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7話 真実の記憶
しおりを挟むレベリオの顔が少し怯えたような表情に変わった。おれと目が合った刹那、すぐに下を向き目線を逸らした。一方のモーファは怒りを露にさせながら怒鳴った。
「ふざけたことを申すな! 血迷ったか!? ヴァレント!」
今にもおれに掴みかからんとばかりに詰め寄ってきた。まるで決闘前の剣士のようにおれ達はしばらく睨み合う。
「控えなさい二人共。王の御前ですよ」
ジュイリア王女の言葉にモーファがおれを睨みつけながら一歩後ろへと下がる。おれ達の様子を黙って見ていた王が重々しく口を開いた。
「ヴァレント、それはなにか根拠があってのことか?」
「もちろんです陛下。今その証拠をお見せ致します。こっちへプルジャ」
後ろに控えていたプルジャが前へと進み出ると王に向かってちょこんと頭を下げた。
「この者の名はプルジャ。ネクロマンサーです」
おれがそう言うと王は少し驚いた顔をした。
「ほお、ネクロマンサーとな? して、その者がいかがした」
「しばし術を使う事をお許しください。プルジャ、やってくれ」
コクンと頷いたプルジャが呪文を唱えると少年兵の影が現れた。その姿に見覚えがあったのかレベリオが口元を押さえながら目を見開く。
「思い出箱」
続けざまにプルジャが呪文を唱えレベリオとモーファの姿が映し出された。口づけを交わし愛を語らい合う二人。それを目にしたレベリオの顔は真っ青になっていく。
「ええいっ! 止めろ! こんものはまやかしだ!」
モーファがプルジャに掴みかかろうとした時、アンクバートがそれを制した。
「おおっと! 王の御前だぜ。やめときな」
ニヤリと笑うアンクバートに腕を掴まれモーファの動きが止まった。そしてプルジャが術を解くと部屋の様子が元に戻った。真っ先に沈黙を破ったのはジュイリア王女だった。
「あなた! これはどういうことですか!?」
言葉を失ったモーファが泡を食ったように狼狽えた。すると今度はレベリオが声を荒げて叫んだ。
「このようなこと身に覚えがございません! これはきっと幻術の類です!」
「そ、そうだ! こんなガキが使う術など信用できるか!」
息を吹き返したようにレベリオに同調するモーファだったが、プルジャが冷静に淡々と語り始めた。
「ではもうひとつ。さっきその人から引っぺがした影がある。光の輪っか」
再び光の輪が作られ、今度は猫のような影が現れた。それを目にしたジュイリア王女がわずかに目を細めた。
「あれは……去年死んでしまったモーファの飼い猫?」
その言葉を聞いておれはプルジャの意図がわかった。また部屋の中に別の景色が浮かび上がった。それは裸のレベリオとモーファがベッドの上で交わっているものだった。レベリオの喘ぐ声が部屋中に響き渡る。
『ああっモーファ! もっと来て!』
『最高だレベリオ! 君はなんて愛おしいんだ!』
猫の影が見た記憶が鮮明に映し出される。王と女王は唖然とし、おれは表情を変える事無くそれを見ていた。
「これは違うのヴァレント! お願いもうやめて!」
レベリオがおれの足元へと縋りついてきた。だがおれは彼女に一瞥もくれることはなかった。そしてモーファはその場にうな垂れたように膝をつき震えていた。
王は怒りに満ちた表情で立ち上がると兵士を呼んだ。
「二人を捕えよ! 処分は追って伝える!」
兵士数人に囲まれモーファとレベリオは抵抗することなく捕えられた。そしてそのまま城の地下牢へと放り込まれた。
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