14 / 23
14話 狂乱勇者
しおりを挟む今は昔話として語られていたはずのエンシェントドラゴン。その圧倒的巨大な姿はまさに言い伝え通り神々しく黄金色に輝いていた。誰もがそれに見とれ、そして怯え、ただただ頭上を見上げ立ち尽くしていた。
ドラゴンの噴いた炎によって王城の其処彼処から火の手が上がり煙が立ち込めていた。
「城へ急げ! ドラゴンはおれがやる!!」
おれの叫び声で正気に戻ったデンデリオが騎士団を連れて城へと急いだ。それとすれ違うようにプルジャが空を見上げながらてくてくとこちらまで歩いてきた。
「あれは?」
彼女がエンシェントドラゴンを指差しながらアンクバートに尋ねた。落ち着き払ったその物言いに、アンクバートは一瞬驚きながらも弓に矢をつがえながら答えた。
「ありゃエンシェントドラゴンだ。とっくの昔に死んでるはずなんだがなぁ。どういう訳かお空を飛んでやがる」
「復活したという事?」
「それしか考えらんねぇな。それよりおまえも戦う準備をしておけ」
束の間、プルジャはドラゴンの姿を見ていた。彼女はおれ達に視線を移しながら話し始めた。
「あれはたぶん死霊魔術で復活させている。わずかだけどその痕跡が見える」
「そんな事が出来るのか!?」
アンクバートの問い掛けにプルジャは頷いた。
「一時的だけど死者の復活は可能。ただ術者の方もだいぶ命を削る事になるはず」
「やったのはレベリオか?」
「……たぶん」
アンクバートがおれをちらりと見た。プルジャの言う通り、レベリオがエンシェントドラゴンを復活させたのだろう。命じたのはおそらくロディ。
「兎に角、奴を倒すぞ。アンクバート、援護を頼む」
おれは両手に剣を構え空を見上げた。アンクバートがにやりと笑った。
「いきなり全力か?」
「ああ……狂気発動」
全身が紅潮し熱を帯び始める。心臓の鼓動がまるで太鼓の音のように頭に響き渡り、血液が沸き立ち体中から魔力が溢れ出す。
「これが狂乱勇者……」
おれの狂乱状態を初めて見たのだろう。プルジャが興味深そうにじっとこちらを見ていた。
「狂喜乱舞!」
地面がめり込むほどの力でおれは大地を蹴った。一瞬で空高くまで舞い上がると、ドラゴンの背中目掛けて剣を切りつけた。
窓の外が炎に包まれ、あちこちから怒号と悲鳴が聞こえ始めた。ガラスの破片で幾分怪我を負ったけどアジュダの防御魔法がなければ死んでいたかもしれない。
「レベリオ! 怪我は!?」
「大丈夫! それより早く陛下達を!」
私とアジュダは王の間へと走った。すでに王城内は大混乱に陥っていた。爆風により建物は破壊され血を流した兵士が至る所に倒れていた。
「さっきのは一体なんなの!?」
アジュダが息を切らしながらそう叫んだ。
「あれはエンシェントドラゴンよ」
「はぁ!? どういう事!? 訳が分からない!」
「私が復活させたの……」
アジュダが私の手を取りながら足を止めた。一瞬怒った表情を見せたが次第に憐れむような、悲しむような顔へと変わっていった。
「レベリオ……あなた禁術を使ったの?」
流石はアジュダ。あらゆる魔法の知識を持っている彼女は私がした事をすぐに理解した。
「ロディに命令され逆らう事が出来なかった。もしヴァレントでも倒せそうにないなら私を殺して。術者が死ねばドラゴンも息絶える」
「ダメよ! ヴァレントならきっと倒せる!」
「お願いアジュダ! どうせ私は長くはない! あなたならわかるでしょう?」
彼女は唇を噛みしめながら涙を堪えていた。その時、廊下の奥から私達を呼ぶ声が聞こえた。
「アジュダ様! レベリオ様! お早く避難を!」
デンデリオを先頭に、王と王女を取り囲むようにして騎士団の一行がこちらへと向かっていた。彼らに合流しようと私達が一歩踏み出した時だった。
デンデリオの身体が真っ二つに分かれ、体の上半分がずるりと倒れ床へと落ちた。ジュイリア王女の悲鳴が城内に木霊する。
慌てて駆け寄ろうとした私達を遮るかのように、突如目の前に姿を現したのは薄笑いを浮かべたロディだった。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる