、スカートのようにも見える裾の広いクルミ色のズボンの上に、深い緑色のフードのついたローブを身に纏った。
「お待たせ。行こう」
「ああ」
 二人は釣りに行く準備を済まし、湖に向かった。

「今日は、なんだか森のみんなが静かだわ」
 レイは湖に向かう道中、何かの異変を感じ取った。
「言われてみれば、みな何かに警戒しているようだな」
 フェンも、今日はいつもの森とは雰囲気が違うことを察知したようだ。

 二人は、辺りを注意しながら湖の近くまで来た。
 暗闇の森の湖は、とても澄んだ水に満たされている。ここの湖は、晴れている日の朝はエメラルドグリーン、昼は澄んだ蒼、夕暮れは夕日に照らされてオレンジに、と太陽の動きで表情を変える。
 暗闇の森は魔獣こそいるが、その名とは反対に、この森はとても自然豊かで静かな森だ。

 そんな湖のすぐそばで、二人は黒い大きな何かを見つけた。
「……向こうに何かいるわ」
 レイとフェンは、その正体を知るために、その何かに慎重に近づく。
「あれから人間のにおいがするぞ」
 さすがは、フェンリル。鋭い嗅覚を持つ種族だ。
 黒い物体から人に匂いがするそうだ。
「人?こんなのところに?」
 ここは、人の立ち入らない森。そんな場所に人間が迷い込んだというのか。

「……男の人と、ドラゴンのようね」
 黒い影の正体は深手を負った鎧を着た男とドラゴンだった。二人とも気を失っているようだ。
「着ているものを見たところ、この人間は騎士のようだな。とすると、隣はこの者の契約獣かそんなところか」
「……契約獣、ね。とにかく、手当てしないと。傷が深いわ」
 レイは負傷している彼らを見て、顔を少し曇らせる。
「お前は、契約獣の話になると、辛そうな顔をするな。……私たちを縛ることができる人間が、憎いか?」
 フェンがレイの顔を覗き込んで聞いた。
「そうね。……人間に彼らの声は届かない。だから平気で彼らを道具のように扱える。それが許せない。けど、怪我をしているなら、人だったとしても助けるわ。それに、どうしてここにいるのか聞き出さないと」
 そう言うと、レイは袖をさっと腕まくりし、呪文を唱え始めた。
「(人間を憎んでおるくせに、優しすぎるのだ)」
 フェンは心の中で悪態をついたが、彼女の後ろ姿を見つめる目はとても優しい。
「彼らを癒せ。―癒しの力ヒール
 すると、男とドラゴンが淡い優しい光に包まれた。

 しばらくすると、その光は徐々に消え、辺りはいつもの風景へと戻った。
「……ふぅ。とりあえずこれで様子見しましょう。フェン、私は湖で魚を釣って来るから、この人たちのことお願い」
 レイはそう言い残して、湖の方へ歩いて行った。
 
癒しの力ヒール
 傷を癒す魔法。使用者の魔力によって癒せる傷の度合いは変わる。
 切り傷の治癒から、失った手足の再生ができる者もいる。
 しかし、死者を蘇らせることはできない。 死者を蘇らせるのはこの世界の禁忌である。

【魔力】
 人体に流れている一つのエネルギー。これを持つ者が魔法を使える。
 人によって、魔力の量は異なる。
 また、魔力のない者も稀にいる。

【魔法】
 それは、火、水、雷、土、木、風、光、闇、無属性の9つからなるもの。
 レイが使った、癒しの力ヒールは、光属性に含まれる。
 無属性には、収納魔法、転移ワープなどが含まれる。
 一般的には、一属性に特化した者や、二属性から三属性の複属性を扱う者が多い。
 四属性以上を扱える者は稀、全属性を扱える者が数千年前に一人、現れたそうな…。
 無属性以外の属性には、初級、中級、上級、最上級と階級があり、階級が上になればなるほど、消費する魔力は多くなる。
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